第70話

 今宵はお風呂に入浴剤を入れてみた。シュワシュワと泡が立ち柑橘系の香りが広がる。うん、入浴剤のおかげでお肌がすべすべになった気がする。たまには長湯もよかろうと思う。一時間ほどお風呂に入っていると。


「恋菜さん、いつまで入っているの?」


 不味い、姉の愛菜である。わたしは急いで出る準備を始める。姉の愛菜を不機嫌にして良い事はない。しかし、焦ると失敗するものである。コンディショナーをシャンプーと間違えて洗っていた。わたしは諦めてお湯で流す。


「恋菜さん……わたしを怒らせたいの?」

「出るわ、もう少し待って」


 姉のさいそくに急ぎ、わたしは下着姿でお風呂から飛び出す。流石に長湯し過ぎた。自室に戻るとインナーを着る。


 ふう~、いろんな意味で間にあった。機嫌の悪い姉は、それは恐ろしいのである。わたしはドライヤーで濡れた髪を乾かすと。うん?首筋が青くなっている。わたしは夏を呼んで、大丈夫か聞く。


「これは呪いですね」


 どうやら、姉を怒らせたらしい、呪いと言う手段で攻撃してくる。実に怖い話である。姉の愛菜がお風呂から出る頃には、首筋の青いのが消えている。どいうやら、姉の機嫌が治ったらしい。


「先ほどは呪いと言いましたが、ただの湯あたりかと」


 夏がわたしに低い声で言うのであった。何故、呪いなどと言ったのはだいたい予想がつく。姉の機嫌が悪くて一番被害が大きいのは夏である。それから、わたしは長湯で乾いた喉を潤おす為に冷蔵庫の前に行く。


「あら、わたしの呪いが解けていて」


 姉の愛菜とすれ違うと意味深な言葉をかけられる。わたしが凍りつくと。


「冗談よ、この言葉で夏を時々指導しているの」


 やはり、怖い姉である。わたしは心の奥底で姉は絶対呪いが使えると感じるのであった。

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