召喚システムが変える日常

@azeru1000

第1話召喚システムが変える日常

 人間は下位次元には簡単に干渉出来る。紙に絵を書くなり、線を書くなりってさ。では、今自分が居る次元より上の次元の存在が居るとしたら、この世界は簡単に好き勝手されてしまうって事に成ってしまうのだろうか?まるで創作作品に置ける作者と作品の関係の如く。

 まあ、これはたわいのない妄想でしかない事だ。……だった、と、言い換えても良いけれど。少し前のある日、突然世界は勝手に書き換わって行った。例えば、紙に絵を書いたら、誰でもそれが簡単に具現化するように成った。でも、具現化した奴らは大それた事は大抵が出来なかった。只のAR等の拡張現実の技術を使ったドッキリなのでは?と言う人が居た。でもある日、その世界には存在していないはずの化け物が顕れ、辺りの物を壊して回った。……自衛隊に撃退自体はされた物の、国は当たり障りのない発表をした後、その事に付いて沈黙を守っている。ネットでは陰謀論だの、怪獣映画の怪獣が産まれる原因みたいな事が前に有って、それが原因なのじゃ無いかとか。そんな色々な憶測が飛び交った。

 只普通の紙に何かを書いただけでは、大抵は立体映像が出るだけだった。でも、そうじゃない時も有った。まるで文字を書き込む事で行う、ガチャの様だと例えた人が居た。……それを見た人が、なら、ガチャを引いた判定をされる前に、徹底的に文章、つまり設定を書いたらどうなるか?と言いだした。その結果としては、要はガチャを引く意思を示し、何らかの媒体に文字を一定の時間の間を開けずに書き続ける事で、それで書いた文章全てで一回のガチャを行えると言う物だった。だが、それをやった人は一時的に昏倒したらしい。どうやら、ガチャする際に体力とか生命力とかの何らかのコストを払っている様だ。でも、先の話に出た怪獣がもし仮にこの手法で産まれたのなら、長い文章を使ったガチャも普通にやれるはずなのだ。……皆の話を纏めるとこうなる。

一、何らかの媒体に文章や絵を書くと実体化する

二、実体化のクオリティは書き込み量で決まる

三、それらはほぼ連続して書かなければ成らない為、実質書き直し不可の一発書きが必要

四、ガチャ形式なので、ちゃんと書き切ったとしても、その通りの物が出るとは限らない

五、一定以上の書き込みをするとガチャをやれても反動が大きく成る

四は正直有り難い。キャラ絵を書いて、顔を書くのでミスしたのがそれで補正してくれるからだ。それに恐らく、ガチャ形式と一発書きシステムも無くては駄目だろう。それが無いと、何をかいてもそれを使う事に成るし、多分ヤバイ奴が大量生産されるからだ。

 さて、前提としては此処まで。作品の中だけに於いては作者が黒い物を白いと言えばそれは黒くとも白く成る。どんな奴を創ろうか。昏倒覚悟でガチャに挑むとしよう。クオリティ高いのが欲しかったら、そうやらないと駄目なのだろうからね。まあ、一、二週間で中編小説以上の奴を書きあげるのは一部の超速筆の人でもないのだから、やるのは普通に無理だが、書いていく。書いて、書いて、書きまくる。……だが、書いている途中で意識が朦朧としてきた。……どうやら、書いている途中にもコストを払っていたらしい。……書き切れなかったか、無念。そして俺は気絶した。その気絶から目が覚めると、見覚えの無い人に膝枕されていた。マジか?

「先輩。起きました?やっと話しが出来ますね」

「お、おう。君は、えっと名前はなんて言うだろうか?」

白菊雪華しらぎくせつかです。先輩。では貴方の名前を聞かせて貰えますか?」

「……甲原健樹かんばらけんじゅだ。よろしく」

「名乗るのに躊躇いましたね?」

「まあ、名乗ったらアレな奴かも知れないし」

「酷いですよ。先輩。私がそんなのに見えたのですか?」

「……後輩系の少女……。うん。有りだ。有りだけど、……種族を教えて欲しい。怪獣とかも出る可能性も有ったし」

「只のサキュバスです。先輩」

「ぶほっ。いや、なんでそんな……」

「良く考えてください。召喚の際に貴方は昏倒覚悟で無理矢理圧倒的熱意を注ぎ込んだ形に成るのですよ?熱意を持って女の子を細部まで徹底的に書き上げる。……それに性的な意図が一切無いなんて言わせませんよ?」

「……何か?つまりは創りたいって熱意がそう言う方向に取られた訳か?……いや、まあ、その……一切そう言う意図が無いなんて確かに言えないけど……」

「良かった。では早速契約ついでに生気を吸わせて戴きますね」

「ちょっ、まっ」

そのまま唇を奪われ、生気を少し吸われた。

「……まあ、良いでしょう。仮にも私はサキュバスなのに、魅了されてくれないとかそう言う所で文句は有りますけど、生気はそれなりに良さそうなので」

「……サキュバスって夢の中に入る奴じゃないのか?」

「それも出来ますが、初対面でそれは違うかと思いますよ」

「……そうか」

「一先ず最低限の契約は完了です。別に私を好きに使っても、良いのですよ?サキュバスですから、そう言う方面の使い方をされても得しか私には有りませんので」

「……なら一先ずカタログスペックの説明を頼む。召喚が自分だけの物って訳にも行かないだろうし、場合に依っては戦闘力の高い奴を創らなきゃだから」

「……先輩、性欲自体はあるくせに、不能なのですか?」

「違う。色々と必要な話を優先しているだけだ。その後は、まあ、やっても良いけど、やるなら夢の中でどんなのを出来るかは見たいな」

「……はい。では説明しますね。この召喚システムは召喚基盤を自分で用意する、ガチャ形式が恐らくイメージ的には一番近いと思います。レアリティが高いキャラは引きづらく、内情としては実質のレア以下は実質外れですね。そもそも自我をまともに持っていませんから」

「……実際の昏倒を覚悟し無いと高リアリティのキャラを引けないガチャ……オンラインゲーム的には炎上検案な気がするけど、まあ、今はまだその段階じゃあ無いか」

「……スペックについては基本注文通りですが、変更点は……ですね」

「……ああ、解った。……さて、一先ず俺は寝る。昏倒した上で目が覚めたら生気を追加で吸われるとか体力的な意味でキツいし」

「解りました。夢の中にお邪魔しますね」

「……マジか……休ませてください」

「せっかく創った後輩を放置で良いのですか?」

「じゃあ添い寝してくれ。襲える様な体力状況じゃ無いから、行為を期待されてもやらないが」

「酷いですね……」

「……じゃあ、お休み……」

「……ケチです……」

そして仮眠を取って起きる。システムを頭の中で整理する。前提条件を一緒にするならともかく違う世界の力なんて此方の世界的にはどうなるかなんて解らない。明確な理屈が無ければ世界を創る奴次第の話だ。要は書き込み量こそ正義なシステムなのだから、例えば全知全能とか漠然と設定しても、書き込み量不足で弱い感じに成るのだと思う。……つまり、少ない能力で、大量な能力を使える能力を持たせるのが望ましい事に成る。描写量こそ正義のガチャなら、要は描写を省略すればするほど出て来る奴のレアリティが下がるガチャと言うことで、結果、概要的なカタログスペックが幾ら良くても、能力のクオリティも一緒に落ちるだろう。これは中々に要求が難しいな。

「先輩。起きましたか?」

「お、おう。さて、これから君の扱いはどうしようか?」

「そうですね。まだ世界には一定以上のレベルでの召喚は少ないはずですから、隠しておきたいのは解ります。友人に隠しておけるか?とか食料問題とかですね。まず、隠すのは問題無いです。貴方に憑依させて貰えれば、家宅捜索されても現段階では見付かりようも無いですから」

「それは良かった。……なら食料は?」

「定期的に生気を戴ければそれで十分です」

「解った。憑依に何かの問題点は有るか?」

「憑依の特典としては身体機能強化ですね。身体機能を発揮する際に私がエネルギー的に補助をするだけなので、原理的には簡単です。長時間身体機能強化を使うなら生気を戴きますよ?」

「……生気を対価とした身体機能強化能力か。把握……。エロな事をやるなら今の内って事ね。それをやるのは身体機能強化能力の残弾減らすような物だし、強い奴が大量に召喚され始めたら必要に成ってくるだろうから。……じゃあやろうか。じゃ無いとやる機会無くなりそうだし」

「解りました。優しくしてくださいね。先輩」

「……やるように仕向けて置いて、よくもまぁ……」

「それはどうでも良いですから、やりますよ。ついでにサキュバスの力を実地でお見せますね」

「……解った。とりあえずこれはスペックの把握としての物って事ね。じゃあよろしく頼む」

そして色々な事をやった。……スペック把握が主目的だったため、其所まで特筆すべき事はやっていないけれど。……不安要素が一つ。ガチャするための物を書いている途中で昏倒した為、設定の全てを書き切っている訳では無いのだ。まあ、結構な量の設定は書いた後だったし、今の所問題は無い様だが、書いた奴は反映されているからまあ良いか。

「さあ、今の所はこんな物です。参考に成りましたか?」

「……憑依の確認が残って居るが……」

「もしかして乗っ取られるのを危惧しているのですか?それをやる気が有るのだったら、さっきの寝た時点で既にアウトだったと思いますよ?」

「……う……はぁ……まあ、そうだな。じゃあ憑依を頼む」

「了解しました。じゃあ憑依しますね。お試しに腕にでも憑依します。鎮まれ俺の右腕……とかやろうと思えばやれますが、どうします?」

「……勘弁してくれ」

「では、試しに林檎を用意してみてください。憑依したら、試しに握り潰してみましょう」

「林檎を握り潰すって握力の誇示描写で有るけど、実際はどれくらいの握力が必要なのか?」

「それを知った所でそう言う描写はこれも出来る握力が出せるぞ。……と言う物なので、全力でやっと出来る……的なので無ければ、それをやった奴の出せる握力の最低限の目安値にしか成りませんよ?」

「……そうか……あ、確認がしたい。ガチャで実際に消費されるのは厳密には何?そしてそれは身体機能強化能力で補助可能か?」

「まあ、エネルギーの明確な明言は避けますが、可能です。一日一回無料ガチャが可能なんて有るゲームは沢山有りますよね?ガチャに使う対価はあくまで貴方のエネルギーに成りますから、それを特定さえしてしまえば、それを生成する体機能補助や強化する事が確かに可能です。……良く気付きましたね。流石は先輩です。私を創っただけは有ります」

「ふぅ。セーフか。これで不可逆的な物を対価にしていたなんて成っていたらヤバかったし」

「身体能力強化では無く、身体機能強化能力ですからね。腕力強化は副産物みたいな物です」

「……つまりこれは大当たり引いたパターンか?」

「当たりかはともかく、これは引いたとしても案外気付かない人の方が多いはずの事なのですけどね。条件を精査したら、要は自分のエネルギーを使ってガチャを引くのだから、そのエネルギー生成をする力を上げよう。と言うだけなのですけど」

「……直ぐに気づかなかったから少し悔しいな。要するにこれはガチャを引く権利のブースト能力に成り得る物だった訳だし」

「ですが、今すぐには引かないでくださいね。ゲーム的に言えば体力が足りないので、引いても低レアリティの奴しか引きようが有りませんから」

「……まあそうだな。解った。じゃあ憑依してくれ」

そして彼女は一言断るといきなり消えた。腕にエネルギーが満ちているのが強制的に解る。そう言う知覚力も上がっている為だろう。林檎は砕けた奴が床に飛び散ってもアレだし、ビニール袋にでも入れるか。他人に見せるならビニール袋に何か細工してあるだろ?とか突っ込まれるポイントなのだから、使わない方が良いのだが、自分だけでやるなら別段問題は無いはずだ。そして林檎を持ちそれを握り潰せたけど、ああ、うん。やっぱりビニール袋に入れといてやって良かったな。林檎を処理し、エネルギーが腕から抜け出て、彼女がまた元の姿に戻る。

「断っておきますが、一定以上の奴の召喚=昏倒では一応は有りません。ガチャ形式な以上、例えば無差別殺人犯的なのが来てしまう可能性も有りますし、普通なら昏倒するまで設定を書き尽くすなんて論外です。昏倒で済まなく成りますからね。本当これからは辞めてくださいね」

「……まだ詳しくは仕様が解んない状況での話だし、勘弁してくれ。やらない様にするから」

「召喚は一人でも出来ますが、大人数でやるべきですし、昏倒するまで書くのも禁止です。ヤバイ奴を召喚した際に、一人だけで近場で昏倒している形に成りかねないのですからね。まあ、そんなのは死にますよね」

