極限戦隊 ゲンカイジャー
混沌加速装置
ヒーロー見参!
世の中には
当然、そういった悪を取り締まるのは警察である。だが、年々増加傾向にある我が国の犯罪に対し、彼ら彼女らだけでは対応しきれなくなってきているのも事実であった。
警察官の増員を図ろうにも、命の危険と隣り合わせの職業のわりに給料が安いという不満から、政府の思惑とは裏腹に警察機構へ就職を希望する者の数は目に見えて減少していた。
このような困難な状況に立ち向かい、
まだ日が高い位置にある
「ところで、どう思いますぅ? この前の回覧LINEにあったアレ」
「アレ? あー、あの悪の組織だか何だかっていう……」
「そうそう! 怖いわよねー」
「ねー」
「そういえば、聞きましたぁ?
「えー! こわーい!」
「違うわよぉ。あれは酔っ払ってドブに落ちたのが恥ずかしくって、それで……」
「あらやだ! そうだったのねぇ。私もおかしいと思ってたのよぉ」
「おかしいっていえば、その何とかって連中の他にも何ちゃらってグループが」
「ちょっと〜、『何とか』に『何ちゃら』じゃ何もわからないじゃな〜い」
四人の笑い声が響くなか、和やかな空気を破壊するがごとく、突如としてガラスが割れる大きな音が聞こえ、文字どおり彼女たちを
「え? なに、今の音?」
「泥棒……とか?」
「まっさか〜、こんな昼間っから泥棒?」
「子供がイタズラして窓でも割ったんじゃな〜い?」
「でもそれはそれで大変じゃない? もし子供が怪我でもしてたら……」
「ねぇ、ちょっと行ってみましょうよ!」
「そうね、行ってみましょ!」
野次馬根性を丸出しに、破砕音が聞こえたほうへと小走りに駆け出した主婦たち。現場へ近づくにつれ、誰からともなく自然と速度を緩め、やがて足を止めた。振り返った先頭の女性が口の前で人差し指を立てると、みなも同じように指を立てて互いに顔を見合わせた。
「バッキャロー! 静かにやれって言ったじゃねぇかッ!」
「ウシシ、しーましぇーん、アーニキィ」
主婦たちが身を貼りつかせているブロック塀の向こう側から、男性二人のやり取りが聞こえてきた。怒りで興奮しているらしく、アニキと呼ばれたほうの声はかなり大きい。叱られているほうの男は意に介していないのか、もしくは元からそういった声質と喋り方なのか、その返事はどこかふざけているようでもある。
「何のためにマイナスドライバーとバーナー持ってきたと思ってんだッ!」
「でーもでもでも、アーニキィ。ガーラスってのぁ、割ったら音が出っちまうもんでねぇですかい?」
「そりゃオメェがバール的な
「うっひゃあ、なーるほどですね。さーすが、アーニキィ!」
「いくら過疎ったクソ田舎っつってもよ、どこで誰が聞いてっかわっかんねぇからな!」とアニキはそこまで言ってから、ようやく自分の声の大きさに気づいたようで、急に声を
空き巣らしき二人の会話に目を見開いた主婦たちは、「いろいろな意味でヤバイ連中だわ」と言いたげな様子で
「それじゃあ早速、金目のモンいただいてとっととズラかっぞ」
「ウシシ、そーしゃーしょう」
主婦の一人がスマホを取り出し、警察への緊急通報をしようとしたその時、管楽器を主体とした勇ましいメロディーが聞こえてきた。誰かの着信音だと思った主婦たちは、口角を思い切り真横に引きながら口の前で人差し指を立て、必死の形相で互いの顔を確認しあった。
「おい、
「アーニキィ、おいらのスマホじゃあねぇですよぉ」
「じゃあ誰が……って、なんだ、その目はッ! オマエ、俺を疑っ」
突然、どこからともなく男性の高らかな笑い声が聞こえてきて、空き巣たちだけでなく主婦たちまでもがギョッとし、慌てた様子で周囲を見回しはじめた。
「雷鳴
舞台役者のようなよく通る声が響くなり、アニキが「な、
「
「かぶき揚げ?」と
「
「ハチャトゥリ? 一体なん」
喋ろうとするアニキの言葉を食い気味に
「ありおりはべり、いまそかり。
「え、ちょ、なに……」
戸惑うアニキをよそに、男女四人が「我ら、極限戦隊! ゲンカイジャーッ!」と決めゼリフよろしく声を揃えたあと、低音部分が音割れした安っぽい爆発音が数テンポ遅れて鳴り響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます