ケンカするほど仲がいい
それからスマホを眺めながら俺たちはひとしきり笑いあった。
「あーおかしい。でもどうして急にプレゼントなんてくれたの」
「なじみにあげたくなったからだよ」
きっかけは大樹からアドバイスを受けたからだった。
だから何かプレゼントにちょうどいいものがないか見ていたんだけど、この落ち猫を見たときに俺の頭に浮かんだのは「これをあげたらなじみが喜ぶだろうな」ってことだった。
勝負とかそういうのは全部抜きにして単純にそう思ったんだ。
「そのときに思ったんだ。きっとこれが恋をしてるってことなんだろうなって」
おっと、無意識のうちに名言が出てしまった。
これもなじみへの想いがなせる技なんだろうな。
かわいさだけで人を詩人に変えるなんてやはりなじみは大天使。
なじみも俺の言葉に感動したのか、ニコニコとうなずいた。
「今日のコウはキモいね」
「えっ!? そんなことないだろ……?」
ないよな……?
「でも、うれしいよ。ありがとう。大切にするね」
「そんなに大したものじゃないけど、喜んでもらえてうれしいよ」
「それにしても、これだけアタシのことを思ってくれるなんて、アタシのこと好きすぎるんじゃないの?」
否定できない。事実だからな。
「そういうなじみだって、俺からプレゼントもらうだけでめちゃくちゃ喜んでたじゃないか。俺のこと好きすぎるだろ」
「えへへー。そっかなー。でも、好きな人からアタシのために選んでくれたプレゼントもらって、喜ばない女の子なんていないよ。だからこれは普通にうれしいだけ」
普通にうれしいのなら、それだけ俺のことが好きだという証拠になるのでは……。
なんだか矛盾してるというか、反論になっていない気もしたが、なじみの笑顔を見ていたら細かいことはどうでも良くなってきた。
かわいい彼女が、俺にだけ笑顔を見せてくれている。
こんなに幸せなことがあっていいんだろうか。
それに、うれしすぎて俺の顔までゆるみきっているという自覚がある。
なじみに見られたらなにを言われるかわからない。
隠すように顔を背けていると、やがてなじみが正面に回り込んできた。
「こんなにステキなものをもらったんだから、アタシもなにかお礼しないとね」
「そんなの気にしなくてもいいぞ。大したものじゃないし、そのためにあげたんじゃないんだから」
「いいの。アタシがお礼をしたいんだから。それで、コウはなにがほしいの? なんでも好きなものあげちゃうよ」
「なんでも?」
意地悪く聞き返すと、なじみの顔がすぐ真っ赤になった。
「な、なんでもとは言ってないでしょ!」
「いや、今なんでも好きなことしてあげるって言っただろ」
「してあげるなんていってないよ! 欲しいものをあげるって言ったの! コウのエッチ!」
「まだなにをしてほしいか言ってないんだけどなあ。いったいなじみはなにを想像してるんだろうなあ」
「……!! バカ! コウのバカ!! 大っ嫌い!!」
怒ったり恥ずかしがったりしているなじみも最高にかわいいので、ついついからかいたくなってしまう。
好きな子をついついイジメたくなる小学生男子の気持ちが今までわからなかったけど、こういうことなんだろうか。
それならわかる。
涙目でこっちを睨んでくるなじみも最高にかわいいもんな。
心の中でうんうんうなずいていたら、急になじみが俺の袖を引っ張ると、不安そうな表情で見上げてきた。
「あの……大っ嫌いっていうのは、ウソだからね……?」
「かわいすぎ。好き」
「ふえっ!?」
おっと、つい本音が漏れてしまった。
でもしかたないよな。
自分で大嫌いなんていっておきながら、本当に嫌われるのが心配になってわざわざ訂正しに来るなんて、かわいいが過ぎるだろう。
俺じゃなきゃキュン死してたね。
とはいえこれはチャンスだ。
利用しない手はない。
「大嫌いじゃないなら、なんなんだ?」
「え……それは、その……」
なじみが慌てたように口ごもる。
目尻にうっすらと涙を浮かべながら、じっと俺を見つめてきた。
「そんなの、大好きに決まってるよ……」
ぐはぁっ!
勝負のこととかそういうのが全部吹き飛んで、ただただ目の前の天使にひれ伏した。
「そういうコウはアタシのことどう思ってるの?」
「もちろん大好きに決まってるだろ」
「えへへー、ありがとう。コウってアタシのこと本当に好きだよね」
「そんなの当たり前だろ。こんなにかわいい彼女なんて他にいないんだから。まあなじみのほうが俺のこと好きだけどな」
「ほんとコウは世界一カッコいい彼氏だから大好きになるに決まってるよね。まあコウのほうがアタシのこと好きなんだけど」
「いやいや、なじみには負けるよ」
「いやいや、コウには負けるなあ」
「なじみのほうが俺のこと好きだろ!」
「コウのほうがアタシのこと好きでしょ!」
「「なにおおおおおおおおお!!!」」
気がつけばいつものように正面からにらみ合う俺たち。
やがてなじみのほうから顔を離した。
「こうなったら勝負して決めようよ」
「なにをする気なんだ」
「実は今日学校でおもしろい話を聞いたんだ。コウは『大好きだよゲーム』って知ってる?」
なじみがそんなことを言いだした。
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