4-140 モイスが見たもの






ハルナたちはメイヤとソフィーネと合流し、急いでガラヌコアから離れた。

高い砂丘の上で馬車を止め、前後左右に敵を発見しやすい場所に位置をとる。

当然のことだが、反対に相手にも見つかりやすい場所のため、エレーナとメリルが周囲を氷の壁で覆った。


この場所で止まることを決めたのはステイビルだった。

自分の身に起きたことを、他の者たちに早急に伝える必要があると考えた。

そのことは、姿を見せないがこの場にいるモイスも同様の意見だったため、他の者から反対の意見が出ることはなかった。



一同は馬車を降り、馬車の間に挟まるように集まってくる。

外の警戒はソフィーネとメイヤが続けて行い、その他の者たちはステイビルの元へ集まった。


全員が無事であることが確認出来てからは、ステイビルの表情や雰囲気がいつものステイビルに戻り、今では冷静な一国の王子の姿を取り戻していた。




「……それで、いったいあの時に何が起きたのですか?」



一番初めに言葉を投げかけたのは、あの場にステイビルと一緒にいたメリルだった。


ステイビルは、その時のことについて話し始めた。



部屋の奥に入り、ある紙を見つけた。

それを手に取り、裏を見た途端に黒い世界の中に飛ばされてしまう。




「そこで、サヤというものに出会った……姿は見えなかったがな……ハルナ、その者のことを知っているな?」




「え?……小夜……ちゃん……って……ええっ!?」



ハルナはステイビルの言葉に驚く、自分の近くに小夜がいたとは夢にも思わなかった。

ステイビルはその反応がハルナへの質問の答えだと受け取り、そこで起きた出来事の続きを伝える。


ステイビルはサヤがいたことの他に、二つのことを口にする。

一つはモイスの能力を奪ったこと、もう一つはハルナをサヤに差し出すように言われたことを……



流石のエレーナもこの件に関しては、いろんな思いが巡りそれをすぐに口にすることはできなかった。

相手は敵のような存在であるが、エレーナの知らない世界からきた人物であるため、同郷の者に会いたいというのは素直な気持ちなのではないかと。

それとは別にもう一つ気になることが、ステイビルから聞いた中にあった。

まずはそちらを先に片付けるべきだと、エレーナは判断した。



「その力……モイス様から奪ったというのは……」


「……本当のことだとも、エレーナよ」




エレーナの問いに答えてくれたのは、姿を見せないモイス自身だった。


そこからモイスは、自身に何が起きたのかを語ってくれた。



廃墟でヴェスティーユがユウタを連れて逃走した時、モイスはユウタの中に隠れてどこに行くのかを探ることにした。

モイスは以前から……ハルナがこの世界に来るよりも前からサヤに狙われていた。

そのことを突き止めるために、モイスは単独でサヤの居場所や目的を探ろうと考えていた。



そして、到着した場所はガラヌコアの一棟の建物の中。

ヴェスティーユは我慢ができないと、ユウタのボロボロの衣服を乱暴に毟り取る。

先ほどまでユウタの精力を奪おうとした行為は、途中でハルナたちに邪魔をされることになったから。


ユウタは年を重ねるごとに精力の量が減少し、さらには抽出するまでに長い時間を要するようになった。

だが、ヴェスティーユは様々な”手”を用いて、ユウタに精力を放出するようにけしかける。

その甲斐もあって、ユウタとの交わった部分にその兆しが見え始めた。


ヴェスティーユは口元から涎を垂らし、これから与えられるご馳走の瞬間を待ちわびている。

仰向けで横になったまま、その上に跨るヴェスティーユの姿を見て、さらにユウタの気持ちは高ぶっていく。


そして、ユウタの息遣いが早くなり、身体が徐々に強張り始めた。



「……あぁ!……もう……だ…………で……出……はぅ!?」



頂点に達する直前、ヴェスティーユは後ろから何者かに引っ張られて引き抜かれた。

その瞬間、ユウタの先からは勢いなく粘質の液が力なく流れ落ちていく。


ヴェスティーユは勿体ないと思いながら、その様子を見ていた。

だが、今までの努力を無にされた怒りは沸いては来なかった。


そこには、自分の母親のサヤが立っていた。




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