第74話 言質

初めて伺ったグレゴリーのおじい様のお屋敷では、

おじい様と、こちらのご家族が待っていてくれた。


「初めまして。

私はジェフ・エトワール。

あなたの母の弟にあたります。

それから、妻のミランダと、息子のフィル。

その弟のグレイグと、娘のキャシディーです。」


「初めまして、ジュリエッタです。

この度はお招きありがとうございました。

しばらくお世話になります。」


それから、お付きの3人ですと、ルイ―ザ達を紹介した。

最もローナたちは、おじい様と顔見知りでしょうけど。


やはり姉弟だけあって、おじ様はお母様にどことなく似ている。

おば様に当たるミランダさんは、メチャべっぴんさんで、

つまり3人の子供も、整った顔立ちをしていた。

もっとも子供と言っても、年は私と大して違いそうもないけど。


「初めましてジュリエッタ。

僕は長男のフィル・エトワール、24歳、独身です。」


なるほどなるほど。


「僕は次男のグレイグ、20歳、同じく独身です。」


はい、私もまだ独身です。それが何か?


「私はキャシディーよ。

年は16歳。

よろしくお願いします。」


一番下の彼女も、愛らしい笑顔で自己紹介をした。

ホント、可愛らしいわ。


「よろしくお願いしますキャシディーさん。」


「どうかキャシディーと呼んで下さい、お姉様。」


いきなりの、お姉様発言。

まあいいか、可愛いから許す。

奥様は、どうやら恥ずかしがり屋さんのようで、

はにかみながら、自己紹介をしてくれた。

お母様とは大違いだなぁと思った。


多分、私とのつながりがある親戚は、沢山いるのだろうけど、

おじい様が気を使ったのだろう、

私のお披露目は家族だけだった。


そうれから年かさの近い者の方が気を使わないだろうと、

子供達(?)だけで屋敷の中を案内してもらった。

(ローナもお付きとして一人だけ付いて来た。)

そして分かったこと。

この上の二人はあれだ、スティールに繋がる物がある気がする。

人種がスティールに似ている。

きっと同種だ、要注意人物だな。

…………。

そう言えば、あれからスティールはどうしたかな。

ここを訪れ無いと言う事は、そのまま国元に戻ったのか…。

開放されたと言う思いで、私は安心感で満たされている半面、

ほんのちょっぴり物足りない、空虚な気持ちがする。

この気持ちは一体何だろう。

今までの緊張感の反動だろうか。

まあいいわ、とにかく私は自由だ。


「このお部屋は、おじい様がお姉さまにと用意したお部屋です。」


一つの扉を開け、キャシディーがそう言う。

部屋の主色は淡い水色。

パッと見は男子の部屋に見えそうだけど、

中には巧みにピンクが織り交ざり、

やはり女の子の部屋に見える様にしてある。

きっとおじい様に、私は本当は水色が好き。

そうお話したのを覚えていてくれたのだろう。


「でも、私は余りここに留まらないのに、

部屋まで用意していただくなんて………。」


「えっ、お姉様は帰ってしまうの?」


「ええ、お仕事が有りますからね。」


「そんなにお若いのにお仕事を…。」


キャシディーはそう言いながら、自分の兄達をちらっと見る。


「キャシディー、俺達だって仕事をしているぞ。」


「あら、何の仕事をしているの?」


「父上に就いて、領地や伯爵としての仕事を学んでいる。」


ほほぅフィルさん、あなたその年で、

実際に仕事をなさっているのではなく、学んでいるですか。

やはりスティールに似てますね。

甘ちゃんすぎます。


「だって、パーティーだ何だって、遊び歩いてばかりいるって皆言っているわ。」


「パーティーだって伯爵としての仕事の一環だ。

誰がそんな事を言っている。教えろ。」


確かにそうかもしれないけど、そう詰め寄られては、キャシディーがかわいそうだ。

そう思ったが、キャシディーも負けてはいなかった。


「お父様は、いくらパーティーの翌日で疲れていようとも、

お仕事には必ず行かれます。

お兄様達の様に、頭が痛いだ疲れただの言わず、

しっかりとお仕事をされています。」


なるほど、ろくでなしか。

これは叩き直す必要が有るのだろうけど、

時間が無さすぎる。


「実は私は、国で教室を開いておりますの。

もしよろしければ、一度ご覧になりませんか?」


「あなたが経営なさってるんですか?」


「ええ、一応代表は私となっております。

紳士淑女を育てる場所ですの。

でも、色々な方のお力を借りて、成り立っておりますのよ。

講師の方も様々で、とても勉強になりますの。

そうだわ、短期間でも経験されてみませんか。」


「あなたにお世話になるのですか?」


「はい、私を始めとして、ここに居るローナと、とても有能なルイ―ザや

スカーレットと言うとても見目麗しい方もいらっしゃるのよ。

ちなみにルイ―ザとローナも独身です。」


「そ、それはぜひ教えていただきたい。」


「はい、喜んで。」


言質は取りました。

では、特別レッスンで私だけじゃない、

ルイ―ザやローナにも得意分野でじっくり教えて貰い、

スカーレットにも、秘書代わりに使ってもらってぇ、

スパルタで経営や経済を叩き込んでもらいましょう。

あなた達は、実家で可愛い可愛いで育てられた口でしょう?

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