3-144 変わった趣味










次の瞬間、ハルナの手の中の鱗が蒼く輝き始めた。




「ま、またぁ!?」





『おいおい……ハルナよ、”また”はないだろうよ』






また、真っ白な光の時空の中にハルナはいた。



そしてあのヤモリのような爬虫類が目の前にいる、モイスの姿だった。





「まさか、こうなることを予測して私に鱗を持たせたのですか?」







『勿論だとも……エルフたちが持っている鱗は壊れてしまい……お前たちで言う”細胞”が死んでしまっていてな。そうなると、ワシの力も届くことができんのだ』






ハルナに持たせた蒼色をした鱗はまだモイスと意思が繋がるため、その能力を遠隔で発動させることができたという。





「って今回もこの世界に連れてこられたってことは……何かあるんですよね?あ、もしかして、モイスさんがナルメルさんのお父さんを助けてくれるとか!?」








『すまんな……ハルナよ、それはできんのだ。そうしてやりたいところは山々だが、我らではこの世界の生き物の生死に関わることの関しては手出しができんのだ』






モイスはハルナに、期待にこたえられないと説明した。

その答えを不思議に感じたハルナは、モイスに確認をした。







「でも……私、何度か助けてもらっていますよね?」





ハルナは、モレドーネでヴァスティーユに襲われた時の話しをした。

あの時も、モイスの力によって池の水の汚染を食い止めることが出来た。




『うむ……あれは、厳密いえばお主に手助けしたのではなく”水を浄化させただけ”なのだよ』







ハルナは、あの時の場面を振り返ってみる。


言われてみれば確かに、ハルナを助けはしたがハルナ自身を助たわけではなかった。

モイスの力は、汚染された水だけに作用していたのだ。






だが、ハルナに気になることがあった。





「あの、それってモイスさんだけなのですか?フーちゃんの先生とかは……?」









モイスティアで同じくヴェスティーユに襲われた際、ハルナは大精霊”ラファエル”に助けてもらっていた。

ラファエルもモイスと同じ立場で同じ条件であったならば、ラファエルは”何か”の理に反した行動をとってしまっていたのではないか。


あれ以来ラファエルとは出会っていないため、もしかして人間を助けてしまったために最上位の神から何らかの罰を受けているのでなないかと、、元の世界のゲームや漫画からの知識をもとに想像し心配になった。






『ラファエルか……もちろんあの者も同じ制約が課されておる。だが、あの時のことは大丈夫だ。それはハルナ……お主だったからであろう』



モイスが言うには、ハルナはこの世界にあるが別の世界からやってきたため、他の者たちとこの世界に存在している”条件”が異なっているのだという。

そのため、ハルナに対しての制約もどこまでが掛かってくるのかガわからいらしい。






「ふーん……まぁ、私が異世界から来たからなんでしょうかね」




『そうかもしれん。だが、そのことについては何とも言えんのだ……おっと。こんな話をしている場合じゃないぞ、ハルナよ。お主はエルフを助けに行こうとしていたのではないのか?』






「あ、そうでした!?……でも、魔法が複雑にかかっているらしくって、村の外に出ることが出来ないんです」










『そうだろうよ……上手くやったようだが、自分たちで外せない程複雑にしてしまっておるからな。ほれ、ここを見てみるがいい』








モイスは空間の中に複雑に絡まっている糸が空間中に張り巡らされていた。

どうやらあの空間に仕掛けられた魔法を全てこの空間に取り込んだようだ。




それを瞬時に解読し、ハルナに見せるように可視化させていた。





『この箇所だがな……結果的にうまくいっておるようだが、まだ作動しておらんからだろうな。……ここに魔力が流れるとこっちの魔法と干渉して術者に帰ってくるぞ……おや、ここは使われた痕跡があるな。これは”魔法解除”じゃな……うむ、このレベルよりも強い魔法で上書きされておるな』





モイスは嬉しそうに、ハルナにエルフたちの仕掛けた魔法の解説をする。


どうやらモイスも”マニア”気質のようだった。





『……っと、すまんな。こういうのが好きでな、退屈な時は魔法の解析をやって暇をつぶしていたのだが、これがこう……面白くってな』






(――クスッ)











ハルナはその一方通行的な会話を懐かしく思っていた。




ゲームのギルドの内では、様々な知識を持つプレイヤーが集まっていた。

それぞれ様々な得意分野を持っており、異業種同士でも基礎知が豊富でそれぞれのプレイヤー同士でオフラインで助け合うこともあったと聞く。



そんな人たちが、ゲームの中でも本気で語り合っているのを見ていた。

ハルナは特別な知識を持ち合わせていなかったため、その話しを聞くだけで感心していた。


お店を利用している顧客の中にも、そういう人物は多い気がした。





久々に、そういったハルナの知らない内容を詳しく知る者の説明を聞くことに嬉しくなってハルナに笑いが込み上げてきた。









『……ん?ハルナよ、どうしたのだ?』





「い、いえ!?何でもないんです……ちょっと、前の世界のことを思い出していただけですから」





『そうか……うむ。では早速この魔法をこの時空と共に消去することにしよう。ハルナ……お主は戻ったらこのことを伝え、エルフの救出に向かうがいい』




「有難うございます、モイスさん!」







お礼を言われたヤモリは、口元があがりその感情が表情として現れた。




そして、白い世界は再び消滅して元のいた場所にハルナは戻っていった。









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