聖獣と共に生きる~異世界でもツイてない俺の奮闘記~
飛鳥井 真理
第1話 厄日ってこうゆう日の事だよな……
――今日は朝から散々だった。
月一の定例会議の為いつもより早めに家を出たのだが、電車の遅延に巻き込まれた。通勤時間と事故が重なるあとか、はぁっ、ついてない。こうゆうの絶対考慮してくれないんだよな、うちの会社。
よって、大幅に遅刻した俺は今、嫌味な上司の毒舌を浴びている。理不尽!
何々、社会人としての自覚が足りない、あらゆる事態を予測して行動をしろだぁ? なんつーことを要求するんだコイツは。出来るかそんなもん。俺は未来予知者じゃねぇっつーの、バーカバーカ!
……とか言える筈もなくひたすら謝り頭を下げる羽目になった。理不尽!
そして、いつも以上に冴え渡る絶好調の
結局は間に合わなかった奴らが多すぎて、会議は中止に追い込まれたらしいし、いいじゃないか。そんなにネチッこく嫌味を言わなくても。どうせ会議といったって、業績報告会という名の意味のない吊るし上げ作業だろ? 別に業務に支障はないんだしさ。
ようやく嫌味のネタが尽きた上司から解放されて、気分を変えに外に出た。奴のいる空間からちょっとでも離れたいからな、社食は利用しないんだ。
遅めの昼食にありつこうとお気に入りの惣菜屋さんに行けば、中から勢いよくバンッと開けられたドアの角が、運悪く額にクリーンヒット!
ゴンッ!!
す、凄い音がした。おおおぉぅ……これはきくぅ。痛みで星が飛ぶってこうゆうことかよ……知りたくなかった。大丈夫か俺っ!?
犯人はガタイのいい兄ちゃんで、メチャクチャ急いでたらしく、雑に謝ってさっさと去っていった。ま、まあいい。幸い出血してないしな。謝ってくれただけうちの上司よりマシだよ、うん。
痛む額をナデナデしながら店内に入ると、大好物の唐揚げ弁当がひとつたけ残っていた! うおぉっ、やったねっ。これはテンションが上がるっ。ここの唐揚げは俺好みの塩味でうまいんだよなぁ。
ちょっとしたアクシデントはあったが、やっぱり外に出てきたよかったとニコニコしながら手を伸ばした、その瞬間。
横からしゅばっと伸びてきたおばちゃんの手で華麗にかっさらわれた……おぅ。 ついでに睨まれた……何でだよ!? 理不尽!
せっかく上がったテンションも急降下する……が、仕方ないかと諦めた。だって、タイムセールで鍛え上げられたおばちゃんのゴッドハンドには勝てないだろ……。
喜んだ分だけダメージも大きかったが、それでも健気に立ち上がった俺は、二番目に好きな八宝菜弁当を大人しくゲットしておいた。まあ、ここのはどれも美味いしな、いいんだよ……。
再び気を取り直して、久しぶりに日光浴がてら近くの公園で食べようとルンルンしながら歩いていると、またしてもやられた。
ビチャリッ!
うわぁぁぁ、マジかよ。カラスの奴にアホ~っ、と言われながら頭上に不快な落とし物をされてしまったっ。
ちょっ、なんでわざわざそこを選んで落とすんですかね!? もっと他に、いっぱいあるだろ? こんな広い公園、落とし放題の癖に何故ここにしたし!
仕方なく公園の水呑場を使い、ジャブジャブと水をかぶって洗い落としていく。ううっ、冷たい。それに臭い……取れにくいし。連鎖する不幸に、じんわりと涙がにじんできた。
――うん、もう帰っていいかなこれ。
今日は絶対、何もかもうまくいかない日ってやつだよ。
気分転換するつもりが全然ならず、むしろ更なる心の傷を負って会社に戻るはめになった。もう最悪である。
沈んだ気分のまま席に着く。
でもまぁ、これだけ色々起こったんだから午後は平和に過ごせるだろう……過ごせるよね? 過ごせるはず!
でないとそろそろ本格的に泣くよ? と、低空飛行を続ける思考から抜け出せないまま午後の業務を開始した。
……んだけど、気合いを入れ直した途端、早速やらかしてしまう。コロコロとペンが転がっていってしまったのだ。机の下に……はぁ、やれやれ。
嫌な予感がしたけれど、しゃがんでペンを拾うと、慎重に体を起こす。なのにだ、目測を誤り机の角で頭をぶつけてしまいましたよ。……うん、やっぱりね。そんな気はしていた。気をつけていても、こうなるんだよな!?
痛みに悶絶しながら頭を抱えてうずくまっていたら、ちょうど通りかかったドジっ子新人男子が何もない床で躓き、俺の頭上に書類をぶちまけたよね……まあ、予想通りだよ。
一日一回は転んでいるお前が転ぶとしたら、そりゃあもう、今日は俺の前しかないだろうってな。
必死に謝られ、それがフロア中のいらぬ注目を浴びてしまう。おいおい新人だし許してやれよ、みたいな無言の非難が突き刺さって、またまた俺の酷使されてる胃が痛み出したんですけどっ。
いやいやこれって俺が悪いのか!? 違うだろ!?
……。
ふう、なんかこっちが悪いみたいな雰囲気になってますね……これも厄日のせいか? もうしょうがないから速攻許したと言うか逆に謝ってしまいましたよね、こっちがっ。勘弁してくれ……俺のライフはもうゼロよ!?
――しかし今日はやたらと、ピンポイントで頭の上に物が落ちてくるな?
これ以上、アホになりたくはないので、脳ミソに深刻なダメージを与え続けるのは辞めていただきたい。
それでも何とかいつも通りの過剰な残業をこなし、もう何も起こってくれるなとの思いを胸に会社を出た。
――人はこれをフラグと言う。
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