「……その点については返す言葉もございません……。召喚システムを隠れて使いまくるのは現実的では無いか……カタログなんか無いの?」

「システム上、仮にそう言うのが有っても、書くの自体が無くなる訳ではありませんよ?」

「そうか、一先ず、飯を食って頭冷やす事にするよ……なんか食べるか?」

「……私がちゃんと出ていて、外食時に何も食わないで通すのは無理が有るのは解っていますが、私には貴方の生気が有れば良い以上、普通の食料は私には嗜好品と同じですよ」

「……よし。ある程度は色々買って置いて良かった。……なら試しに食べてみようか。食料必要かもしれんと思って多めに買って居たのだよね」

「そう言う事なら遠慮無く、頂きます」

「最初は何が良い?」

「初めて食べる物を選べ、ですか?いや、それは貴方の生気でしたけど」

「……ああ、そうだね。ええと、何が良い?」

「ではこの中では、アボカドサラダをお願いします」

「ああ、はい。これね。どうぞ」

そして彼女はアボカドサラダを食べて、……弁当を買うと付いている様な小分けにされたドレッシングは無いか?と聞いてきた。……どうやらアボカドサラダに色々なドレッシングを掛けて食べるつもりである様だ。ドレッシングは一つの奴を集中的に使い順番に減らして行く派なので、ドレッシングを数種類同時に開けてなんか居ないと答えたらそう言われた。……そりゃ遠慮するなとは言ったけど、サラダから離れる気は無いのか……。そして暫くして、満足したのか箸を止めた。

「ごちそうさまでした。ありがとうございます」

「いえいえ。気に入って貰った様で何より。じゃあ、皿を洗うとしますか」

「ああ、私がやります。流石に全部任せも悪いので」

「それじゃあお願い。やり方は解るよね?スポンジと洗剤はここにあるぞ」

「解りました。では待っていてください」

「じゃあ頼むね」

 準備している時は気付かなかったが、絵図が中々に夫婦とか新婚とかそう言う物に成っている気がする。……これは流石に言い過ぎか?まあ、良いや。一先ずは彼女を後ろから見ておこう。……しかし、性欲が湧く余裕が無いから湧かないと言う理屈だったのだから、余裕が出来たら色々と不味い気がするが……今は抑えよう。そう言うのをやる様な雰囲気じゃ微塵も無いし。そして暫くして皿洗いを終えた彼女とお喋りに興じた後、気付いたので質問する。

「そう言えば代理召喚システム的なのを創るのは有りか?」

「……召喚した奴に更に召喚させると言う事なら可能ですが、その場合、召喚者が変わる為、直接な指示なり何なりとが面倒に成ります。まあ、集団的運用を前提とするなら余り大差なく問題は無い事では有りますが、自分が大量に情熱を注いだ奴を召喚するのを出来なくは無いのにわざわざ他人に任せるのが有りなのですか?」

「実際、イラストレーターと作家に必要な才能は違うし、別に分業したって良いじゃないか?」

「忘れましたか?書いた人の感情もガチャ判定基準に含まれます。そう既に言っていますけど」

「……情熱が性欲的なのに解釈された云々……か。ああ、つまり、自分で創んないと創られた奴の自分への好感度なんて最初は無いって事ね。把握」

「……そうですけど、皆まで言わないでください」

「いやいや、一先ずはありがとうね。本当に」

「……私って魅力無いのですか?」

「……要は手を出せ……と?はあ……。腹上死なんてしたくないよ。今やったらそうなりかね無いだろう?休憩は挟んだとは言え……」

「……じゃあ身体機能強化で体力を回復させてあげますから、やりましょうか」

「……お、おう。ガツガツ来るね……」

「サキュバスと言う種族的な意味で実地をやりたいですから。察してください」

「……解ったよ……やるから。回収した奴を戻してくれる様な物なのだろうし」

「ええ。じゃあやりましょうか」

そして押し倒されキスをされ、脱がされ始める。いや、待て、

「脱ぐくらい自分でやるから……」

「……なら私の事も脱がして良いですから」

「……お、おう」

そして相手を互いに脱がす。

「一応変身能力も有りますがどんな姿が良いですか?」

「変身能力無しの姿が一番良い」

「……もう。卑怯ですね」

そして抱きしめられる。

「存分にやりましょうね……」

 色々な行為をしまくった。好感度がある程度有る状況とは言え、直ぐにやれる事は大抵全部。

「……良いのだろうか?こんな事は」

「……良いので無ければこうはなりませんよ。システムを創った誰かが居たとして、そうできる余地を許容しているのですから」

「つまりは、法律的に無罪な事なら何でもやって良い的な主張だな……」

「法律は不完全な場合も有りますし、今は私側の奴のそう言う法律が決まる前なのですから、別に法律的に問われる事なんて有りませんよ」

「……本当に大丈夫なのか?闇金業者みたいに後から決まった法律で後から罰則受けない?」

「後に有罪扱いされるにしても、今は無罪です。もし有罪にされようとしても、私の種族的に生きるのに必要だと言えば良いので、問題視されても問題は無いですね」

「……その理屈だと、前に怪獣を出して暴れさせた奴は罪に問えなく無いか?そう言う法律なんて整備前だし……いや、ちゃんと従えさせられていた上でなら話は別に成るし、従えさせられてなかったならそれはそれで怪獣の最初の犠牲者に成っている気がするけど」

「それを言うなら、私が何歳と言う設定で創られていても私とやる性行為は犯罪ですよ。今の段階では産まれてから二日も経っていませんからね」

「……ああ、そうなるか……そう言えば、次のガチャまで休憩はどれくらい取れば良い?」

「……私だけでは不満なのですか?」

「……いや、そうは言ってない。先を見越しておくなら次にガチャが引ける迄に掛かる時間を知っておきたい訳で」

「……低レアリティの物を召喚するならほぼインターバルは有りませんけど、あくまでガチャ形式な為、確実な戦術として組み込むのをお勧めはしません」

「……あくまで使う場合はランダム効果技と同じ、ね。把握。高レアリティの奴は?」

「召喚に使う設定量次第です。一定以上のインターバルを必要とする奴を創った場合、暫くはガチャ自体が追加では出来ない事に成ります。あくまで無茶が無しなので有るなら、ですけど」

「つまり総力戦とかで相手を見てから必要な奴をその場で創って連続追加投入は厳しいか」

「やるのが個人ならそうなります。一定以上の存在を簡単に短期間で連続召喚なんて真似が出来る奴が出来ない奴と馴れ合う必要が有るかは疑問ですが」

「召喚された奴が更に召喚も出来るなら十分有り得て可能じゃ無いか?まあ、広義的にはそれは個人と言うべきなのかも知れないが」

「……大量召喚をしたいのですか?」

「……先がどうなるか解らんから自衛手段としては欲しいかな。……怪獣大戦争的なのに巻き込まれる可能性も有るし」

「お金はどうするのですか?そんなに大人数召喚して、それを養える金を出せますか?」

「……富豪とかじゃ無いのだから、無理、それこそ宝くじでも当てないと……あ、その手が有ったか。直感とか運とか強化出来る?それを使って宝くじを当てに行こう。今ならまだそれを能力でやりに行く奴は居ないか少ないだろうから、十分取りに行ける。いや、まあ、ある程度皆が召喚やれ始めたら一定数そう言う考えの奴が出て、宝くじ自体が一等の奴が出過ぎて額が下げられそうな気がするから、今の内だ。よし。宝くじを買いに行くか」

「……あくどいですね……」

「……とは言え、当選が解る迄の期間が長い奴は先行してやっている意味が無い。だから、確実なのは少額な代わりに直ぐに当選結果が解り金を貰えるタイプの奴をやるのが先ずは無難かな。貰える金額が大きい奴も試すのは当選発表が近い奴で無いとだけど……ちょっと調べてみよう。サラリーマンの生涯年収平均は二億。仮に一家庭を四、五人と計算すると、一人につき四千万から五千万有れば良いのか?」

「それは流石にガバガバ計算だと思いますけど、一先ずの軍資金な訳ですし、それで全てを払える必要は無いとは思います。宝くじで何億を目標にするのですか?」

「……同じ手段は直ぐに使えなくなると思うから、稼げる内に稼げるだけ稼ぎたいけど……億とかの金が入るとなると、税金って凄い金額が取られるそうだし、……まあ、宝くじ売り場とかを回れるだけ回ってみて、稼げるだけ稼ごうか。……まあ、税金は獲得金額が一定以上の金額に成ったら跳ね上がるらしいから、その額を下回る為に、人手が居る訳で、……はぁ。一先ず、宝くじを少しだけ買って実験してみようか。其所辺りの話はその後に煮詰めよう」

「解りました。先輩。頑張って行きましょうね」

「おう。そうだな。一先ず憑依を頼む」

「解りました。じゃあ行きますよ」

 そして全身に憑依して貰った。……結果、空間内の何もかもが見えすぎ、むしろ視界が埋まった。……ふむ。性能が高性能過ぎるのもそれはそれで良し悪しである様だ。

「少し視覚強化のグレート落としてくれ、見えすぎて、むしろ何も見えなくなっているから」

『解りました。後、口に出さなくても頭で考えてくれれば伝わりますよ』

「うぉっ。ああ、解った。『これで良いか?』」

『はい。問題ないです。では宝くじを買いに行く前に憑依時の知覚力のチューニングをやることにしましょうか』

『えーと、時間余り掛けないでくれな……生気を使うのだし』

『まあ、それは貴方次第です。手早く済ましていきましょう』

そして暫く調整を行っていく。

『今は運や直感等の物の強化を優先します。でも知覚力はそのままにしますね。不意討ちとかを考えるとその方が良いはずですから』

『解った。調整を続けていこうか』

暫く色々な調整を行って行き、一通り調整を完了する。

「よし。一先ずはこんな物で良いかな」

「一先ず召喚に使った紙は他に見られない様に保管するか、私に渡してください。それが召喚媒体に成るので、奪われたら大変ですから」

「……それは解ったけど、君に渡したらそれが変わるのか?」

「そう言う訳では無いですが、一先ずは能力で別の空間に保管します。その空間を割り出されて無い限りは問題無いはずです……まあ、召喚媒体が壊されて不味いのはこの世界に存在が定着していない初期段階の内だけなのですけど」

「やべー奴が召喚されても、初期段階なら直接的に倒す以外の方法で倒せる訳だ」

「要は一定以上のスケールの危険な奴がいきなり召喚された場合の対処方法に成ります。」

「……召喚媒体を壊せば、いわゆる召喚キャンセルを行える、但し、それは初期段階に限る。……ね。把握。まあそれを召喚された側の全員が知っているなら、その初期段階が終わるまで大人しくしとけば済む話だから、ある程度ちゃんと理性が有る奴には意味は無いし、あくまで召喚者の意思に反する様な化け物が産まれて暴れ出した……的な条件の検案潰すのがメイン目的な設定だろうけど」

「まあ、それは良いですが、資金集めは例えば鉱物や宝石類を創れる奴を創るのはどうですか?」

「……猫とかには血統書が有るだろ?貴金属とか、宝石とかにも鑑定書とかが無いと買い取って貰えても買い叩かれる可能性が高いし、量が量だし、出所が出所だから、普通に密輸を疑われかねない。先行者利益を得たいって時にそれはちょっと駄目だろう。創った奴を金に変えるのは面倒なら、金を得るのでは無く、物資系を創る能力類の奴は要るか。……さて、どんなの造ろうかな。流石に闇商人的なのと知り合いじゃ無いし」

「ですが、方式はどうするつもりですか?等価交換なら結局はある程度の物質が必要ですが」

「さっき知覚力を上げて見たので思い付いたのだけど、空間上に大量に色々あるから、それを使えば良いだろと思うのだが」

「……ああ、つまり、空間その物に宿るエネルギーを物質生成に利用しようって事ですか?」

「空間エネルギーを知覚出来ない奴からすれば、客観的には十分無から有を生む的な状況に成ると思うぞ。厳密には無からじゃ無いから違うけどな」

「自分のエネルギーを自分の食料を作るのに使うと、減って居る場所が変わるだけで意味が無いとは言え、卑怯すぎますね……」

「……まあ、良いや。それは後回しで。準備は出来た。一先ず宝くじ買いに行こう」

そして憑依を改めてして貰い、宝くじを買いに出掛ける事にしたのだった。さて、一先ずは買うと成るとスクラッチくじが良いかね?

