眠れる海に静かな祈りを

demekin

第1話

1

 貴方の眠るこの海に、静かに祈りを捧げよう


 この詩の一節が似合う風景かも知れない。

日暮れが迫る入り江の海はとても穏やかで、雲一つない空の下、もう何千年も変わらずにいるかのように広がっている。しかし入り江の浜辺に打ち上げられた文明の残骸がここでかつて、激しい変化が起こった事を物語っていた。大きなコンクリートの塊……かつてこのあたりにあった都市の建物の一部が打ち上げられたものだ。人間の手で作られた建物が、人の手で破壊されたのだ。元の建物は、多くの人々の生きた証しを抱えながら、海の底に沈んでいるのだろう。沢山の文明の名残と共に。その海の上を、一艘のボートが漂っている。日焼けした黒髪の青年を乗せて。

 ボートの座席に横になって詩集を読んでいた青年は、*かれら*の気配を感じると読んでいた詩集を着ているジャケットのポケットの一つに入れて立ち上がり、海の様子を見詰める。

 *かれら*が来ている。

そう確信した青年は、座席の下から縦笛を取り出し、座席に座り、長い縦笛の先を海面に向けて吹き始めた。高い、小鳥の声に似た笛の音が入り江に響くと、海の底から影が黒い影が浮かび上がる。一つ、二つ……全部で五つの*かれら*の影が現れた。青年がその影に向かって笛を吹き続けると、*かれら*はそろって一緒の方向に泳ぎだし、青年は笛を吹くのを止めてボートを動かし、*かれら*の後を追いかけていった。左手で笛を持ち座席の前にある制御盤のキーを右手で軽く触れると、ボートは音無く静かに、滑るように波間を進んで行く。先を進むかれらを脅かさないように。暫くかれらの後を付いて進むと、やがて入り江の外にある、小さな島の群れが見えてきた。かれらはその島の一つの島に近付いて行き、島のすぐ傍で姿を消した。*かれら*が姿を消すと、青年はボートを止めて周囲の様子を眺める。青年を乗せたボートは*かれら*が消えた島から五メートルほど離れた所で、そっと止まる。おそらくこれほど静かな舟は無いだろう。なにしろあの海中の*かれら*を驚かさないように、特別に作られたボートだ。青年はこのボートで海中の*かれら*に近付き、*かれら*と仕事をする。その為には、極力かれらを驚かせないようにしなければならなかった.なにしろ*かれら*はとても敏感だ。騒がしい音を立てて彼らに逃げられたら、元も子もない。ボートの上で暫く島や周辺の海の様子を見ていた青年は、耳に着けたイヤーホーンから流れる音にも、意識を集中させていた。この小さなピアス状イヤーホーンは、船底に付けたマイクが拾った海中の音を青年に聞かせてくれていた。海の中から聞こえてくる様々な海の音の中から、青年は*かれら*の声を拾い、聞き取る。

「頼むよ」

青年は海の中の*かれら*に向かって話し掛けると、再び縦笛を吹き始めた。鳥の囀りに似た笛の音が海面に響き渡ると、水を弾く音と共に海面から水しぶきが上がり、プラスチックケースが海からボートに飛び込んできた。

「有難う」

青年は笛を吹くのを止めて足元に落ちた物体を拾い上げ足元のバックに入れると、再び笛を吹く。そして笛の音を聞いた*かれら*はゆっくりとボートに近寄り、海面から頭を出した。一……二……三……全部で五つの頭が海面に現れる。*かれら*の頭が揃うと青年は笛を傍らにおいてあるバックにしまい、足元の籠から*かれら*の好物の魚を取り出し、かれらに向かって投げた。青年がボートの上から投げる魚を*かれら*は上手に受け取ると、再び海に消えていく。*かれら*が海の中を泳ぐ影に戻ったのを見た青年は、再びボート動かし*かれら*の影を追っていく。かれらの影は、横一列に並んで、ある方向へ真っ直ぐに進んで行く。*かれら*は、何かを見付けたらしい。さっき、ボートに投げてくれたプラスチックケース以上のものを。彼等を追っていかなければ。*かれら*の影の後に付いて、青年を乗せたボートは小さな島々の間をすべるように進んで行く。やがて*かれら*はある小さな島の前まで来ると、海の深みへと消えて行く。*かれら*はこの小さな島の近くの海に、*かれら*が見付けた物があるようだ。それを知らせたくて、*かれら*は青年を此処まで連れて来たらしい。青年は*かれら*が消えたあたりの海にボートを止めるとイヤーホーンを外してジャケットを脱ぎ、灰色のシャツとズボンだけになって海に飛び込む。*かれら*の世界に。

