4-11 再会
翌日の早朝、ハルナたちはラヴィーネを出発しモイスティアに向かった。
道中、以前のような魔物や盗賊に襲われることもなく順調に馬車を進めていった。
その日のうちにモイスティアに付き、早速ハルナたちはスプレイズ家の屋敷に向かっていく。
ハルナは水の町の代表として王選に出させてもらっているため、まずはティアドに報告すべきとのソフィーネの提案だった。
その言葉にエレーナもステイビルも納得をし、まずはスプレイズの屋敷に向かうことにした。
屋敷の前に馬車を停めると、扉が開きティアドが皆を出迎えた。
「おかえりなさい、ハルナさん」
「ティアドさん、ただいま戻りました!」
ティアドの後ろには、いままで見たことのない新しいメイドが二名いた。
そのメイドは、ソフィーネの変りに王国から派遣された新しいメイドだった。
ハルナよりも若い二人のメイドは、ハルナたちの前に緊張した表情で対応している。
「さぁ、どうぞ中へお入りください」
ティアドの言葉に、ステイビルは礼を言ってエレーナやサナたちに屋敷の中に入れさせてもらうように勧めた。
それに従い、エレーナ、サナ、ブンデルは馬車から降りて屋敷の中に入れさせてもらうことにした。
それぞれは部屋を案内され、夕食の用意ができるまで二人ずつ割り当てられた部屋の中で休憩することにした。
――コンコン
ハルナとエレーナとサナに割り当てられた部屋の扉を叩く音が聞こえる。
その音に入室を許可する返事をすると、それに応じて開けられた扉のむこうに一人の女性が立つ。
「ハルナさん、エレーナさん!」
「「――アイリス!!」」
三人は手を取り合って、再会を喜んだ。
「アイリスさん……どうしてここに?それにその恰好……」
アイリスは、スプレイズの家に務める他の二名と同じメイド服を着ている。
「今はティアド様のご厚意によって、こちらで働かせて頂いております」
騒動を起こしたあと、カルローナは体力の回復を待ってし裁きを受けることになる。
騒動を起こした責任はあったが、ヴェスティーユたちに騙されていたのだと判断され結果的に最悪の刑は免れた。
その際、ティアドがスプレイズ家の起こした問題の責任として町の回復と賠償を申し出た。
その金額は相当なものであったが、大臣の地位を狙う他の家もスプレイズ家の体力を削る意味もあり、そのティアドの提案を承諾し今回の一件はスプレイズに任せるということになった。
最終的には資金はカルローナの父のグスターヴが、娘の命を救ってくれたお礼にと全ての資金を出してそのほとんどを支援した。
その資金はグスターヴ自身の物であり、現在ギルドを任せている夫のグリセリムの財政には全く影響がなかった。
実際は資金の提供を申し出たが、グスターヴは”親の責任”を強く押し出しその申し出を断っていた。
「それじゃあ、いまカルローナさんは?」
「はい、今はモイスティアから少し離れたところにおります。王国に許可を得て、森を開拓しそこに細々と農業や畜産を行いながら暮らしております」
アイリスも休みの日など、カルローナの元で過ごしているとのことだった。
始めは一緒に暮らすことも提案したが、カルローナはそれを断ったという。
カルローナは、今までアイリスにしてきたことを謝りアイリスの手を取ってこう告げたという。
”これからはあなたのやりたいことをやりなさい”
アイリスは、あの日以来”王国のために働きたい”という思いが生まれていた。
そこで目を付けたのが、諜報員という職だった。
だが、アイリスはそこまで体力的に自身があるわけではない。
それに一から鍛えるには既に歳を取り過ぎている。
そこでティアドからの提案で、この家のメイドとして働きながら、メイドにその基礎を教えてもらうということだった。
そこからものにできるかどうかはアイリス次第という条件で、正規ではないが訓練を特別に受けることを許されたのだった。
「がんばってるんですね!アイリスさん!」
「ありがとうございます、ハルナさん。わたしもハルナさんのように、頑張ります!」
「それと……いえ、この話はまたあとで。そろそろ食事の用意ができますので、またお呼びしますね」
そういうと、アイリスはお辞儀をして退室していった。
その後サナが”今の方は?”との言葉をきっかけに、ハルナとエレーナはこれまでに起きたことを食事に呼ばれるまでの間ずっと話して聞かせていた。
しばらく経ち、再び扉を叩く音が聞こえる。
エレーナは外で待つ者に、扉の入室を許可を出した。
「失礼します……皆さまお食事のご用意が出来ましたのでどうぞ、こちらに」
「ソフィーネさん!見かけないと思ったら……」
「これも私のお仕事ですので……さ、食事のご用意が出来ておりますので」
三人はソフィーネに連れられて、食堂へ向かった。
そこには既にステイビルとアルベルトとブンデルの姿があった。
そして全ての準備が整い、ステイビルの言葉によって食事が始められた。
「いただきまーす!」
エレーナは一口スープ口にし、目の前の籠からパンを一つ手にして千切り、かけらを口に入れる。
「あれ?……このパン?」
「これ、どこかで……食べたことがある気が……」
エレーナがパンを口に含んだ感想を聞いたハルナが、同じように口に含んで味を記憶の中で探り当てたと同時にその答えとなる人物が姿を見せた。
「――ハルナさん、エレーナさん。おひさしぶりです!」
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