『先輩、注意事項としては、運が良いにも限界が有ります。そもそも当たりが無いくじを引いても当たりは出ないですし、それは買う前の段階の時点で判断してください』

『解った。……なら、あの店は無理、当たる気がしない。次に行こう』

『実際、都会や観光地なら結構頻繁に宝くじ売り場が有る場所も有るそうですが、近場の何箇所もの宝くじ売り場で何回も大当たりを引きました。なんてしたら疑われるので、一度買って当てた後に再度買いたいなら、何店舗か分離れた場合に有る宝くじ売り場を目指してください。……流石に当てまくるのを見られたら、店員はともかく、チンピラに絡まれかねませんから』

『把握。なら一回一回結構な距離を移動し無いとだな。バスはバスの中で絡まれそうだけど……流石に大丈夫かな。宝くじを当てた後は、受けている視線の知覚力でも上げておいてくれ』

『解りました。……ですが、殺意とか敵意とかそう言うのも過剰に受け取りやすく成るので、精神的に慣れないと厳しいとは思いますが、それでも宜しいですか?』

「……なら、尾行されて居たら教えて欲しい」

『じゃあそうしますね。次の宝くじ売り場が見えてきましたよ』

「……よし。買うか」

『では何枚買います?』

『とりあえず十枚な』

そしておおよそ合計約五万が当たった。……これは来て居る。稼げる。

『……まあ、恐らくですが、運系能力バフを使える奴が大量に顕れた場合、宝くじその物が、正確に言えば、特に記入式系統は無くなると思いますけどね』

『まあそうだな。購入者側が完全に自由に設定出来る奴は多分無くなるだろうな。……さて、一先ず此処から引き上げますかね……』

別にこれは俺が殺意とか敵意が駄目だとか言っているのじゃ無くて、要は受話器のスピーカーの音量がいきなり一気に上がって、大声がいきなり継続的に来て、それに驚く様な物に成ると言う話だ。慣れて居ても感度を一気に上げられたら、そうなった当初はキツイ物に成ると思うよ。性能が一気に上がるが故に、むしろハードモード仕様に成るのはどうかとは思うけれど。

そして、更に移動して、購入する。一先ず当選額が十万を越えた所で今の所は引き上げる事にした。……これ以上は不正疑われそうだしね。人手が欲しい理由としてはそれだ。他の奴に買わせる事で、一見別々な人に当選しているように見せられる。只、それなりの金額で大人数雇える金が有るなら、宝くじに頼らなくてもそれなりに資金は既に有る訳だし、分け前もそれなりに渡さないとアレだろう。更に、召喚に成功している事を隠すなら、そもそも協力して貰えるかも微妙だろうし……。うーん。テレビ局とかの社長的な立場でも有ればテレビ番組の企画の一つとして通せるのは確かだけど。即金が入るタイプの奴は他の奴に買わせたら、当たっても懐にそのまま入れさせられる恐れが。……あーもう。ままならないなぁ……。記入式ならともかく、さっきの的に仮にスクラッチくじで一気に大金を払って一気に大量に引いたって、入っている当たり分以上は引けない訳で、だからと例えばボックスガチャにおいて一人で残っている当たり分を何カ所も全部引くなんて真似をしたら、悪目立ちするにも程が有る。一定以上一回一回に限れば自然な範疇で当てたいなら、結局は売り場の数を大量に回るしか無い。……うーん。今回は十万程度稼いだけど、さて、此処からどう動こうか……。

『……アイディアとしては締め切り間近な懸賞に応募するのはどうでしょうか?』

『お、それは有りだ。……だが、金稼ぎが目的な以上、金が景品でも無ければ転売前提に成る。……効率を考えれば、パソコンとかゲーム機とか車とか、中古として転売してもそれなりに高値で売れる奴を取りに行く必要が有るけど、……数名しか当たらない商品に成るだろうから、何個も取れたら不味く無いか?当たった人を載せる奴は避けないとあれだろうし、後、如何しても当てたい懸賞はとにかく数を送るのが鉄則だと思うが、数百枚数千枚とか懸賞に送るハガキを書きたい?』

『……数千枚も送るなら、使う値段的に素直にその景品側を買った方が良いと思いますよ?ですから多分懸賞で景品の二分の一の値段分以上のハガキを使って送る人は度外視して良いと思います。それ以上ならそうするよりは、もう普通に買えって話ですから』

『……なら限定品関連は辞めた方が良いな。そう言う奴等も普通に居そうだし。食料問題に付いては別の物を主食する奴を創れば良い……けど……』

『主食が生気の奴を大量に追加するのは辞めてください。流石に体が持たないと思いますから』

『……絶倫にもし成れたとして、連日中そう言うのをやるのは体力的に如何なのって話で……』

『出来る、出来ないは議論的には水掛け論だと思いますよ?ではそれはともかくですが、付けられている気配が有ります。警戒してください』

『……マジか。チンピラか?それとも、なんだ?』

『まだ今の段階では判断しかねます……一先ずスマホを出してください。地図情報を見て逃げ道を決めた後、電源を消して、逃げましょう』

『解った。…………よし。行くぞ。アシスト頼む』

『まだ人間にしては速い程度の補助しかしませんから、楽々逃げられるとは思わないでくださいね。力を見て簡単に解るレベルで使うのは一種の自白ですよ?』

『……なら、他のサポートは追跡者の位置把握報告だけで良い。行くぞ。』

『何時でもどうぞ』

そして尾行を撒く為に一先ず道が複雑な方向に走り出した。鬼ごっこの時にやりたい行動としては、とにかく追跡者の視界から外れた道へ行き、その道から更に別の道へ何回か移動する事。追跡者側に追跡系能力やドローン等の設備で、いわゆる神視点が無いなら、追跡する途中に分かれ道があれば有るだけ、どの方向に行ったかを当てなければ追跡をちゃんとは続行させられなく成るからだ。高高度の上空にドローン等が居るなら、多少道を複雑にしてもあれだし、隠れ蓑に成る様な場所なんて近場には無いから、ドローンを撒くのは骨だし、白菊が大体の相手側の位置を教えてくれるから逃げられる道を選択出来るが、それに相手側が付いて来られるかどうかで相手側のレベルが大体解るが、どうなるか?

『……もう大丈夫です。気配が十分離れました。十分撒けた様です。そもそも突発的な話ですから、相手側が準備万端で無いのは良いとして、恐らくは単なるチンピラだったみたいですね』

『なら一先ず帰るか。此処ら付近の宝くじ売り場には暫くは近付かない方が無難だろう』

『……残念ですが、そうなりますね。先の方法は止めた方が良いかも知れません』

『さて、なんか他の金稼ぎの方法考えなきゃならなくなったな……』

『……そう言えば、何で変身出来るのに対して、変身し無くて良いって言うのですか?』

『……野暮だな。それ、説明の必要有る?』

『確認はしときたいですから』

『女の子にお前の見た目論外だから、此方の指定する見た目に成ってくれ。……って言われて一切ムカつかれないと思う?但し、変装とかが話上必要なのは除く』

『……蛇足説明が無ければ良い感じだったのですが……』

『……なんだよ。先に言っただろ?野暮だって』

『それはそうなのですけどね』

『特に理由もなく、見た目が他の方が良いから変えてって流石に酷すぎるからな。そう考えるとああ言うべきだろう。別に見た目が嫌いでは無いから変える必要自体は無いとは思うけど』

『……胸はもっと有った方が良かったのではないですか?』

『……下世話な話に成るが、要は胸を使ってやる系の行為を君に求めなければ済む話だろ?』

『本当に下世話ですね。確認しますが、大きな胸が好きって事は無いって事で良いのですね?』

『……やれる行為が増えるって意味で胸が大きくて悪い事じゃ無いけど、此方は別に胸の大きさを基準に好きな人を決めている訳じゃ無いからね……』

『……ありがとうございます』

『さて、移動手段の確保でもしようか』

『近くにタクシー乗り場が有るみたいなので、それを使うと言う手も有りますよ?』

『今は、多少本来より金を使っても、その方が良いか。よし、タクシーに乗りに行こう』

そしてタクシーを使いある程度の距離を一気に移動する。

『一先ず約十万の使い道をどうしようか?』

『……宝くじ関連はまだ買いに行くならエリアをだいぶ変えるべきです。ギャンブル場はそう言う創作だと大金を手に入れたら大変な事に成るのが常です』

『ギャンブル場は聞いた話だと、初めて来た客はある程度勝たせる様にするらしいな。そうすることでそこのギャンブルをやっても金がむしり取られるだけでは無いと印象付けした上で、その後に相応の金を払わせる算段が有るのが前提でだが』

『では競馬や競輪等の国営の物はどうでしょうか?』

『ああ言うのは、大穴が発生し無い限り、リターンは低い物だからな。大金を一つの賭けに注ぎ込むなら的中に依るリターンもそれなりに大きくは成るけど……リターン倍率が1.5倍の奴一つに千円や二千円程度掛けた所で五百円から千円くらいしか稼げないし。必ず的中したとしてその程度なのに、外れる奴もそれなりに出るからな。大金を注ぎ込めるか、大穴を当てられない限りはやる意味無いと個人的には思っているな。家に帰ってきたが、さて、どうするか』

『しかし先輩は順応速いですよね……』

『想定外として君を召喚した訳じゃ無いし、驚くのは、怪獣が出て来た時に既にやったよ』

『召喚システムがこの世界に実装されてからは、一ヶ月、怪獣が出現してからは一週間弱……ですか。まだ一般的には召喚システムのシステム解析の段階なはずですよね?よくもまあ召喚に踏み切りましたね。怪獣が出る事も想定出来たはずですが』

『怪獣が出たのは怪獣を書いた結果だと思ったからだ。低レアが出た場合、先に自分で書いた奴は基本的には書いた奴がそのままホログラム化したし、何の意味も無くこんな物が実装されたとも思えない。他の世界と繋がったとするには怪獣以外は特筆するような事も無さそうだし』

『そう言うのが有った上で、政府がそれを隠している可能性は有りますよね?』

『……だとしても、隠している事が宣戦布告的な事だとは思えない。システムを使うなって勧告くらいはするべきだろう……いや、しては居たが、それにまともな強制力は無い程度な物でしかない。何せ、召喚は紙なり何なりに文字や絵を書くだけでやれる。それを完全に止めさせるのは現実的じゃあ無い。隠れキリシタンとか、タップダンスの起源だとかの例も有るし』

『要するに止めさせたいなら、召喚システムの危険性を提示すべきですが、むしろそう言うのを望む人間からすれば朗報ですし、手段も手段ですから、やるのを規制するのが無理なレベルなので、当たり障りの無い発表をしたのでは?』

『……ああ、つまり政府は召喚システムの危険性を説くのは、押すな、押すな、をやるような物だったから、当たり障りの無い発表しかやりようが無かったのか……嫌な予感がするな……』

『完全に善意な可能性は無いのでしょうか?』

『……努力し無くても誰でも手に入る物を、わざわざ努力して手に入れようとする奴はどれだけ居るだろうか?』

『……少なくともそれは多数派では無いですね。価値観次第な話では有りますが』

『この召喚システムが自分達で作った物で無い以上、例えるなら、要は他人に創って貰っただけで直し方を知らない類いのインフラだ。システムに完全に依存した後に、システムが壊れるなり創った奴が回収するなりしたら、大変な事に成る……』

『ある程度成功例が公表された後に、創るのを停めるのは難しいと思いますよ?』

『……そりゃそうだが、例えば希少価値が有るが故に高いタイプの鉱石や宝石は簡単に創れる奴が一定以上出たら、価値が暴落しかねないからな。食料生産だって簡単に……要は物価が滅茶苦茶に成り得る訳だ。……仕事で獲られる物が簡単に創れると成っては仕事自体が趣味化している奴でも無ければ仕事する意義自体もね……』

『……市場経済に対する攻撃としてはかなり高評価に成りそうですね』

『でも、その仕事を辞めて貰っちゃあ困る。やらなくて良い理由が一時的な物かもしれないし』

『……それでさっきの話ですか……さて、気分転換にテレビでニュースでも見ましょうか』

『だな。テレビを付けて、ニュース番組に、ちょっと待て、軍隊蟻が近くに出て人を襲った?』

『軍隊蟻……ですか?』

『……調べれば解るけど、圧倒的数で自分より大きい捕食対象を集団で生きたまま喰らい尽くして、解体する蟻だ。……この国には居ないはずなのに、誰が持ち込みやがった?』

『その人は大丈夫だったのですか?』

『……襲われたのが川の近くだったから、川に飛び込んで、息を止めて、蟻達が窒息死するまで潜水した。だとよ。被害者は被害者でやるね。襲われたのは災難だけど』

『……多分それ誰かの能力なのでは?大人数襲われたと書いていませんし』

『……うわぁ軍隊蟻を生成と制御する能力だって?えげつないなぁ……』

『……でも、なら何故私を創ったのですか?』

『……あくまで他人側が創った物だからメンテナンスも何も出来ないって話なのだから、召喚システム自体を解析して自分達側でやれる様にしまえば良い。お偉いさん方も流石にそれぐらいは気付くだろう。召喚システムに依存させたいなら、暫くの間は大丈夫なはずだしな。……軍隊蟻の件がそれなら問題は既に起こり始めている様だがね……』

『物価破壊、犯罪者に武器を与える。……ファンタジーって良い物なはずなのですけど……』

『……これらの問題は他人側に与えられた黎明期で、まだ法整備もままならない段階だからこその問題だ。最初からファンタジー世界なら、最初からそう言うのを前提として色々なのが組まれているけど、要は後からそう言うのが加わったせいで、要は治外法権とか法律上、度外視される検案が多すぎる状態で状況だ。……召喚システムの一定以上の召喚難易度が根拠無く気軽にやろうなんて思えないレベルなのが救いと言えてしまうくらいのレベルなのだしね』

『ですが、召喚量が少ないのは召喚システムの実用性が理解されていないからですよね……』

『……そうなるな。本当に早く自衛力を付けないと不味いだろうよ……』

『ひとまず、件の能力の対策を考えませんか?』

『実際、殺人教唆って相手に自然の動物や、魚とか、虫とかを仕向けさせて殺させる場合も適用されるのか?されないなら、能力が立証出来ないと、動物なり虫なりを召喚して相手を殺す奴は殺人罪に問うのは難しいと思う。それでも罪に問えたとして、殺人教唆扱いだろうから、直接殺すより罪が軽くなってしまうだろうな』

『……速く法整備し無いと大変な事に成りますね……』

『公に取り締まりたくとも、それを公表してするのは、今の段階なら押すな、押すな、やっている様な物だからな……』

『前提はこれで良いとして、対策を考えませんか?』

『簡単な対策としては、召喚者と戦うなら、そもそも軍隊蟻に近付けさせないのと、出来る限り戦う際は走り続ける事』

『飛べない虫ならその対策でも良いのでしょうが、生成能力なら自分の体表に軍隊蟻を直接生成される恐れが有りますよ』

『……うへぇ……軍隊蟻に噛み切れない程硬く成れるとか、炎や水を常時纏える様に成るとか……そう言う対策の方が良いわけだ。なら次はウィンディーネ辺りでも創るか?』

『そうですね。ですが召喚は吟味してからにしてください。維持費的な意味でアレですから』

『まあ、そうだな。他のも考えていこう。使っていて目立つ能力は現時点では論外として……』

『……先輩、それだと極論能力無しでも出来る事の延長線上の能力以外は論外に成りますが、それはもう私が用意出来ますよ』

『……ああ、そうなっちゃうか……ならどうしようかね……』

『条件を整理すると、第一に現段階では能力を使って居る事を隠す必要が有るので、使う事で目立つ能力は論外。第二に、召喚する奴は維持費の掛からない奴にするべき。第三に、どんな姿の奴でも、見た目が普通の人間と変わらない形状を取れるのが望ましい。……なら、例えば加工技術持ちのドワーフを推奨します』

『……確かにドワーフは有名所では有るのだが、そもそも加工技術持ちを創って商品を創っても、それ売る土壌が無いからな……まさか高確率で買い叩かれるのが解っているリサイクルショップに売る訳にも行かないし、金物屋とか武器屋なんて近くには無いからな』

『金物屋に金細工を持って行くと言うのはどうでしょう?』

『……金細工を創る貴金属は何処から仕入れる?まさか、その金物屋で買った奴を使うってか?なんだ?そのゲーム的なのは』

『素材より加工品が高く売れるのは貿易では有り触れて居ますが……』

『いや、冷静に成って考えろ……加工して出来る物が多岐に渡る類いの物をどこかの素人らしき奴が買い取った後に加工して売り付けて来た。だ。一定以上のクオリティの物が出せなきゃ、素材の使い道が減った的な意味で素材の値段を下回る値段で買い取られる恐れが有る。……かも知れない。流石にこれはよくわからんけどさ』

『……とりあえずそれ関連の知識が無いのは解りました。なら手を出さない方が良いですね。ならもう、ウィンディーネにでもしましょうか。水の体を持つなら、水全てがウィンディーネ扱い出来るとでもすれば世界から全ての水分が無くなりでもしない限りは生存出来るはずです』

『……全部凍らされたらどうする?』

『その定義の範疇の水を別空間にでも保管しておけばその場の水全てを氷結されても基本的には死にませんよ。そもそも当たってない物に対して当てられる……とか理屈も何も無い奴が有るなら別なのでしょうけど』

『よし。更に煮詰めていこう。それで召喚システムを使ってみる事にしようか』

『……はい。それでは……』

そして暫くの間は議論を続けたのだった。さて、設定群の煮詰めは粗方終わった。ウィンディーネを召喚しよう。ガチャの為に設定群を書き込んでいく。エネルギーが取られていくが、構わず書く。書いていく。白菊に補助して貰い、設定群をかなりの量を書いていく。……そこで白菊からストップが入った。……まあ、良い。ひとまずこれで行こう。そしてガチャが起動する。設定群から文字状の何かが浮かび上がっていき、それが一つに収束していく。……結果、全裸の女が顕現した。(但し水で体が出来ている。)

「ちょ」

「貴方が私を呼び創った人かしら?」

「……ああ、そうだな。……とりあえずなんか隠せよ」

「……全ての水は私で、私は全ての水で有る。……なんて設定にされたのに、隠す意味なんて無いわよ。……貴方の唾液も私って事なのよ?羞恥心が擦り切れる設定をどうもありがとう」

「……うわぁ……考えが足りなかった。これは俺が悪い。すまなかった」

「……ふむ。意図的では無い様ね?なら、そうね。さっさと私と性行為しなさい。水の中でオナニーなんて何処かでされたら犯されているのと変わらないもの。それくらいなら、先に自分でやっておきたいわ」

「……何この展開?それを犯されているのと同じにして良いのか?真面目に言っている?」

「……つまりこう言う事よ」

彼女の形はいきなり崩れ、此方に、より正確に言えば腰回りに纏わり付いた……そこで察する。……水全てが自分の体なら、風呂とかで水の中に性器を入れたら体の中に他の奴の性器を突っ込まれた様な物って事か?

「……言っている事の意味は解ったけど、理屈は中々に狂っているな……」

「全ての水は全て私で、私は全ての水。要は水と言う概念その物自体が無くならない限り私は生存出来る。……けど、いくら何でも感覚的に擦り切れる内容よ。こんな物は」

「本当すみません……」

「……他の物が混じっていたら対象外……とするのは、……駄目ですね」

「ええ、そうした場合、何かを水の中に混ぜるだけで私は体を奪われる事に成るわ」

「……設定範囲を純粋な水だけに調整したら、対処が簡単に成りすぎるか……」

「解った?一先ずはこのまま精液をぶちまけなさい」

「……あ、マジでやるのか?」

「……そうやらないといけない様にしたのは貴方でしょう?変態。沢山の奴に犯された奴の方が好きなのかしら?」

「それは違うけどさ、人気な創作のキャラに実際に好意を一定以上向ける、いわゆるガチ恋勢って奴は、それをある程度は肯定出来ないと発狂するには十分な感じの物は世間に既に有るのじゃ無いかな……」

「……中々に難儀な事ね……語弊が有るように感じるけれど」

「……あ、ああ、犯されていた方が良いって言っている訳では無いな。うん。好きな人を独占出来る事なら独占したいって言うのも解るし、これがウチの嫁だ。と他の奴に見せびらかすのも自慢したいって言うのも解る。……ハーレムとしての物を除く乱交はちょっと解んないけど」

「……それは好きな人とそう言う行為をやるって言う事その物自体より、得られる快楽自体の方が目的なのじゃ無いですか?」

「……要は快楽に溺れた結果か……なんか、これには語弊が有るけど、掘り下げるのは危険と判断する。じゃあやるぞ」

「……確かに貰ったわ。ありがとうね。体内に精液混ぜられる行為が性的じゃ無いなら、精液飲むのも性的では無いわよね?」

「……それは掘り下げなくて良いから。現実問題としては、一定以上の氷系相手がヤバいな」

「条件を弄ってやればと言う前提の上でだけど、常温の氷も有れば、氷点下の水も有るわよ。それを常時化出来れば良いだけね」

「……それは流石に卑怯なのではないか?」

「メタが分かり切っているのだからそのメタのメタを用意して何が悪いのかしら?」

「……そりゃそうだけど……確か、過冷却水だったか?それは一定以上の衝撃加えたら凍ると言う話じゃなかったか?」

「……条件を弄るのよ、それもどうにかすれば良いだけよね?」

「そうか……。なんかネットで調べ……ふむ。ちょっと待てよ?召喚には此方の感情も考慮されて、ある程度設定も変更され、……いや、真水だけの設定に変えたら弱体化に成るか……」

「……でも、疑問なのよね。こう言う召喚システムが有るのに、好きな人を創るよりガチな物を優先しているのは何故?」

「……はぁ。創れた奴次第で行動計画変えなきゃだから。それに創る際の感情が創る際に判定基準に入っているって事は、……例えばレイプや陵辱や調教したいとか思って創ったら、初対面の相手にそれを言った形に成るだろ?システム的にヤバイ奴が代わりに出て来そうでな……」

「……そうよね。……そう言う事なら創る際に悪感情が無かったから通ったのでしょうね」

「……申し訳ない……」

「……水の体って少し興味が有りますね。何処が体の何処だとか有りますか?」

「……その定義は黙秘権を、……いや、設定を弱体化させない為には全部が全部と定義は出来る様には出来るわね」

「それは触れられては不味いのでは?」

「そうよね。いわゆる不感症だから、意味ないけど」

「……ならさっきの行為の意味は?」

「皮肉。それ一択よ」

「……休憩後にちょっともう一回召喚しようか」

「先輩は何を召喚するつもりなのですか?」

「どんな奴にも設定群が前提としてこの召喚システムの奴には存在する。それで不感症を潰してみよう」

「止めて貰えないかしら?その意味解っているの?」

「……逆レイプ紛いをやった挙げ句、此方とやっても気持ち良く有りませんでした。だもんなぁ。設定がそうさせたって言うならなら変えて」

パチン。其所で白菊に頬を叩かれる。

「その意味を解って言っているのですか?四六時中誰かに犯されるのを呑まれるのを誰もの体を駆け巡るのも、水の全ての待遇を全て体感しろと貴方は言っているのですよ?流石にそれは駄目ですよ……」

「……頭冷やしたいから顔洗ってくる」

 はぁ。顔を洗い、考える。……やりたいと言ったのは不感症かどうか確かめる為、……だとしたら良いのかも知れないけれど、……おかしいな。水で顔を洗う。それ自体はなんら不思議では無い。でも、このタイミングならおかしいよな……?水を両手に溜めて顔にぶつける。それには唇だって含まれる。……つまり一方的にキスをされるのを許容した?……いや、要は性行為その物に価値自体感じては居ないのだ。……いや、それに価値を感じるなら、自分が散々されている、されるだろう事にも価値を認めなければ成らなく成るか。……ああ、そう言うのに対して否定的な立場を取らないとアレな立場だな、これ。……なら悪感情を持たれようがそう言うべきだった……か。……よし、頭も冷えた。戻ろう。

「……悪い。頭が冷えた。確認として質問がしたい。設定自体の棄却を何故し無かった?それを棄却しないでも大丈夫だと思えた何かがあるのじゃ無いか?」

「……それが無かったら弱体化が酷いじゃ無い」

「……その論法を出すなら、要はそのリスクを自分で受け容れたって事なのじゃ無いのか?」

「……そう言う訳じゃ……」

「……なら追加で聞くぞ。君は何故出て来た?代わりの奴が出て来ても良いはずだぞ?それこそ此方を殺しに掛かるような奴が出ても良かったはず。なはずなのに、その力を受け容れた。恐らく先に上げた問題点の折衷案を君は持っているのじゃ無いか?」

「……不感症がそれでは駄目かしら?」

「違うね。前提からして、恨み節を言う必要性自体が無いと言っている。だって完全に同意の上のはずで、舌の根の乾かぬうちにその同意内容に文句を君は言っている。つまりツン……」

「皆まで言わないでよ」

「ああ、うん。解った。なら良いや」

「……説明は必要よね。なら、こうしましょうか」

そうすると彼女は顔と腕を抉り取った。

「ちょっ、おい」

彼女は顔から抉り取った物を腕に、腕から抉り取った物を顔に宛てがい、元通りに成った。

「……ああ、つまり水は体のどの部位にでも変えられる。……それなら、他の奴に干渉されそうな水は例えば一本の髪の毛みたいな触られた所で問題無い物扱いにすれば良いってか?」

「正解ね。尤も、自分の定義は着る服にも及ぶから、他の奴にそれをどうされようが、私のエネルギーから創った洋服に対してあれこれやっているだけに過ぎないわ」

「……ふむ。大体は把握した。……だが匂いフェチとか、呪いの藁人形的には不味いのでは?」

「……それは、例えるなら、名前的な意味では無く世界が神なら、その世界の神は呪いや穢れ等を膨大な量、常に受けている事に成るわよ?」

「流石にそれは対策しているだろ?」

「その対策を私もしているだけ」

「……ふむ。まあ、大筋は解った」

「思うのだけど、コンティニューとか、やり直しとかの力が有った方が良くないかしら?」

「……そう言う力は動かせない時間と言うのも能力の範疇外に存在する……はず。もし一定以上の過去干渉が技術として可能なら、決まり切った歴史など基本的には存在し無いぞ。赤の他人に介入される訳が無いだろって?……なら歴史上の偉人とか、歴史上に残る一大事目当てに介入してくる奴が一切居ないなら良いけどね……創作での定番ネタの一つだろ?それは」

「……なら、歴史の教育するのを止めた方が良いのじゃ無いかしら?」

「……いや、まあ、無理だろう。知識量的に馬鹿に成るのを推奨する教育方針が通るのは、独裁制の国だけだろうし」

「それはともかく、私はもう聞きましたが、名前まだ聞いていませんよね?」

「……あ、インパクトが大きすぎて忘れていた。名前はなんて言う?」

「……そうね。私は、海鳴流路うみなりるろよ。宜しく」

「……そうか。甲原健樹だ。宜しく」

「……亀なのか、木なのか……」

「まあ、そちらの方針は解っているのだから、流そうじゃ無いか。今更そんなので怒らんとも」

「そう。なら一つ教えてあげる。手を出して」

「……おう。何をするつもり、ってうぉっ」

「……まあ、あれよね。水を小さくしても扱える関係上、毛穴とかから、感覚神経に直接刺激を与えたわ。有り体に言えば、貴方の感覚神経を直接舐めたの。解った?」

「とんでもねぇな……ああ、今の奴で思い付いた。舌を何個も創れる。……それがまさか舌だけって事は無いよね?脳を何個も創ればヤバイ事に成るのじゃ無いか?」

「……解ったわ。やってみましょう。……よし、大丈夫ね」

「とんでもねぇな」

其所に市内放送が響き渡る。……軍隊蟻が無尽蔵に溢れ始めた……だと。それで退避を推奨している様だ。……退避としては車の中に逃げるだけでも十分かも知れないけれど、一先ずは範囲外まで逃げよう。……こんな事なら火炎放射器とかの道具を創る系の奴を召喚すれば良かったかも知れないが、そんな事を言っている余裕なんて無い。

「……隠蔽工作なんて無理な事をしでかしやがって……。一先ずは逃げよう。憑依を頼む」

「私は迎撃を推奨するわ。意図的に制御されているなら、辺り一面食い尽くされるわよ?要は家無しの状態に成りたい?」

「先ずは消防局だ。水を他から引いてきて、君を援護する。放水器の噴射の振りをしながらそれで攻撃してくれ。後、消火栓の位置のナビゲートも頼む。水の位置が解れば行けるだろ?」

 同意を受け、憑依をして貰い、消防局に向けて走り出したのだった。さて、状況を整理だ。軍隊蟻の大量生成をやる理由は恐らく単純。普通無理な事をやることで、召喚システムを皆に使わせる理由にする事。つまり、捕まろうが何だろうが普通は無理な一定以上の結果さえ出せればそれで良い。実際彼等彼女等に対しては、まだ法整備などされていない。つまり、一定以上の結果を出して、それに対策を練らせて、法整備を一気に進ませるのは十分な利点と成る。つまり、犯罪行為では有るが、これには列記とした正義が有る。意思がどうあれ、結果としては、これは一種の問題提起として機能する。それにまだ現時点ではまだシステムは検証段階なのだから、召喚者を罪に問おうとしても難しい。俺側は消防局で消防するための放水器でも借りて、海鳴の力は放水器で水を飛ばしただけだと言い張るつもりで居る。さて、やってやろうか。誰も居なくなった消防局から放水器を引っ張り出し、水を出せるか確認し、水の放射を始める。……本物の軍隊蟻がどうかは知らないが、一先ずはあのニュース的には召喚される軍隊蟻は水に弱いはずだ。だから、辺り一面に水を大量に出来る限りばらまいていく。……流石に洪水レベルにやるのは無理でも、これだけやれば行動阻害にくらいには成るだろう。軍隊蟻の所に行こうか。放水器でも工夫すればウォーターカッターくらいならやれるのだから、威力としては十分なはずだ。……一先ずは頑張って行こう。

 しばらくの間、軍隊蟻を駆除し続ける。……そして恐らく三十分程経った頃、放送が響く。……要約すると昔に大規模農家等がやっていた様な大規模な殺虫効果の有る農薬か何かを辺り一面に散布するようだ。……上空から散布をする関係上、風に流されると、人が居るところに落ちてしまう可能性が有り、身体被害が大きい為、本当に周りに何も無い様な大規模農家でも無いとアレな手法なのだが……。一先ずは退避しよう。巻き込まれては堪らん。……仮に人体には無害な奴を使っているとしても、蟻に取っては毒な物なはずで、それを自分から大量に浴びようとは思えないからね……。暫くの間走り続ける。……其所にヘリ来て、ヘリから人が降りてくる。あ、やばい。能力使わないで逃げるべきだったか……。

「駆除協力自体は感謝するが、……今の君の立場を解っているか?」

「必要性に迫られてですので」

「消防局への火事場泥棒、一帯の市民家屋への無許可大量放水。……火事場泥棒は許そう。対抗手段的には明らかに必要だった。それは良いとして、放水の方は説明して貰えるか?」

「軍隊蟻に襲われていたニュースがさっき有って、それには川の中に潜水したことで軍隊蟻を窒息死させた。と有りまして、なら水をまいておけば遅延用の障壁が出来る様な気がしまして」

「……ふむ。場合に依っては濡らしたら駄目なタイプの奴も濡らして居るだろうから、君には損害賠償請求がそれなりの額が来る様に出来る訳だが……受け答えとしては悪くない。我々にスカウトされてみる気は無いか?そしたらそうなるのは此方で負担させて貰おう」

「……選択肢は無い様ですね」

「決まりだな。宜しく頼むよ。新人君。まあ、これ以上ゆっくり話している時間は無いようだよ?見たまえ、彼方を」

言われ、後ろを振り返る。其所には七階建て程のビルにも引けを取らないくらいのサイズをした軍隊蟻が現れていた。

「……君は能力の事を把握はある程度把握はしている様だから端的に話すと、あの軍隊蟻は自然発生的物では無い。故に放送を聞いて対策を取った様だ」

「だからってあんな巨大なでかさに成れる理由なんて……」

「蠱毒と言うのを知っているか?知らないなら、ゲームで例えると、大量に居るユニットを味方同士で戦わせ、結果、最後の一体に全員倒させて、そいつらの経験値を一体に集中させ、集中強化を行ったって所だろう。……質より量の大量生成召喚なのに、質を提示する事も可能とかふざけているよな。本当に」

「……あいつをどうします?」

「蟻と言うのは体重の数倍の重さの物を持ち上げる力が有る。……今のサイズまで行くと筋力的には大抵の通常金属を壊せるかもしれんな?元は只の蟻が、な」

「……どうするのですか、それは」

「倒せないとは言っていない。……まあ、始末書が大変だが、軍隊蟻とは言え、所詮は蟻だ。ミサイルでもぶち込めば良いさ」

 ……ミサイルが巨大な軍隊蟻へと連続で飛んでいく。……蟻にミサイルを撃ち込む。……絵図を考慮せず、文字列だけで考えると過剰攻撃にも程が有る。……だが、五十発程ミサイルが直撃した所で蟻は唐突に消えた。……結果、一部のミサイルが地面へぶつか、……らないで上空に戻っていった。……ホーミングでは無くちゃんとした速度を出したまま、コントロール可能なミサイルですか。そうですか。

「ミサイル約五十発で倒れたのを弱いと見るか強いと見るか。蠱毒前よりは超強いと言えるが」

「そうですね。軍隊蟻とは言え只の一匹なのですから。でも、コスパが悪い様にも見えますが」

「要はアレの目的は殺虫剤を受けても大丈夫な個体を創ろう、だ。全部軍隊蟻を注ぎ込まなきゃ行けなかったのでは無く、注ぎ込まなきゃ注ぎ込まなかった他の奴らは無意味に死ぬだけだ」

「……それだとコスパ関連の評価が出来る物では無いですね……」

「……まあ此処で地下に逃げたら今後同じ手を取られる度に撤退しなきゃ成らないし、まともに受けるのは仕方ないにしても、素材剥ぎ取れたらかなり良さそうなのが取れそうだったから、全部消えたのは残念だったのだが……」

「今回の奴が単独犯行か、集団的犯行かが重要だと思います。仮に集団的犯行なら、犯罪者側に既に召喚システムを利用出来るテクノロジーが共有されている恐れが有ります。召喚システムを公式に開示し無いと、犯罪者側だけが召喚システムを使える状況に成りかねませんよ?」

「それは物価破壊、市場経済破綻等を起こすが、命あっての物種か。上に掛け合ってみよう」

『その必要は無いな』

……通信機器からいきなり声がした。

「聞いていたのですか?」

『召喚システムを警察や軍等が使える様にはすべきだが、全体に開示するのは仮に個人の犯行ならテクノロジーのレクチャーの手助けをする形に成る。犯罪歴無しの者にのみ開示する形を取りたいが、直接自分では手を下さないタイプの犯罪者が居る場合、そいつから拡散されてしまう。そう言うのは記録上では犯罪経歴が無くてもおかしくないから、前科持ちへのレクチャーは駄目だとしてやるにしても、大規模な犯罪組織には普通に伝わってしまうだろう』

「……では契約系の奴と嘘が解る系の奴を創りましょう。そして希望者に一人一人面接でもさせれば良いはずです」

『他と話し合っておこう。所で、聞いた限り、君は迂闊だな。召喚システムでああ言う事が出来る事に対しては驚いて居ない。つまり、何かしらの一定以上の奴の召喚に成功しているね?』

「……。そうですね。そうなります。それを見せたくは無いですけど」

『いやいや、これ以上の要求はやらないさ。只、君も召喚システムを一定以上の奴を召喚出来るって事が解っただけで十分だ。それなりの待遇を約束しよう』

「給料貰えますよね?それで損害賠償請求の肩代わり分を払ったら抜けさせて貰いますが」

『……ふむ。では返済額は一千万で良い。それ以上大きくともそれ以上はチャラにしよう』

「……それを決めるのは、損害賠償請求量が解ってからでも良いのでは?」

『例えば放水した対象の中に高級品が含まれていたら、この額を超える可能性も有るが、それでも額を見てからにするかい?その場合一千万と言う上限は無い物とさせて貰うが』

「……ぐぬぬ……」

『先輩。騙されないでください。大量放水行為自体は咎められる事でも、雨に濡れて困る様な物を外に出しっぱなしにしますか?ましてや一定以上の価値の物を外に放置なんて……』

「!ああ、確認しますが、此処辺りに天日干しが必要な食品を創っている所は有りませんよね?自分は見た覚えが有りませんが」

『ほう。賠償金額が一千万以上に成る訳が無い……と言う判断か?根拠を述べて貰おうか?』

「第一に放水したのは屋外に対してのみです。豪雨でも無い只の雨に濡れたから金を払えとするのが通るはずも無いでしょう?」

『放水行為自体は此方では監視カメラの記録に撮ってある。それを家屋の奴らに見せれば良い』

「……だとしても、それはちゃんとした理屈を説明すれば良いはずです」

「……それは無理なのだよ。新人君。……君が通った道程に軍隊蟻が行くルートを君が塞いで居たから、記録を見た人達からしてみれば、意味も無く、辺り一面の家屋に放水行為をしていただけにしか見えない」

「……そんな馬鹿な事が有って堪るか」

「要は予備の防護策を必要としないで対処出来てしまったが故に、予備の防護策の為にやった事の実用性を提示出来なかった形だ。それの保障を此方なら出来るぞ?」

「……だとしても被害額が一千万なんて行かないはずです。守れなかった他の場所は濡れただけ以上に酷くなっているのですから」

『くはは。その通り。弁償自体は必要にしても、感情論を抜きにすれば、君が出した被害の弁償総額は百数十万くらい有れば大丈夫な範疇で済んでいる。君には誰が憑いているのかね?』

「……さあ、どうでしょうね」

『二百万弱はそれでも頑張って返しな。……それとも今ポンと出せるか?』

「……無茶を言わないでくださいよ……」

『……まあ、良いか。一先ずの協力についてなら暫くはして貰うぞ』

「解りましたよ。二百万円分其処ら分は働かせて頂きます」

『……契約書を創るのは後にするとして、一先ずはヘリに乗りたまえ。その場所から離脱しておいた方が良いだろうし』

「従わないと不味そうなので、解りました。ですが、貴方方は何という区分所属ですか?」

「この国の軍所属に決まっているだろう。だから簡単にミサイルなんて持ち出せるのだからな」

「……言われてみればミサイルなんて物がぶち込まれた割には他の大規模な奴が来ませんしね。まあ、殺虫剤を撒く予定だったのだから来てないだけかも知れませんが」

「それはともかく、乗りたまえ新人君。自己紹介は後で聞こう。そして離脱しようか」

そしてヘリに乗り、其所を離脱したのだが、いきなりヘリの中に蟻が大量生成され始めた。

「ちょっおいふざけっ」

『落ち着いてください。これは幻覚ですが、はぁ、衝撃に備えてください。ヘリが落ちます』

「どうせ落ちるなら、街路樹とかの緩衝材に成るところに飛び降りるぞ。ドアを開け」

「その必要は無い……が、幻覚を見せて対処の為の攻撃をヘリに風穴開けるのに利用されたか……。どんなパンチ力をしているのかお前は……後、ヘッドフォンで直に声来る状態で大声は止めて欲しい。……まあ、今回はそれで幻覚が解ける原因に成ったから助かったが……一先ずはこうすれば……よし。風でエアクッションを創って、着地させた。……さて、他に連絡を取らないと……」

「……弁償はどうなるでしょうか?」

「……敵に幻覚見せられた結果なのだから、これをてめえに求めるのは違うだろうよ」

「……すみません……」

「まあ、良い。今は離脱する事を考えよう。出し惜しみしてそのまま死んでもつまらんよな?風を使って一気に離脱する。捕まっておけ」

「……弾丸みたいに成ったら置き罠されてしまうのでは?」

「あのさぁ、これをパチンコか何かと勘違いしてないか?一定空間内の把握くらい出来ないと、そもそも空間上の空気を操る上で問題だろうが」

「……まあ、それは確かに。なら行きましょうか」

「その前に、そう言えば君が召喚した奴は何処だ?周りには居ないし、憑依しているにしても、よくもまあこんな初期にそんなの許したなって。召喚される奴が必ず善とも限らないのに」

「……そう言う事はやらないと身を持って証明されてしまいましたので」

「そうかい。なら行くぞ」

そして更に移動する。……そう言えば、ウィンディーネの水の範疇は何処までなのだろう?仮に精液の内容物にも及ぶなら、幾ら性行為をやっても孕みたい時以外は孕まないで済むし……単なるレイプなら、されても孕みようも無いよな。後でやれるか聞いておこう。女を更に創るとして、レイプされるような展開に成ったとしても、孕まないで済む様に出来るし……。

『先輩……変態……と詰るつもりでしたが、真面目な話でしたね……』

『まあ、そうだな。真面目な話だ。……全く性欲が含まれていない訳では無いけど』

『実際、他の奴に孕ませさせたくないと言うなら、設定でそう成る様に書けば確実ですが?』

『それはそもそも初対面の相手にそれを強いる形に成るし、流石に無理が有る。設定改編方法が一切の例外抜きに無意味なのでも無ければ、そのアイディアが有っても基本的に無意味だし』

『創る奴の性格で、それを許容する性格にすれば良いのでは?』

『……設定が百%遵守して君らが生成されるならそれでも良かったのだけどね……設定が百%遵守されない以上無理が有る事ではあるが、自分の性格を百%自覚している奴なら異性の好みの性格部分を自分の性格そっくりそのままにしてしまえば良いってか?……それが有りだと、奴隷創るのと何が違うのかね……』

『……そうですね。後でキスしてあげますね』

『……お、おう。今の話は嫌悪感抱く所じゃ無いのか?』

『他の人ならともかく、仕様を知る前な段階なはずですから、私がそう言う悪感情で創られた訳では無いのは解っていますから』

『……何か話に齟齬が有る気がするが』。

「何を考えているかは知らないが、一先ずは着いた。避難所だ。一時的に此処で様子を見よう」

「人が結構居ますね。何処かの学校の体育館が避難所って、まるで地震でも起きた時の様です」

通信機器から声がする。

『さっきは災難だったな。あの一種の蟻地獄を見た奴らにはある程度説明し無いとアレだろうから、説明する。どちらにせよ説明するなら速い内が良いだろうしね。じゃ無いと召喚システムに付いての釘も刺せないから、一定の説明はしないとむしろ面倒な事に成る。契約系の奴と嘘を見破る奴を召喚して、擦り合わせを行っているから、それが終わり次第説明する事になる』

「ですね……ヤバイ事に成りそうではありますが、そうは言っていられませんね」

『契約をした奴のみに教えて、契約としては如何なる方法でも二次伝達不可能にするのが前提だが。じゃ無いと契約した奴だけに教える形にした意味が無いし。まあ、今は一先ず説明が始まる迄は其所で休んでいても良いぞ。……疲れている様には見えないが、一先ず休んでおけ』

「……解りました。少し休ませて貰います。ではまた後で」

そして俺は説明が終わる迄は休む事にした。休むついでに色々な事を考える。そして気付く。さっき、白菊があの話をわざとしたのは、これ以降それをしたら、その相手に嫌われる原因にするためだと。だってそれを知った以上、それをするのはそれを意図的にする形に成ってしまうから。嫌われるのを前提にしないなら、知ったらやれなくなる類いの罠情報だろ、くそ。

『……結局はハーレムでも創る気だったのですか?』

『……何とも言えんけど、もうちょっと手心と言うか、ねぇ?』

『呼ばれていますよ?』

『……そうか』

「説明会が始まるようだ。君は行かなくても良いのかね?」

「ご親切にどうもですけど、説明者側に直接後で聞けるので、今は遠慮しときます」

「ああ、説明会の主催者側の身内かい。解った。私はもう行くとしよう。それでは……」

『……説明を聞かなくて良いのですか?』

『……わざわざ知っている事を説明される説明会に行ってもしょうが無いよ……』

『そうですね。知っている事を説明する説明会に行く事で制限を課されるのは嫌ですね』

『……なんかさ、対レイプの奴でも考えねーか?』

『……攻撃力を零にする……って物はどうでしょうか?』

『それはレイプする側の奴だろう?尤も、それはレイプしている奴に快感なんて物理的には無いはず。だって性器を突っ込んでも、たぶんある程度のサイズの袋に突っ込んだのと大して違う事は無いかも。それはレイプされる側がレイプする側に影響及ぼす事が出来ないって事なのだろうし、それを使ってやるなら、それよりオナホに突っ込んだ方が気持ちいい迄有る』

更に話し合いを進める。要は創作でのテンプレ能力を導入するか否かが主軸だ。……まあ、理屈もしっかりしている有名所の奴は使う奴は多そうなので、全く同じ能力の奴を用意するより、それらのメタ方面に舵を切った方が、最終的には得をする可能性もそれなりに有り、既存の最強能力を唯々創れば良いと言うわけにも行かず、話し合いは困窮するのだった。

『どれだけ強くとも有名な作中で他にも可能な、只のゴリ押しでは無い攻略法が明確に示されている能力は使ってもしょうがないしね……有名故に知る奴多いだろうし』

『ですね。推敲していきましょう』

そして話し合い、集合体系の能力で欲しいのがありそうだと言う話に成った。

『集合体系のなら使えそうな能力で欲しいのが有るけど……そう言えば海鳴を忘れていたな。……呼びかけてみるか。水が体なら呼び出しも容易だよな。……一先ず水道の場所に行こう』

『解りました。其方とも話すのですね。では行きましょうか』

そして水道を捻り呼び出してみる。

「……ああ、今のタイミングで来るのね。別所の説明の場所に行っていたのよ。……そちらで胸糞な物が出たわ。要は遠隔で他人を犯す能力持ちね。エネルギーを一定以上持っている人はエネルギーが邪魔に成る的な意味で無理が有るらしいけど、逆に言えば、まだ召喚システムに本格的に手を出してない人は格好な餌食に成るわよね」

「……で、どうした?」

「対処した後、真偽判定系の能力持ちが定期的に召喚システムのやり方を教わった奴に対して質疑応答をやるのを義務付けする事で対処する形に成ったわ。つまり仮に完全犯罪をやろうが、定期的な質疑応答で、違法的な行為をやったか否かを聞けば良いと言う判断ね。公な理由無しに定期的な質疑応答から逃げたら基本的に捜索されると言う事じゃないかしら?」

「……うわぁ……そうなったのか……」

「それはさておき、どうして今呼んだのかしら?」

「ああ、ちょっとアイディアが聞きたくてさ」

そしてある程度話す。

「……ふむ。それなら、集合体その物を召喚するのは止めた方が良いわね。集合体の中身を詳細に一度で書くのは中身が一定以上を超えると無理が有るから、……一先ず、そうね。集合体に成れる奴の外枠だけを創るか、集合体に成れる生物の卵を創るか、が良いと思うわ。外枠だけを創る場合、後から中身の奴を創れば良いもの。……でも、集合体としての利点を活かせる程に書くと成ると結構召喚する数も膨大だし、手間も掛かるわ」

「システムの都合上、それを省略したら、弱い奴しか創れないのだからさ、仕方がないだろ?」

「まあ、そうね」

其所に女の人が来る。

「君は新人君で良いの?迂闊ね。そんな事を此処で話すなんて」

「……まあ、そうですね」

「それは良いわ、私が聞こうと本格的にしたら、何処に居ても関係ないもの」

「盗聴系の力ですかね?」

いきなり思念をぶつけられる。

『それを答えるのは此方でね?私は、そうね。一言で言えば【名は体を成す】と言う能力ね。そう言うのをやれる名前を何かに与えれば、その与えられた奴は名前に相応しい力を獲る。まあ、早い話、言葉遊びに実際にそれを成す力を与える能力よ』

『……無茶苦茶だ。そんな、馬鹿げている』

『あらあら、これは創作では有り触れているわ。創作に置いて、最強キャラの設定の奴は他にどれだけ強い奴がその作品外に居たって最強でしょう?』

『別に全ての作品を考慮しても最強格のキャラが全ての作品に置いて居ない訳じゃ無いけど』

『それについては、戦闘力に置いての最強と言うなら、碌な戦闘描写無しに最強扱いしているのは論外よ。ビックマウスをやっているだけの奴も最強格扱いして良いなら話は別だけど』

『……』

『さて、忠告を一つ。自分独自の物を操るので無ければ世界のリソースを利用すると言う事だけど、まさか他の奴と能力が一切被らないなんて幻想を持ってないわよね?』

『……つまり、世界のリソース利用系能力は限界が有ると?』

『違う、違う。只単に同じリソースを利用する競合相手が、時間経過と共に多く成っていく可能性が高いって話。他のそう言う奴らを従えさせたら自然と結果的に集合体に成ると思うわ』

『有限な共通リソースを独占したいなら、先に全部支配下に置くか、競合者を全員従えろと?』

『そう言う事。まあ、だから、貴方達について暫くは退屈し無い事に成ると思うわよ』

『……うわぁ……』

『……何故それを知っているのかしら?』

『其所の彼女とやった覚えは無かったのだけどね……貴方体を掌握されているかもね?』

『ちょっ……』

『話題を逸らさないでくれないかしら?』

『簡単な話、知識系能力を持てる名前を自分に与えただけね』

『……それが有りってふざけているな……』

『それは解ったわ。でもそれを話す理由は?』

『面白い物が解ったから、そのお礼、ね。情報料はこれでチャラにさせて貰うわよ』

『……わざわざ喋り方を被さなくても良いと思うのだけど』

『と、言われてもね?まあ、気が向いたら変えることにするわよ』

『……』

『そろそろ説明会も終わる頃ね。話を切り上げましょうか。私の力の関係上、貴方達とはまた普通に会うだろうから、その時は宜しく』

『……まだ名前を聞いてないのですが』

『……名前を付ける事で力を得る奴の名前を聞く。……なんてお前の力を教えろ、って話をしている様な物よ?まあ、二つ名的に、幾つも名前が有っても問題無いから、その中の一つは良いでしょう。十津万象とおすばんしょうよ。宜しく』

『……男的な名前ですね』

『女性名とか男性名とかを拘って付けた名前では無いからそれは仕方ないわ。でも先の話を踏まえれば意味は分かり易いと思うけど、一先ず会場の方に行きましょうか。これは切るわね』じゃあ行きましょうか。新人君」

「……はい。行きましょうか」

十津……通すや投ず、を言い換えた物なら、万象を投げるって意味の名前で合っているだろうか?やっべぇ名前だな……。そして、移動を開始するのだった。

「ああ、そうそう。氷系を相手取りたいなら、まずは液体ヘリウムを抑えなさい。あれは基本的には絶対零度でも凍らないわ」

「ヘリウムガスなら聞いたこと有りますけど……絶対零度でも凍らない奴が有るなら、何で絶対なんて冠するのですかね?」

「一応条件を揃えれば凍る事は凍るわよ。但し、液体に成る温度自体が相当低いし、純粋な氷や冷却系のみしか持ってない奴には多分やれないでしょうけど」

「冷却補助能力が能力に付随しているのは普通に有ると思いますが……」

「複合的能力を書き尽くす余裕なんて召喚システムの仕様的に有ると思う?」

「……まあ、普通なら、無いですね」

……後で調べてそれ対策のも作って置こう……。

『先輩。今の話は、只単に絶対零度にする能力……では全てを凍らせられる訳では無いと言うだけの話です』

『……一見それは出来そうだけどさ、それを行うエネルギー側はその冷却温度でも凍らない必要が有る様な気がするのだが。じゃ無いと冷却するための物を、冷気を発生させる段階で自分が凍るかもだし、遠隔でやるにも、その力側が凍るレベル温度に成っていたら、力自体がそれをやっている途中で自分を凍らせそう』

『……自分を対象外にする能力ではミラーされたら詰みますから、極力耐えられる必要が有りますが……エネルギー側その物が都合良く絶対零度でも凍らない物質なのでしょうか?』

『そればかりは検証し無いと何とも。只、それでエネルギーの物質は誰のでも凍らないって結果が出るなら、冷却能力は単純にエネルギーをぶつけるだけで対処可能な雑魚能力に成るぞ』

『使い手側の練度でエネルギー側の質も変わるのはどうでしょう?あくまで自分で生成している物に限りますが』

『……その理屈が成立する場合、皆の生成するエネルギーは一人一人違う物に成るから、エネルギーの譲渡は自分とは違うエネルギーを大量に入れる事に成るし、下手したら血液型不一致の輸血するような形に成りかねない。なら身体活性化をして、自己回復力を強制的に上げているなら良いかって……死にかけの相手に使うのは一見良いように見えるけど、あれって要は死にかけの体を無理矢理酷使して回復させている形に成るのでは無いか?要は、虫の息状態の奴に使ったら、回復する前に死ぬのでは?』

『……うわぁ……そう言えば空気の絶縁破壊が起きるのを防ぐ値の絶縁耐力は3.0MV/m……で、水は65 MV/m……から70MV/m……まあ、つまり空間上で電気を操れる最低限の電力の二十倍以上の電力が必要なのよ。能力でそれを強化しない訳でも無いけど、ヘリウムなんて今調べてみたらその値は小数点以下なのよね。未強化だと電気通しやす過ぎよ』

『ヘリウム使えないな。強化で補うにしてもさ。一先ず色々と考えておこうか……』

そして他の人と合流するのであった。そう言えば、過冷却水的な事がエネルギー側にも発生させられるなら、終了迄力側は凍らない様には出来るか。

そして契約なり何なりとの話をした。……要は未知な能力と戦う可能性が高いと言う事で、月給とは別に、危険手当ても出る様だ。まあ、命掛かっている訳だしね。……と言うか危険手当ての手取りの月額の総額は二十万と少しらしい。命が掛かっているとは言え、まだ、敵は未知数だし、そんなに強い奴とは戦わない可能性も有るので低めかも知れ無い。要はこれを使って先に肩代わりした金を返却しろと言う事だろう。それなりに高い月給からは金を出さずとも、十ヶ月も有れば返金が完了する塩梅に成っている。だが、最初の一、二ヶ月は余り金を使わない様にしよう。手に負えない様なのが跋扈し始める様なら、金を払ってさっさと退散するに限りそうだし。すると、コードネームを貰える事に成った。通常のコードネームを付ける理由だけで無く、先の説明の名前を与える事で力を与える云々の為の様だ。貰った感じの感想を言えば、名前を基盤としたパワードスーツを着けて貰った様な物だろうか?