 海の中はやや視界が悪かった。海中を泳ぐ、灰色の身体に斑模様のある*かれら*の姿も少しぼやけて見える。しかし海の中に沈んでいるものは、簡単に確認出来た。大きな建物の廃墟が、海の中に沈んでいる。かつて、この海が町であった時の名残だろう。それもほとんど壊れていない。おそらく中には何か、かつてこの海が町だった時代の遺物が残っているだろう。そしてこの廃墟の中には、青年が探している物があるかも知れない。青年は廃墟の姿を目に焼き付けておくと、自分の回りにいる*かれら*に目をやった。

(これがあることを、知らせてくれたんだね。ありがとう)

青年は*かれら*に心の中で礼を言うと息継ぎの為、海面に浮き上がり首を海から出した。

青年は大きく息を吸うと自分のボート以外の船が海にいないのを確かめ、再び海に潜る。海の中では、*かれら*が青年の回りで泳いでいた。青年は時々息づきをしながら暫く彼らに合わせて海中を泳ぐ。*かれら*との触れ合う時間だ。しかしこの楽しい時も、もう終わりだ。

(さよなら、もう町に帰るから。また頼むよ)

青年は*かれら*を海中に残して、自分のボートに飛び乗った。空はもう夕暮れになりかけている。結局、今日の目に見える成果は、小さなプラスチックケース一つだけになりそうだ。もう少し成果があればいいのだが、青年は満足していた。探していた海の中の廃墟を見付けられたのだから。それが、青年がずっと探し続けていたものなら良いのだが。それにプラスチックケースも、貴重なものが入っていたらいい利益になるだろう。今日はもう丘に上がって、身体を休めよう。その前に、*かれら*に挨拶をしなければ。青年は座席の下から笛を取り出し、再び吹き始める。暫く笛を吹いていると*かれら*は海面に姿を見せ、揃って海面から飛び出すジャンプをすると再び海中に入り、ボートから離れていく。*かれら*の姿が消えると、青年はまた制御盤のキーに手を触れ、遠くに見える陸地にボートを向わせた。


 ボートを陸地に近付けていくと、その町の船着き場が見えてきた。ボートの上の青年は夕闇が迫った船着き場に着くと、岸壁に係留されている大きな船の隣にボートを止め、バックと今日の成果を持って陸に上がった。そして岸壁にボートを係留するとジャケットを着てバックを肩に掛け、町に向かう道を歩き出す。海水に濡れたシャツとズボンは船着き場に着くまでにほとんど渇いていた。

 青年がここ数か月身を寄せている町は、ひどく寂しい町だった。夕暮れの中,外灯が幾つか灯っているだけの道を通って行くと、簡素な造りの建物が立ち並ぶ町に辿り着く。発掘人の町、ファド。その町で青年は、人魚男{マーマン}と呼ばれている。町中に入って直ぐ目に付くのは、幾つもの人の列だ。昔の建物の残骸を利用して作られた家や廃墟を再利用した建物の前や遠くの町から来たらしいトラックの前などに、人々はその日集めた収穫を手に列を作っている。これらの人々はこれから手にした品物を、現金に換えようとている。ファドの周囲にある廃墟や海岸で掘り出した鉄やプラスチックなどをだ。朝から夕方までかつてここにあった都市の遺物を探す彼らを、人々は発掘人と呼んでいた。夕暮れは発掘人達が自分の収穫を資源回収業者へ持って行き、その日の稼ぎに帰る時間だ。マーマンも一応は、その中の一人だった。しかしマーマンは、発掘人の列には並ばずに街中を歩いて行く。海で見付けたプラスチックのケースなど、金に変えてくれる業者など、ここには無いのだ。ただ一軒を除いては。マーマンは資源回収業者の建物が並ぶ一角を離れ、発掘人達が寝起きする宿や食堂などか集まった街角に入って行く。ここにマーマンが今日の成果を持って行く場所があった。まだ誰も宿には戻っていないらしく、とても静かな街角を少し歩くと、軒先に灯の灯ったランプが吊るされた店に辿り着く。ここが目的の場所だ。マーマンはランプに照らされた店の扉を、ドアベルの音と共に開けた。

