第13話 ひ弱な普通の女の子の事。
ごろごろごろごろ、わたくし佐々木忍は家でごろごろと怠惰な生活をするのが好きだ。
でも、運動神経はかなり良いらしい。
スーパー助っ人として部活や体育祭で活躍できる。
親に感謝です。
勉強は苦手です。
でも、ママに苦手は克服しなさいと猛勉強させられたので成績は悪くない。
おばちゃんは特に厳しかった。
得意な科目は語学と文学、ノリと勢いで何となく通じる。
AIの翻訳機能もあるので、ほぼ完ぺきです。
苦手なのは数学と物理、何を言っているのかちんぷんかんぷんだ。
水より重い鉄がどうして水に浮くの?
全然、判んない。
浮くという現象が判る。
でも、どうして浮いているかが理解できない。
体力はない。
怠惰な生活を満喫しながら、趣味やコンサートを巡る生活をすれば、体力作りなどしている暇はない。
そう、ひ弱な普通の女の子なの。
“現在のボディーは、パワーが10馬力、脚力は馬並の速度を出す事ができ、365日24時間稼働しても壊れない耐久性を持っています”
ひ弱な普通の女の子なの!
“YES、マイ、ロード。佐々木忍は人類の規格外生命体として、ひ弱な女性と認識しました”
よろしい!
人類の規格外生命体ってなんだ?
◇◇◇
前田利家は我が部屋に侵入しようとすると沖島近海に飛ばされるのを学んだらしく、慶次に相談したらしい。
「いいか、又左。お主に槍の才はない」
「慶次、何を言うか!」
「まぁ、聞け! 実際にお主は俺に一度も勝てずにいる。宗厳のおっさんには相手にされていないだろう。藤八はどうだ、完勝できているか?」
藤八や弥三郎にさえ、10回に1回は負けている。
背丈は変わらない慶次様でも年長者というアドバンテージがあり、いつか追いついてやると言う生来のポジティブさで乗り切っている。
しかし、背丈も小さく、小柄な年下の藤八や弥三郎に負けるのは相当に堪えていた。
「だが、お主の事を見捨てていないぞ。お主は体がデカい。その体で三間半(6.4m)の長槍を小太刀のように振り回せるようになれば、強くなれるぞ」
「誠か!」
「もっと体力と腕力を付けろ。泳いで鍛えるのもいい」
「なるほど、それで海に飛ばされておったのか。私はてっきり忍様に嫌われているのかと思って心配したぞ」
利家は都合のいいように理解した。
「又左、高浜の戦いを覚えておるか」
「もちろんだ。長竹で敵を一撃で吹っ飛ばした。あれを忘れてなるものか」
「忍のように一撃で敵を吹き飛ばせ! 長槍を振り回して殴打しろ!」
「ただ、吹き飛ばせと」
「そうだ。忍のように敵を吹き飛ばせ! 殴打で相手に有無を言わせるな!」
「某にそれが」
「お主以外の誰ができる。あぁ、忍はできたな」
「おぉぉぉぉ、忍様。忍様のような、忍様のような、某も忍様のような『殴打の又左』と呼ばれるようになってみせますぞ」
利家は復活した。
毎日、城に通う前に沖島まで泳いでいるそうだ。
那古野城で使う薪もすべて利家が割っている。
賄い方が喜んでいるらしい。
慶次はティマーの能力でも身に付けたのか?
「忍は呼ばれもしないのにいる奴を嫌う。控えるようにしておいた方がいいぞ」
「慶次殿、感謝いたす」
「よいか、くれぐれも目に付かんようにな」
「判りました」
こうして、忠犬利家は私にいつ呼ばれてもいいように息を潜めて身を隠して、昼から晩まで私も見守っている。
忠犬?
ただのストーカーだよ!
◇◇◇
我が天敵、
出島の焼酎蔵に足しげく通って、熱田・津島衆を説得し、独断で一番に熟成が良い造り方で1ヶ月以上も早く製造を開始させた。
蔵一棟に10個の樽があり、麦・芋の四棟分を帝への御献上酒として奉納させる話を勝手にまとめた。
でも、実際に金を出すのは信秀のおっさんとか、他の城主とか、寺だったりする。
そうそう、信友とかもいたな!
よく出す気になったもんだ。
1文も使わずに、蔵四棟分の御献上酒をまとめるのは才覚なのでしょう。
うん、そこまではいいよ。
「だから、なんで私がそこまで協力しないといけないのよ!」
「そんな事、言わんといてえな! 後生や、一生の頼みや」
言継のおっさんの一生の頼みはいったい幾つあるんだろうね?