コードネームは水霧浄土みずぎりじょうど……どうやら、水質汚染や、土壌汚染対策等の為に、浄化系統能力を渡された様だ。これが汚染地区に踏み入る予定でも有ると言う意味事なら、もしかしたら能力で毒や核を創れた奴でも居るのかも知れない。ヤバイ予感がするな。

「さて、召喚システムの能力の開発付与がどのレベルまで可能かまだ解らない以上、理論上能力で不可能と言える範囲も解らないし、例外など幾らでも創れるかも知れない訳だから、能力に置いて断言出来る事は自ずと限定的に成るのよね。例外を後出しで後から創られて、それは違うぞとさも最初から有った様に言われるのを許容するなら話は別だけれど」

「……要は後出しの屁理屈を普通に用意出来る世界……ですか。……面倒過ぎますね……質問なのですが、浄化能力が入り用に成る事でも有るのですか?」

「例えば兵站に使えば兵站の安全保障が可能に成る能力が要らないとでも?」

「……それなら発酵食品とか菌を創るのに使っている奴とか菌が味に関わる奴には使ったら菌が死ぬから、不味く成りませんかね?」

「だとしても、仮に毒や汚染されていた物を食べて大丈夫にする能力と考えれば十分ですよ」

「……では毒物混入が既に考慮されているのですか?」

「土壌汚染を良質な大地に戻せるなら、環境に大きく影響するような兵器も通常兵器と同じ様に運用する事が可能よ。形式は違うとしても、浄化能力が人数居るのは悪い事では無いわね」

「……核とか水爆とか毒ガス弾とか、要は環境破壊兵器撃つつもりですか?」

「そう言うレベルの物を持ち出さないと論外な奴が出ないとも限らないもの」

「……一般兵器無効化能力が存在する可能性が無いとは言えないでしょうが……」

「そもそも前提からして、召喚システムで召喚される人達は私達側のエネルギーを前提にしています。なら、私達を殺せる兵器もまたその者達に届きうるはずです。前提と成るエネルギー側を壊せば良いのですよ」

「……召喚システムがもしガチャだって言うなら、エネルギー側が通貨の役割だったらそんなの通用し無いはずです」

「それでも結局は基本的に同じ物理法則上に成立している存在でしか無いわ」

「……それはそうですが……」

『先輩、とりあえずこの人達は特化型能力を甘く見ているのは解ります。要は通常兵器で発生させられるエネルギー全てに対して一定以上耐性を持つだけで実現可能なのですけどね』

『……オイィ……駄目な奴、それ駄目な奴だ。でもそれだと自分の体の新陳代謝とかどうする?代謝機能自体をその耐性が阻害し無いか?』

『全く別原理の新陳代謝機能が有れば十分可能ですが、生存上必要とする物も変えなければ、付け込む隙は有ります。ですがそれを変えた場合、要は生存に必要の無い物に満ちた場所に、わざわざ侵略しに行く形に成るので、リターンが低くてやる価値は無いかと思います』

「……人手が欲しいだけなら召喚システムで召喚した奴に召喚させるのはどうでしょうか?」

「ああ、エネルギー量お化けを創って、そいつに創らせようって?それは止めた方が良いと思うわ。それは自分で召喚した訳では無いのだから、機械的な大量生産は、代理召喚する奴に依ってテキストに変更が加えられる恐れが有るわ。……つまり、召喚をやらせたら召喚システムを使って大量に代理で創った奴の私兵が大量に産まれましたって事に成りかねないわね」

「……まあ、それは確かに。では……」

そして暫くの間更に話し合いを続け、様とした所で連絡が入り、話し合いが中断する。帰ろうとしたら、別の場所でも何かしら起きているので、避難所で寝泊まりした方が無難だと言われた為、そうすることにした。……でも色々と片付けないと行けない事も有るので、寝る前に済ましてしまおう。そして更に行動を開始したのだった。海鳴の水関連の話を詰めて行こう。

『おーい。今大丈夫か?』

『……何かしら?今忙しいのだけど』

『……つまりはもうバトル起きているの?』

『そうね。知らない内に原初精霊オリジンスピリットとかに成っていたわ。多分、私がまだ他に水の精霊創っていた奴が居ない時に産まれて、その後に“私の体の一部から他の奴が産まれて”、結果、始祖扱いに私が成った、と言う事じゃないかしら?』

『……ああそうか。あの定義で創り、即座に何も問題が起きなかった時点で他に競合の居ない、一番の最初だったからか。で、後から創られる奴らは自分の体から分化したいわゆる子供と定義出来て、結果、原初精霊なんて呼ばれる様に成った。あれ?これ思っていたよりヌルゲーか?』

『……先の説明が間違いって訳では無いわね。恐らく、私が只の水の精霊だと思っての説明じゃ無いかしら?その場合はあの説明で合っていたと思うわよ』

『……ああ、そう言う事ね。なら、他の種類の精霊も無理を通して創って置くべきだったか』

『……そればかりは結果論だから仕方ないわね。一番の最初だったのはあくまで偶然。後続が大量参入してきた今それをやっても、今の私の立場は獲られないかも知れないわ。……まあ、最古参の精霊的な立場を得る事は今なら十分まだ可能な範疇だけれど』

『……なら、他の奴が創って無さそうで、尚且つ強そうな奴を、今無理を通してでも創ろう』

『……反対はしないけど、考えるのは手短にね。競合相手はどんどん増えるのだから』

『……解った。なら、概念系を行ってみよう。万物は流転すると言う考え方が有ったな……。対現象や対物に対して別の物に強制変換して潰す能力。よしこれで行こう。さっさとやるか』

『……なんでそんなにあっさり思い付くのかしら?』

とりあえずガチャをする前に設定を煮詰めに入る。……さて。行ってみようか。居ない所へ移動しよう。そして学校側の会議室を借りて、中に入り、鍵を掛ける。

「さて、やるぞ」

『……先輩。サポートは任せてください。……正直止めたいですが、重要なのは解るので』

そして書き始めた。書きながら全身が酷使されている様な感覚を感じる。白菊のサポートが無ければ途中で気絶し、エネルギーが足りず、設定が不成立やだいぶ劣化品に成ったかも知れないと思う程度にはヤバイ感じだ。それでも、無理矢理書いていく。書いて、書いて、書く。そして海鳴の時と同程度書いた所で書くのを止める事にする。さあ、どうなる?

まず、文字から白銀のエネルギーが空中に昇っていく。重ねて空間から鎖が顕れ、エネルギーに巻き付いていく。鎖が白銀に染まっていく。演出が違う。ゲームのガチャ的に言えば、これは期待出来そうだ。最終的に鎖は見方次第で黒とも白とも見える色に成った。まあ、流転する能力なのだし、能力的に変では無いか。そして彼女は本格的に形成されていく。異性の好みなんて決めてないから、一先ずは何とか嫌われない様にしないとだが。そして天使が顕れる。

「私は万物流転機構のリーティア=スペルベルグ。貴方が私を創ったって事で、良いのかな?」

「ああ、宜しく」

「……私ってそんなに魅力無くて、求められて無いの?」

「……グラマスな体つきしといて何を言っている?」

「……そんなのを創っているにも関わらず、性欲らしい性欲が余り無かったもの」

「無かった……訳じゃ無い。まあ、色々と事情が有って、な」

「ああ、貴方に憑依している奴に、精気を取られているの。大変だね。一先ずは名前教えてよ」

「甲原健樹だ。宜しく」

「はい。解ったよ。宜しく。しかし考えたよね。嗜好品として以外では食料調達なんて私には考えなくて良いもん。辺りのエネルギーを私に必要なエネルギーに流転させれば良いもの」

「……しかし、黒にも白にも見える、色……か」

「グレースケールって言う、ちゃんと名前の有る配色だよ。一先ず鎖と翼は仕舞って置くね。……さて、状況を教えて貰えれば助かるのだけど、良いかな?」

 そして説明を一通り行い、

「大体は解ったよ。だから、能力の実験がしたいのだけど、良いかな?」

「まあ、確かに必要か。うん。じゃあ、この紙にでも試して見てくれ」

そして彼女が触れたその紙は分解された。

「……触れた相手を消すってお前……」

「これはいわゆる風化だよ。一気に経年劣化するようにした結果、紙が粉々に成った感じかな」

「……元に戻す能力とかには意味は無くないか?」

「それをやる能力その物自体に使えば良いと思うよ?後、これだけでは通じない金属も有るけど、加工可能なレベルな物質なら、それが壊れる様に流転させれば済む話だよ」

「対象を自分の望む形に流転、つまり加工手段を無視して変換する能力か。……加工手段皆無の物質でも無ければ壊せるのは良いとして、変換スピードより速く攻撃されたらどうする?」

「……それは自動反撃だろうがなんだろうが、対応スピードを超えるスピードで攻撃する事で、相手の対応をスルーして攻撃を与えると言う手法って事で良いのだよね?それは後出しジャンケン的な能力全般に言える話で、これだけが駄目な話では無いし、常時発動してれば済む話なはずだよ。要はそれに対応するまでのタイムラグを狙う手法なのだから、最初から既に発動していれば、そんなの関係ないし」

「まあ、それも道理か……でも、デメリットが多いよな。ファンタジー世界に後から成るって」

「……それは視野が狭いよ。例えばゲームで有る様な回復アイテムが現物として存在可能に成るかも知れないし、本来だったら不治の病な病気も治る余地が生まれるかも知れないよ?」

「……医学の大幅進歩、ね。……それ自体は喜ばしいけど、……今回の話の場合は、それの前提条件のインフラ基盤を創ったのが、何処の誰とも知らない人か何かなんだよ。インフラ整備した奴に悪意が有ったなら、何かしらの罠が有る可能性も……」

「……飲めば寿命がある程度延びますが、リスクが未知数の薬が有ります。飲む?飲まない?と言う事?それで死ぬより悪い事が起きない限りは、飲んだ方が良いはずだよね?」

「まあ、それはそうなのだがね。初期に飲むのは毒味役だし。遅効性の毒も有るかもだし、死にかけの時に死ななくても大丈夫な状態にしてくれる奴なら、死にたくなきゃ飲むしか無いが」

「……利点も有るし、ロマンも有る。けど、デメリットやリスクもそれなりに有るって言いたいのは解るけど、私達って貴方に取ってそんなに無価値なの?」

「……あ、いや、そう言う意味で言ったのでは、……はぁ。……そうならそもそも創らないよ」

「ならなんでそんな事を言えるの?」

「…………此方の君等への好感度を盾に取る問い掛けをするには、時期尚早過ぎると思うが」

「……つまり好きではそもそも無いって言いたいって事かな?」

「……まだ召喚システムがどうなっていくかも解らない段階で、本格的に愛するなんてしてから、召喚システムが崩壊して、その結果君等が消えるなんて成ったら、多分軽く立ち直れない自信が有るってだけ」

「……つまり愛するのが怖いって事かな?ヘタレ?」

「……違う。あくまで自己の精神安定的な意味で……」

「……ああ、はいはい。なら、少しくらい強引に行かないと無理ってことかな。覚えておくよ」

「……」

「まあ、今は良いよ。一先ず私はどうすれば良いかな?」

「とりあえず俺に憑依か何か出来るか?そう言うのが無いなら対応を考えないと、だからな」

「……流石に今の段階でだと三人も憑依するキャパは無いはずじゃないかな?」

「……ならしょうが無いか。さて、なら検証に移ろうか」

「そう言えば相手は単体で、自分側だけが援軍が有りの条件って、その援軍がまともに機能している時点でそれが無ければ負けていたって事で、それなりに弱い立場の奴らの理屈だと思う」

「……過剰戦力ぶつけて勝利はアレだって?」

「実際の勝負なら別の話だけど、議論としては、一対一兆でまともな勝負に成っていて、それで一兆側が勝てても、一兆側の一人一人がその相手の一人より強いとか言い出したら只の虎の威を借りる狐だと思うけど」

「それを言い出したら創作作品に置いては公平な条件以外は無価値だし、価値があるとするにも、それが通常有り得ないレベルに迄行くと只のえこひいきだが」

「はは。本当アレだよね。一先ず私は憑依も出来るけど、そのまま出ておくね」

そして話を通しに行く事にする。

「…………そう言えば、外国はどんな感じなのだろうか?」

「……それは海鳴さんに聞けば解る話だよ。後で聞けば良いはず。それより、さっきの話を自衛隊か軍か、辺りの人にでも伝えに行こうよ」

「そうですね。後、そう言えば作品でたまにこういうのが有りますよね。能力が無ければヤバかったって類いの発言。ゲームなら数値化出来るから別ですけど」

「……いや、ゲームで例えるなら、回復系能力使用前提の難易度のバトルが有った時に、回復能力有って良かった。的な客観的に明らかに解る物も無くは無いよ?威力を語る奴に関しては、同じ様な攻撃を防御系能力無しで受けた事あんのかよ?とか思わなくは無いが」

