4-103 砂漠の施設17












コルムの額から後頭部にかけて、一本の矢が刺さり鏃は脳を突き抜けていた。





やや遠くから見ていたハルナは、ソフィーネの無事を確認する。

だが、その次には絶望に代わっていく。


ソフィーネの身体を網のようなものが纏っていく。

身動きの取れなくなったソフィーネは、フードを被った人影に抱えられて連れ去られていく。




「ソフィーネさん!……ちょっと待ちなさい!!」




ハルナは、風の円盤と無数の空気のつぶてをフウカと共にその人影にぶつけていく。

だが、男はハルナの攻撃を最小限でかわし、剣ではじいていく。

風に紛れた砂が、ハルナの攻撃の軌道を見せていたため、相手は容易に交わすことができたようだ。



攻撃の途中、男は草の壁を作り出し攻撃を避けながら退路を確保していく。

草の壁の力が抜け崩れ落ちていくと、そこにはすでに人影が消えていた。



「ソフィーネさーん!ソフィーネさーん!!」



ハルナは口の中に砂が入るのも構わずに大声で叫ぶも、消えた痕跡はどこにもなかった。

その裏で、頭の中にはあのハルナたちの攻撃を防いだ現象に見覚えがあることも気にかかっていた。


ハルナはソフィーネが消えた場所に到着する、辺りを見ると足に何か砂以外の何かの感触が伝わってくる。

足元を見ると小さな液体の入った瓶が落ちており、ハルナはそれを手に取った。











コルムを見送った後、メイヤはべラルドの場所まで案内するよう男に告げた。

最初はこの騒動を制圧するためにメリルの力を借りることになっていたが、それも徐々に警備兵側の力で抑え込まれていったため不要になる。

コルムが相手の中で腕の立つ人物だったらしく、その本人はすでに逃亡……メイヤの仲間が追跡しているということなので、男はメリルのことも含めてメイヤの言うことを聞きべラルドのもとへ案内した。


(これで……メリルを奪われることが回避できた)



男は心の中で安堵のため息をついた。

そのままメイヤとメリルを連れて、べラルドがこの屋敷で滞在している際に使っている部屋に案内される。

この場所は部屋の入口として扉があり、男は扉を数回叩いて入室していもよいかを確認した。

だが、同じ動作を二度繰り返しても、中からは何の反応もなかった。



男はなぜか、メイヤの顔を見て何かを確認するように一度不安そうに顔を見る。

メイヤが男の立ち位置を横にずらして、扉に手をかけその奥の気配を探る。

人の気配がないと、危険がないことを判断しメイヤは部屋の扉を開ける。

そこには誰もおらず、人がいという気配があった。机の上は何かを隠すように書類が散らばらせてあり、目的の書類だけを持ち出したような跡にも見えた。

その机の上に散らばった紙を手で払い、引き出しの中ななどを探していると、引き出しの奥に何かが取り出されたような木箱を見つけた。



「メイヤさん!ここを!?」



メイヤに声をかけたのはメリルだった。


乱雑に衣服か被せられたその下に、大人が一人余裕で滑り降りれるような幅の穴が下に続いている。



「ねぇ!この穴はどこに出るの?」



メイヤは後ろにいた男に聞いてみる。




「いえ、こんな仕掛け……初めて知りました」



「そう……でも、ここから逃げたとすると、きっとこの先は危険なところではないわね」




「降りる……んですか?」



「もちろん」




「わ……わたしはこ、ここで待たせていただきま……ひっ!?」



メイヤは男の服の背中をつかみ、穴の傍まで引っ張っていく。



「危険かもしれないところに、女性を先に行かせるなんてちょっと失礼じゃないかしら?」




「な!?……いや、やめてください……お願いします……!!!」



「大丈夫よ?私たちも後から付いていくし、もしも下で何かあったら助けてあげるわよ?さ……ほら」



「やめ……ろ!……助け……ぎゃあああああ!!」



必死にメイヤに抵抗をするが、華奢に見える美しい女性が発揮する力強さではない。

男は強引に穴の中に突っ込まれるようにして、穴の中を滑り落ちていく。


悲鳴とも叫び声ともわからない声は、離れていくごとに小さくなっていく。

僅か五秒ほどの時間で、その声は聞こえなくなったと同時に地面に落ちたような音も聞こえてきた。



「……大丈夫そうですね。それでは先に行って下から呼びますので後に続いてください」




メイヤはメリルにそう告げて、先に穴の中にその身を投じた。











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