3-157 ナンブルとナイール11







『……その言葉を聞いて考えが変わったわ。ナイール、約束をかなえるための条件を変更しましょう』






『条件……ですか?』





余計なことを言ったせいで、我が子の生き返らせるための条件が高くなったのではないかとナイールは警戒した。







『えぇ、そんなに怯えなくていいのよ。それじゃあまず、条件を先にお伝えしましょうか……』




ナイールにあげられた条件は、次の通りだった。




――ひとつは、ナイールはこの存在の下にこれから仕えること

――ふたつめは この世の仕組みや法則を調べる調査し報告すること








『……そうすれば、あなたもあなたの子供も生き返らせてあげましょう』





『あの……一つ聞いても?』



『なにかしら?』



『あなたに仕えるとは……どういうことでしょう?』




『そうですね……まぁ、言った言葉の通りよ。私もいま協力してくれる者が必要なの。それにはある程度の考えを持ったものでないといけないのよ。そこでナイール、アナタに協力して欲しいの。。ただ、子供の命はほんの少しだけ短くなるかな……子供の命を少しだけ使って二人ともを生き返す力に使わせてもらうわ。安心して、エルフの一生からすればそんなに影響のない範囲よ。だけどあなたの生命力は自然に反して蘇らせることになるから、寿命は普通だとかなり短くなるわね。だけど私の傍にいれば私の力によって、そのわずかな命を引き延ばすことができるの。だから私の元に仕えて手伝ってくれた方があなたのためにもいいと思うんだけど?』









『また、皆の……ナンブルの元に戻れる!?』







ナイールはその言葉を理解し、新たな希望を持つ。







『ですが、ナイール……私の存在を決して他の者に話してはなりません』



『え?それは……どういうことでしょうか』



『申し訳ないのですが、いまは私の正体を明かすことはできません……しかも、その存在を多くの者に知られるわけにはいけないので』



『もし……もしも、私があなたの存在を誰かに話してしまった場合、どうなるのでしょう』




『そうですね……状況にもよりますが、最悪その存在や記憶は消させていただくことになるでしょうね』







ナイールは考える。




戻れたとしても、元の生活には戻れない。

だが、自分の子供は助かる。



しかし、元々は村を出て将来的にエルフの村のために活動をしようと決めていた。










(……そっか、同じことね)










ただ、残念なのは愛するナンブルと我が子とのお別れが待っている。



でも、生きてさえいればいつかは合える日が来るかもしれない。

そうすれば遠くから我が子に何かを伝えることも可能かもしれない。




エルフの一生は永い、チャンスはいつか来るだろう。







ナイールの中で、返答すべき答えは決まった。




その空気を感じ取り、大きな存在は最後の確認を行う。






『さぁ、ナイール。この条件を受け入れてくれれば、あなたを元の世界に戻してさしあげますが……どうします?』





『……はい。お受けします。お願いします!』







大きな存在が、少しだけ微笑んだ気がする。






『……よし、交渉成立ですね。あなたが戻ったらその手の中に指輪を渡しておきます、それが契約の証です。ですが、渡した生命力はそんなに長くはもちません。子供の無事を確認したら、すぐ私の元へ向かったほうがいいですよ。場所は追って知らせることにします』







ここまでくると、ナイールは察した。

選択肢を与えてくれたこの存在は、決して無理難題や嫌がらせでけしかけているのではなく、ナイールのこれからについて最適な提案をしてくれていることに。

だが、それを受け入れることも断ることもナイールの自由なのだ。






『それでは、また会いましょう……ナイール』






声が聞こえた途端に、何かに吸い込まれるように意識が遠のいて行く。

完全に意識がなくなる前に、ナイールはある疑問を解決しておきたかった。







『あ……あなたは、一体!?』












相手はこの叫びを聞いていただろうが、それに対しては答えてもらえることはなかった。























『……あなたも、相当お人よしね。たまたま見てたなんてそんな”嘘”までついて……ねぇ』






先ほどまで死の直前のエルフの意識がぞんざいしていた空間に、新しい別の意識が入り込んでくる。







『ちょっと……勝手に他人の意識の中に入り込まないでくれる?』




『ふふふ、そんなに怒らないでよ。最初から気付いていたんでしょうし……それより、あのエルフは”使えそう?”』






『もう。気付いてたって勝手に入って来ていいってわけでもないでしょ!?まぁ、それがあなたの能力だから仕方がないんだけど……あのエルフね、まぁ何とかなるんじゃない?それよりあなたはどうなのよ”ラファエル”』





『うーん……探して入るんだけど、なかなか見つからないものなのよ』





『難しいことはは分かるけどね……でも、あなたしかできないんだし、そんなに時間もないんだからね。のんびりしてられないわよ!』







『……はいはい、また作業に戻ります。また何かあったら教えてね”ガブリエル”!』








そういうと、ラファエルはその意識のから存在を消した。




ガブリエルは、元の世界に戻したエルフに意識を向ける

すると、その周りではナイールが意識を取り戻したことに喜んでいた。





そしてその夜、ナイールとナンブルの子供が無事、この世に生まれた。








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