「でも、全ての水は私で、私は全ての水……だっけ?それって何処までの事を言うのだろう?」

『……たぶん、の話よ?あくまでたぶんの話だけど、純粋な魔法なだけの水は適用外かも知れないわ。それらは水と言うより、エネルギーが水の形なだけだから、結果として水の範疇からは適用外って事なのじゃ無いかしら?』

『……まあ、これの場合、それは水では無く、水に見えるだけの別物だから、適用外って話なのだろうが……能力の定義域の擦り合わせはしといた方が良さそうだな』

……そして移動中に能力の定義域の擦り合わせを行い、其所で気付く。

『……仕様次第な話だけど、名前を与えたら強く成るって、一定以上強く成ったからネームドに成る、いわゆる称号的な物……が、多い気がする』

『ゲームで考えれば解ると思うけど、扱いが一纏めのモブから、ちゃんとしたキャラと名前的な意味で同じに成るからな?村人Aとか村人Bとかじゃ無いけど』

『……それが何だって言う?』

『キャラクター枠が別枠に成るって言えば解るかな?種族なら、何千何万の奴が一纏めで創られる様な奴の枠が、一人に別に割り振られるって事だよ』

『……ええっと。つまり何千何万と出る使い回しモブ=そのネームドキャラ一体って事か?』

『システム上的な話だとそうなるって話なのじゃ無いかな。でも、実際、微妙な所だね。魔法製の水……と言うか、魔法が水の見た目の形を取っているのは範囲外でも、実際の水なら範囲内……か。……環境に依存し無い水魔法には意味無いと言う事に成ると言う事じゃないかな?』

『……いやいや、現物として水に成っていたら制御可能圏内なのだし、エネルギーをそのままぶつけるの自体は範囲外なのは不思議では無いだろう。そりゃあそれは水じゃ無いわなって』

『でも、対処出来ると思っていたら、水魔法のそれでまともに受けるなんて展開は不味いわね』

『それが自分かどうかだけで十分判別付くだろうと思うのだが』

『……まあ、それもそうだね。でも、これが駄目なら精霊系の属性に対応した魔法使った所で、吸収もなにも無く、普通にダメージが入る仕様がデフォに成らないかな?』

『……駄目過ぎるな。うーん水で有ればそれに何が混ざっていても効果範囲内だけど、水の形なだけの只のエネルギーの塊は効果範囲外……ねぇ。まあそれは水じゃ無いけど』

『これを他が知ったら水魔法使って来そうね。攻撃の理屈上は力の構築を水に見える様に無駄にしただけの只単にエネルギーをぶつけているだけなのだけれど。後、他の奴の水の制御は此方に関係無い時のなら基本的に邪魔しないわよ。邪魔したら討伐対象に成らされるもの』

そして目的地に着く。

「すみません。鍵を返しに来たのですが、何処に置いておけば良いでしょうか?」

「其処に置いとけば良いよ。……さて、君ら明らかに強そうだな」

「いきなり何ですか?見ると大使館勤めの様ですが。それなら外国側の情報も欲しいのですが」

「恐らくと前置きする話なのやけど、元凶の召喚システムを創った奴は創った時にはこの国付近の国の何処かにでも居たんや無いかな?星の半分くらいは召喚システムの範囲外らしいし」

「……召喚された奴がその範囲外に出たらどうなるのですか?」

「召喚システムで召喚された、一定以上弱い奴は消滅したそうやで。恐らく、召喚された奴を使って反逆してこようとも、召喚された奴等はシステムを奪えない限りは戦力としては数に数えられないって訳や」

「……チッ。そう言う事ですか。ですが、要は場外負けがシステム上存在する事に成りますが、大丈夫なのですかね?」

「他の世界の奴を考慮し無いなら、強制的に移動させる能力系は強くないか?と成るのは解るで?でも、例えば能力が召喚システムの外でも機能するなら、そもそも召喚された奴等は消えないで済むはずやで」

「……つまり圏外に転移させる能力はそもそも転移先に召喚システム圏外を選択が出来ないので不可能……と。でも要は突き飛ばす系能力は問題無いと思いますが……」

「そもそもの話としてやけど、圏内と圏外の境目付近で戦う必要性はそんなに無いで。一定以上の距離相手を突き飛ばす事だけに特化した能力なら、ワンチャンかも知れへんけど、まさかそれに対して無対策の奴しか居ない訳じゃないやろうしね」

「……ああ、つまり棒で相手を押し出す感じで、相手をちゃんと押せているなら、その棒が圏外に成るのは押された奴が圏外に成ってからですしね」

「……まあ、対策考えとかんと不味い事ではあるな」

「……でも、なら、一国だけにしても良かった気もしますが」

「……能力が有る環境が嫌なら星の残り半分に移住しろと言う事なんや無いか?その場合召喚システムの仕様の能力の仕様はクソで有れば有るだけ好都合に成るし、大勢が退去させられれば、それはそれで実質星の半分の占領に成功したような物やしね」

 召喚システムに依って構築されたインフラ関連に依存させてから取り上げる。以外にもそんな手が有るのか……。召喚システム基盤を奪って自分の物に……展開はもし仮に出来たとして、今の所有者に向けられるヘイトが一緒に着いてくる……って事か?アカン奴だ、これ……。

「さて話したぞ?本題を聞きたいのやが?結構な奴が憑依かなにかしているようやけど?」

「……なんで解ったのですか?」

「魔力等のエネルギー感知能力が高いだけやで。エネルギー感知能力が一定以上有れば停電時にも魔力等を籠めた文字は読めるから、習得しとくとお得やで」

「……一見良さそうに見えますが、隠密時にエネルギーを使うのはアレですし、本とか書く上で常使いするには諸刃の剣過ぎますね。一冊丸ごとにずっと文字にエネルギーを宿らせて置くって事で、宿らせるエネルギーは結構な量に成りそうですし、エネルギーに集まる奴に対しての誘蛾灯見たいな事に成りかねないのでは?」

「それはそうかも知れないけど、魔力等の籠もった本格的な魔導書程では無い。ああ、対策使わない場合は、やけど」

「……ふむ。ゲームなら密封性が絶対なアイテムストレージ能力で解決ですけど、まあ現実的な話をすれば、実際に能力のそれが有るなら、アイテムストレージを力で常時展開している様な物で、エネルギー探知系や索敵系能力持ちが居たら余裕で見付かる様な気がしますね」

「能力としてのアイテムストレージの利点は様々な作品で語られているのだから、今更語るべくもないのは解るけど、……要は常時能力を展開して無いと大量運搬には使えないのに、能力を常時展開とか確かに隠密もクソも無い」

「……まあ、仕様次第な話では有りますけど、要はアイテムストレージの収納スペースを創って有る追加された空間その物自体が、本来の空間からすれば異物にも程が有りますよね。それすら隠せば良いとか思うかも知れませんが、能力で展開する空間その物自体まで含めた隠蔽効果まで説明に含まれたアイテムストレージ能力なんて、現時点では見覚えは無いですね。まあ、全部を自分が見てないだけで有るかも知れませんが」

「まあ良いやな。一先ず作業に戻りなさいな。ほな」

「……はい。そうさせて貰います」

システムの能力の可能圏内はシステムの範疇のみ。それはつまり、仮に時間遡行をやれたとしても、システムが実装された日のその時間以降にしか戻れないと言う事で、それは逆に言えば“早い者勝ちの利権を後の奴が先に手に入れた事にする事が可能”って事なのでは?

『先輩。恐らくそれは不可能だと思いますよ。それを可能にした場合、召喚システムを創った奴を捕まえたいなら、召喚システムが創られてすぐのタイミングに戻って捜査すれば、神等の超存在でも無ければ何かしらは掴めて仕舞うはずですから、捕まる可能性を増やすだけに成ります。ですから、恐らくは時間遡行を可能にするにしても、限界が有ると思います』

『……怪獣が初期に顕れたのは、時間遡行者の仕業だったとか有りはしねーよな?』

『召喚システムを創った側の、可能性の開示としての物だと言う可能性も有りますよ。只、デモンストレーションとしては結局はやられている訳ですからね……』

『……単なる紙切れ一枚が、核レベルの兵器を使って初めて何とか勝てるレベルの怪獣に成った。……って考えると、運用上のコスパが異常に高い訳だが』

『言われてみれば確かにそうですね。私はその怪獣を見てないから何とも言えないですけど』

『そう言えば、探知能力が有るって言ったのに深く聞いてこなかったな。なんか下手打ったか?』

『……仮に彼が鑑定系能力を持っていたとしても、鑑定結果を判断する判断基準の資料がまだ揃ってない段階なのでは無いですか?』

『ならなんでなんだ?シンプルに知識チート持っているなら、そもそも此方の話を聞く必要性自体が無いはずだから、そう言うのは無いはずだが……』

「……あ、なら、多分測定機器でもあの部屋に有って、スキャンされたのかも」

「うぉいヤバイ奴だ。それはヤバイ奴だよ。人体スキャン機器?しかも相手に気付かれずに?俺はともかくリーティアの方は不味いだろ、体中をスキャン勝手にされるって言うのは流石に」

「例えば見る事や聞く事で、それを元に表面上では解らない所までの情報を得るタイプの奴に、まともに会話を持ち掛けた時点で負けじゃ無いかな?」

「……ぐぬぬ。自分の情報収集能力を強化する能力とか有りかよ……」

「まあ、仕方ない事じゃないかな?うわ、窓の外を見て。でかい人が何人か召喚されているよ」

「……巨人系の奴を召喚しちゃったかぁ……単純計算でも、仮に通常の人間の十倍の大きさなら維持する為に必要な食料十倍に成りそうだから、何人も召喚するとか食料調達コスト的な意味で洒落に成んないのだけど?因みに細かい計算を無視した、適当なイメージでの話だから違うとか言われても困るし、真に受けない様に」

「体の構造全てそのまま十倍に成っていたらそうなるのは不思議でも無いのじゃ無いかな?」

「ミサイルで倒したあれは明らかに通常の手段のそれでは無かったから、体中の構造も変わっていたのだろうけど……」

「巨人も気になるけど、今は速く確認に行こうよ」

そして確認を済ます。……すると呆れられた。

「どうやったかは知らんけど、他の奴等と比べ、あんたの高品質過ぎないかね?」

「さて、どうしてでしょうね」

「……一人だけそうなら、ガチャで上位設定されているレア度の奴を偶然引いたのだろう……で、済ませられるのだが、二人も居るものでな」

「……失礼ですね。話は打ち切らせて貰います」

部屋から出ようとする所を呼び止められる。

「すまん、すまん。三人と言うべきやったな。謝罪しよう」

「……外に物理的な意味での巨人が召喚されたみたいですよ。見に行かなくて良いのですか?」

「そうか。なら一緒に行くか誘っているって解釈して良いんか?」

「……一先ずはどれだけ此方を知ったか聞き出さなくては成らないので」

「ああ、はいはい。そう言うね。気張らず気楽にして良いので。大した事は解っとらんから」

「他に言わないでくださいよ?」

「まあ、そうしておいた方が良さそうや。解ったわ。なら、見に行こうか」

そして巨人を見に行きに外に出たのだった。外に出ると巨人が何人か召喚されている。……食料コストを考えると洒落に成らない感じに引き笑いをしていたら、有ることに気付いた。……場外負け=死亡なら、範囲内全てを埋め尽くす破壊不可能な巨大な奴を創ったら……対策能力無ければ結構な奴が場外死亡成っちゃわないか?……いや、それをするのに必要なエネルギーが今の段階では確保不可能なはず。……だから聞こう。

「さっきの件って少しでも出たらですか?それとも全部出なければセーフなのですか?」

『全部出なければセーフじゃ無いと私は既にアウトなはずよね?』

『……う』

「全部出なければセーフやで」

「ありがとうございます。ちょっと対策し無きゃ成らない事が出来たので、此処で失礼します」

「そうかい。最後に此方は名乗っておこう。倉識剣淵くらしきけんぶだ。また会えそうやし。君の召喚した奴的に」

「……そうなれば良いですね。甲原健樹です。それでは」

そして、とりあえず他と合流する事にしたのだった。そして先の事を話してみる。

「それについてなら今は心配し無くて良いわね。それを実際にやる場合、星半分以上を更地にして、残った半分にも瓦礫を大量に流し込む事に成るもの。侵略行為を本格的にされて、大半が敵の構築物しか無い状態に成りましたって成ったなら、話は別だけど、念の為言っておくけど、今回の召喚システム関連の場合、仮に秘密裏に召喚システムを個人で奪った場合、それを隠す限りは他からは只の主犯扱いされるから、気を付ける事ね」

「……ですね。やる場合は秘密裏にやってはむしろ状況悪化しちゃいますね」

後続の召喚システムの所有者を倒そうとする奴にしてみれば、主犯が公に姿を見せていない以上は、後続からはそう見えるし、奪った場合は公表し無いと洒落に成らねぇよな。……しかし個人でそれを有りにした場合は、主犯が誰かをスケープゴートにして、自分は主犯じゃ有りません……とか主張しているとか路線変更されるのを有りにする事に成る。それを無しにするなら、……召喚システムその物自体を個人で奪うのはその後が怖いな……。

 一先ず色々と済まして行こうか。そして、ある程度の事を済まして、今日の所は寝る事にしたのだった。

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