3-279 東の王国83







「……ブランビート。この国は俺の国ではない、お前たちが創り上げた国なんだ」



「ブランビートさんあなたは自分が思われているよりもはるかに、周りの方々はあなたを評価されているようですよ……それに、エンテリアはあなたのことを”自分より凄い奴”だって言ってらしたのですから……」





「ちょっ!?エイミ!」



エンテリアは、慌ててエイミの言葉を止めようとした。

その言葉にブランビートは、信じられないと言った顔をエンテリアに向けていた。




エンテリアはその視線に耐えられなくなり、照れ隠しに一つ咳払いをした。





「ゴホン……あー、なんだ。エイミの言ったことは……本当だ。俺は、ブランビートのようになりたいと思っていたからな」



ブランビートがエンテリアのことを評価していたように、エンテリアもまた、ブランビートのことを評価していた。

お互い無いものねだりのようにも見えたが、その尊敬の思いがお互いの感情を理解し、息の合ったコンビネーションを生み出したのだとエイミとセイラは感じた。






「……これで判ったでしょ、ブランビート。あなたは”あなた”であって、誰の代わりでもないの。それが私のブランビートなのよ……」



「セイラ……」





優しく手を握り、自分をパートナーを認めてくれるセイラの言葉に、堪えていた涙が流れだした。




エンテリアは、ブランビートを気遣うセイラを見て羨ましいと思った。

エイミは優しいところはあるが、エンテリアに対しては厳しい面が強く感じられた。


だが、そういうところを含めてエンテリアはエイミに気持ちを寄せていた。



この話は終わりを迎え、ブランビートはこの国の王としてやっていくことを再び決意した。



そしてこれからの王国のことについて、話し合うことになった。

政策については、ブランビートから提示された内容についてほぼ完璧なものが出来上がっていた。

そのためエンテリアは、そのことについては何も口にすることができず、エンテリアから見ても問題ないことを告げただけだった。


この話しも終わりを迎えそうな雰囲気であった。

その時、今まで黙っていたマリアリスがエンテリアに声を掛ける。






「ところで、エンテリア様はここを出ていかれてその後どうされるのですか?」





その言葉は、弟の行方を心配する姉の気持ちが込められた言葉だった。


それを察したエンテリアはなるべく心配させないようにと心掛けるが、行先しか決めていなかったため、きっとマリアリスが納得するような答えできないだろうと察しながら素直に答えた。



「あの山脈を超えてあちらに行かれるのですね……でしたら、あちらの山脈の麓に道があり、その先には大き目な村があると聞いております。まずは、そちらに向かわれてはいかがですか?」



マイアリスは情報収集の目的で、山脈の向こう側から訪れる商人に情報を仕入れていた。

その村の規模は、この村が国に変わる前と同じような規模があるとのことだった。

しかし、この村よりも防衛面に力をいれている様子で、村の住民になるには厳しいチェックが行われている。


その村にはいることができるなら、新しい暮らしを始めることへの苦労は軽減されるとマリアリスは言った。





「……ありがとう、マリアリス。山を越えたらそこに向かってみるとしよう」



「それと、あの山脈には魔物が生息していると聞いております。商人も何度か襲撃を受けて全滅しているとも聞いております……どうかお気をつけて」



「ありがとう、気を付けるよ」






その村は、スミカが作ったような警備隊が組まれており、かなり組織的に運営されているとのことだった。

人材も噂を聞きつけて、村の外からやってくる腕っぷしの者たちもいるという。



(そんな場所で何かエンテリアの刺激になれば……)




そう思ったブランビートは、あることを閃いた。





「なぁ、エンテリア……一つお願いを聞いてくれないか?」






「……どうした?改まって」



「エンテリア……お前も、俺と同じく王を目指してくれないか?」



「――なっ!?」



「いつ来るか分からない魔物からの襲撃に、この国一つだけで対応できるかどうかは正直不安なんだ。神々の加護を受けることができたとしても、戦力はあった方がいいだろう?」





確かにとマリアリスもセイラも、ブランビートの提案に納得する。

もしエンテリアが王になれば、ブランビートと協力をして魔物に対する備えも更に進むことになるだろう。



エイミはここぞとばかりにこの雰囲気に乗り、セイラにあることを告げる。






「なら、私も考えていたことがあるんだけど……」



「なに?エイミ」



「精霊使いを他にも育てて欲しいのよ、私たち以外にも」



「やっぱりできるの、そんなこと!?」





エイミと別れてから、セイラもずっとそのことを考えていた。

その考えが間違えていなかったことと、エイミも同じことを考えていたことが嬉しかった。



エイミが言うには詳しいことは口止めされているが、精霊とのつながりが強いあの森の場所でエイミとセイラ以外の人間でも精霊と契約することが可能だという。

ただし、その力を与えても良い者かどうかは判断したうえで行動して欲しいという、ある大精霊からの願いだった。






「で、その役目をね……セイラ、あなたにやって欲しいのよ」







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