「勝手に自分で造ればいいでしょう。造り方は教えたでしょう」
「10年も待ってられへんわ」
「知らないわよ」
「信秀さんとか、信長はんの顔が潰れてしまうんやで、それでもええんか」
こいつ、信長ちゃんの名前を出したら、私が言う事を聞くと思ってやがる。
「信長はんもええって、言うてくれてるんやから。後生や」
「今度、やったら大海原の真ん中に放り投げるわよ」
「あんがとう。感謝しますわ」
結局、焼酎蔵は4つでは済まなくなった。
寄金した武将や寺社にも必要みたいなのよ。
露骨にくれとは言わないけど、期待感が半端ない。
熱田・津島衆が御献上酒として売り出す分を含めて、結局、四拾棟すべてが稼働する事になったのです。
「それで、材料のサツマイモと大麦はどうするのよ」
「大丈夫や! 出島の蔵に保管して分で賄える。後は忍はんの許可待ちや」
「あれ、緊急の備蓄食よ!」
隠し蔵まで確認しての確信犯か!
言継のおっさん、厄介な御仁です。
「できる頃に戻って来るからな!」
もう、帰って来なくていいよ。
後で知ったけど、焼酎蔵四拾棟を管理する腕のいい
熱田と津島の職人だけで、新たに四拾棟も稼働できる訳がない。
最初に疑問を持つべきだったよ。
寺と熱田と津島で合弁蔵(企業)を作って利益を分配する。
織田が倒れると、寺は大損を被る。
尾張にある八割方の寺が織田を支持してくれると言う。
ないわ!
みんな、どんだけ酒が呑みたいんだ!
◇◇◇
千代女ちゃんが百地 三太夫を先頭に
三太夫は尾張の百地を預かる丹波の筆頭弟子であり、伊賀衆の百地配下の全権委任を受けています。
三河で松平と織田で戦っている訳だが、二家に分ける事で服部家が滅ばないように伏線を張っている訳かな?
うん、『犬伏の別れ』か!
それでいいのか、藤林長門守!
えっ、長門守は渋い顔で反対したらしいけど押し切った。
こっちは藤林家の家督を争って、今川藤林と尾張藤林は絶縁中だよ。
「それで、どうかしたの?」
「この方々らも100万石が欲しいらしいのよ」
「千代女殿、我らはそんな事を言っておりません。家老方々の話を察すれば、不満などございません」
「そうです。今の役職と俸禄で十分に満足しております」
「我々はただ、甲賀や
家老方々と言うのは、千代女ちゃんに島を下げわたす話だ。
私が単に下げわたしたのでは、後々までしこりが残るので、まずはおとな衆にいる者はないかと尋ねました。
『島流しになってくれる人はいる?』
ざっくばらんな聞き方だ。
「土地の広さは100万石相当、でも、開墾できるのは10万石くらい。緑溢れる孤島でのんびりと暮らしたい人はいますか?」
おとな衆4人が唸った。
シドニーとかと違って望月島は日本の近海であり、和船でも無理をすれば、行き来ができる。
「誰もいないなら、千代女ちゃんに上げるよ」
平手のじいさんは渋い顔で「お好きにして結構です」と我知らずを通し、林のおっさんと、内藤のおっさんは嫌そうな顔で辞退した。
島流しは嫌だね!
青山のじいさんは「暫し、待って欲しい」と言って一族に声を掛けたけども、よい返事が貰えずに辞退した。
こうして、千代女ちゃんは堂々と100万石を手に入れた訳なのです。
これで織田中に知れわたっちゃったね!
妬む人が後を絶たない。
「それはどうでもいいのよ」
「「「我々は忍様のお力になりたいだけです」」」
なるほど!
「
私はそう叫ぶと、斜め後ろに控えた尾張鉢屋衆の頭領である
「ど・う、かな?」
「はぁ、伊賀衆と同じく、忍様のお役に立ちたいのですが、我ら鉢屋衆は200名のみ、しかも忍者働きが30人余りと限られます。那古野倉街の警備で手一杯というのが実情であります。残念ながら、そのように申し上げる事もできません」
でも、妻も子供も忍者の数に入れるのはセコイよ。
鉢屋衆の精鋭は30人と30家族で200人だよ。
単独で来たのは、鉢屋賀麻党の首領の
同い年の『
すごく小柄で可愛いの!
仕事は次首領に任せて、私付きにしています。
小姓として一緒に居てもいいと言っているけど、「我らは影ゆえに」と言って、智ちゃんの部下か、屋根裏、床下で待機しているのよ。
可愛い月ちゃんを埃だらけにするものか!
那古野城の屋根裏、床下は埃一つなく、土や泥で汚れないように下板を敷いて、寝板や布団も完備しちゃいました。
快適度、抜群の環境よ。
でも、忍者組に余り受けがよろしくない。
何故だ?
でも、助かった。
グアムやハワイの人材をどこで調達するか悩んでいたんだ。
捨てる神あれば、拾う神ありだよ。
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