世界一かわいい俺の幼馴染みが結婚しようと迫ってくるけど、俺からも結婚しようと迫っていく
ねこ鍋@ダンジョンRTA走者
第一章 告白
プロポーズさせたい幼なじみとプロポーズさせたい俺
「コウってアタシのこと好きだよね?」
となりの席に座る
かわいい顔を近づけながら、俺に向けてニヤニヤとした笑みを浮かべている。
なじみとは小学校に入る前からの幼なじみで、一緒にお風呂に入ったこともあるほどの仲なんだが、さすがに今も同じというわけにはいかない。
俺は思わず視線を逸らしてしまった。
こういうのもなんだがなじみはかわいい。
学校一の美少女であることはいうまでもなく、たぶん世界一、いや銀河一……それどころか人類史上最もかわいい女の子であり、未来永劫なじみよりかわいい女の子は現れないだろう。
もちろん性格だってすばらしい。
いつも明るく楽しそうで、周囲から笑顔が絶えることのない元気な女の子だ。
そんな女の子を好きにならない男なんていない。
そういう話をすると、さすがにそこまで好きなのはお前だけだと友達にはいわれるんだが、あいつらはきっと目が腐っているんだろう。
なじみのかわいさがわからないなんて、なんのために人間として生まれてきたのだろう。かわいそうに。
それはともかく、俺はなんとか恥ずかしさをこらえて顔を上げると、なじみの目を正面から見つめ返した。
「ああ、もちろん俺はなじみが好きだぞ」
正直に答えられるとは思っていなかったのか、なじみの顔が急に赤くなった。
うろたえるように視線が泳ぎ、やがてうつむいてしまう。
「え、あ……。そ、そうなんだ。ありがとう……」
「あ、ああ、そうなんだよ……。なんだかお礼を言われるのも変な感じだな……」
そんな反応に俺まで恥ずかしくなってしまう。
やがて赤い顔のままなじみが俺の耳元に顔を寄せてきた。
「あの、えっとね……」
小さな声でささやくと、恥ずかしそうに微笑んだ。
「実はね、アタシもコウが大好きなんだよ」
かわいすぎて天に召されるところだった。
なんだこの天使は。
普段は明るくて元気ななじみが、少し恥ずかしそうにしながらも精一杯の勇気で告白してくれている。
しかも、しかもだぞ。
そんななじみが俺の彼女なんだ。信じられるか?
好きな子から好きだといってもらえる。
これ以上の幸せが世界に存在するだろうか。
今この瞬間に隕石が俺の頭を直撃したとしても悔いはない。
なじみと共に生きていたいだけの幸せな人生だった。
だけど、俺はその想いをぐっとこらえる。
俺には自分の思いを正直に告げるわけにはいかない事情があった。
俺はなじみが好きだ。早く結婚したい。子供はやっぱり二人がいいよな。
でもそれは……できない。少なくとも今のままでは。
だから俺は浮かれそうになる心を抑えて、こういった。
「ああ、もちろん知ってたよ。なじみは本当に俺のことが好きだよな」
なじみも急に恥ずかしそうな表情を引っ込めると、ニヤニヤとした笑みに変わる。
「うんうん、アタシも知ってたよ。コウのアタシに対する愛に比べれば全然かなわないけど」
どうやら素直に認めるつもりはないらしい。
「はっはっは。冗談言うなよ。なじみの方が俺のことを好きだろ」
「相変わらずコウはおもしろいなー。本当はコウの方がアタシのことを好きなくせに」
「いやいや、なじみの方が好きだろ」
「まさかー、コウの方が好きでしょ」
「なじみの方が好きだろ!」
「コウの方が好きでしょ!」
「いい加減素直になって俺と結婚したいっていえよ!」
「そういうコウこそいつアタシにプロポーズしてくれるの!?」
「「むううううう……!!」」
顔を合わせてにらみ合う俺たち。
幼い頃から一緒だからこういうタイミングもぴったり合ってしまう。
結局似た者同士なんだよな。
いつのまにか教室は静まりかえっていて、クラスメイトのなんともいえない視線が俺たちに集中している。
生徒を代表して佐東匡(さとうただし)が恨めしそうにつぶやいた。
「お前ら休み時間のたびにその甘ったるい痴話喧嘩するの俺の心に効くからマジでやめてくれない……?」
彼女いない歴イコール年齢の佐東が疲れ切った表情を浮かべている。
近くにいた志瑞和歌(しみずわか)も似たような顔をしていた。
「というか、二人って付き合ってるのよね?」
いきなり聞かれて俺は思わずうろたえてしまった。
だって、なじみが俺の彼女だなんて未だに信じられないんだから。
「えっと、うん、まあ、そういうことになるんだよな……?」
「あ、アタシに聞かないでよ、そんな恥ずかしいこと……」
「いやだって、こんなかわいい彼女ができるなんて、まだ信じられなくて……」
「アタシだって、こんなカッコいい彼氏ができるなんて、実は夢なんじゃないかって……」
「いやいやそんな」
「いやいやそんな」
「……はあ。それで、アンタたちはお互いのことが好きなんでしょ」
その問いかけに俺たちの表情が固まった。
「…………い、いや? なじみのことなんか全然好きなんかじゃないぞ……?」
「めちゃくちゃキョドりながらいわれても説得力ないんだけど」
「あ、ああ、アタシだって、コウのことなんかこれっぽっちも好きじゃ、ないもん……うぅ……」
「泣きながら言うくらいなら素直に認めたらいいのに……」
志瑞が呆れたようにため息をつく。
「なんで二人ともそんなに素直になれないのよ。アンタたちどっちもそんな性格じゃなかったでしょ。むしろ相手のためなら自分はいくらでも我慢できるタイプだったじゃない」
ああそうだよ。そのとおりだよ。
さすがクラス委員長なだけあるな。俺たちのことをよく見ている。
なじみと一緒になりたいから、胸が張り裂けそうなこの思いも我慢できるんだ。
「はあ……なじみが早く素直になってくれればこんな苦労もしなくてすむのにな」
「ほんとコウが早く男らしさを見せてくれればこんな苦労をしなくてすむのにな」
「……ツンデレなんてもう時代遅れだぞ?」
「……クールな俺カッコいいとか許されるのはマンガの中だけだよ?」
「そんな俺がカッコいいと思ってるくせに!」
「そんなアタシを可愛いと思ってるくせに!」
「「なにおおおおおお!!!!」」
再びにらみ合う俺たち。
となりで佐東がため息をついた。
「ケンカするほど仲がいいとはいうけれど……あれだな。夫婦喧嘩は犬も食わないって、こういうことなんだな……」
「「まだ結婚はしてませんー!!」」
俺となじみが声をそろえて否定した。
結婚するためにこんなに頑張ってるのに、こいつはいったいなにをいってるんだ。
俺だって好きでこんな言い争いをしてるわけじゃない。
本当はもっと恋人らしいことがたくさんしたいんだ。
でも、今はまだできない。
それには深いわけがある。
あれはそう、一週間前のことだった──
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