「こんばんは、ヤット爺さん。今日も持ってきたよ」

店の中に入るとマーマンは、店の奥で机に向かっている老人、ヤット爺さんに挨拶をし、店内のあちこちに置かれている機械やケースに気を着けながら、店の奥に移動した。

「おお、マーマンか今日はどんな物を持って来たのかね。見せてくれるかい」

老人の机の前に移動したマーマンは、バックからプラスチックケースを取り出すと机の上に置く。ケースを開けると、中から十数枚の銀色の円盤が出で来た。

「おおこれは、音楽が記録されているものだな。1960年代のジャズ……オスカー・ピターソンだな。これなら誰かが買ってくれるだろう。気に行ってくれれば」

老人は円盤に付いているラベルを確かめると、一つの円盤を机の上に置いてある機械に円盤を入れた。機械から出てきたディスクトレイに円盤を乗せ、円盤がディスクトレイごと機械の中に納まると、軽快なピアノの音が機械から聞こえて来る。

「問題はなさそうだな。残りも傷は無いようだ。これよりこれを、どこから見付けたんだ」

ヤット爺さんはケースの銀色の円盤を一つ一つ確かめながら、マーマンに質問した。

「海からだよ」

「ほおっ、海ねぇ」

マーマンがケースを海から持って来たと聞いて、ヤット爺さんはかなり驚いたらしい。無理も無い。海で稼ごうなどと言う発掘人など、今までいなかったのだから。海の中の資源を狙うのは、遠くから船を仕立ててやってくる連中だけだ。ヤット爺さんは暫くまじまじとマーマンを見詰めた。この男、本当は何者なのだろうかというように。実際のところ店でよく顔を合わす割には、ヤット爺さんはマーマンの素性を全く知らないのだ。発掘人は自分の事をあまり話さないものだが、マーマンは他の発掘人以上に自分を隠していた。自分がどこから来て、何をしようとしているのかは、親しくなったヤット爺さんにも秘密にしていたし、ましてや海で見付けた廃墟など秘密の中の秘密だ。もしあの廃墟が見付かったら、廃墟で一儲けしようする連中が船を仕立ててやって来るかも知れないから。

「ま、いいだろう。海に浸かっていたにしては、音もよさそうだしな」

ヤット爺さんはマーマンの顔を見ながら話す。相手の隠し事を見透かそうとするように。だが暫くすると、老人はふたたび機械から流れ続ける音楽に聞き入りだした。どうやらこの音楽が、とても気に入ったようだ。老人は心地よさそうに音楽をききながら、机の引き出しを開けて中の物を取り出し、机に置く。

「さぁ、これがあんたの取り分だ。わざわざ海から持って来た割には少なかろうが、まぁ、これが相場ってとこなか」

「解っているよ。これだけあれば十分だ」

マーマンは机に置かれた今日の稼ぎを受け取ると、自分のバックに入れた。確かに明日の食事代を少し上回るぐらいの稼ぎだが、音楽の記録媒体など取り扱ってくれるのがヤット爺さんだけと言うのもまぎれもない事実だった。ヤット爺さんは発掘人が時々見付ける本や記録媒体を買い取っては、この老人だけが持つルートを使って売りさばいていた。詳しい事は解らないが、昔の記録を保存しようとする人間達が、遠くの町からやっと爺さんの店に来るらしい。世の中には、鉄やプラスチックより過去に記録された物を重要に思う人間がいると言う事なのだろう。

「有難う、ヤット爺さん。また何か見付けたら持って来るよ」

「おお、海で稼ごうとするのなら、もっと良い物を持ってくるんだな。じゃあ、またな」

「さよなら」

音楽が流れ続けるヤット爺さんの店を出ると、マーマンは自分が寝起きしている宿に向かう。仕事に出ていた発掘人達も、そろそろ宿に帰り始めたようだ。多くの人間達が町の通りを歩いている。上機嫌で酒場に入ろうとする者もいれば、安い食堂のメニューを恨めしそうに見ている者もいる。この時間帯は、今日誰がどれだけ稼いだかが解る時間帯だ。隠しようが無い。そんな発掘人達の間をすり抜け、マーマンは自分の宿へと急ぎ足で歩いた。

 マーマンが身を寄せている宿は、何軒も並んでいる宿の中ではましな部類に入る宿だ。なにしろちゃんと食事が出て、シャワーもあるのだから。稼ぎの割に良い宿で寝起き出来るのは、ここに来るまでにまとまった金を持っていたおかげだ。かつて一緒に暮らしていた人物が残した金を持っていたお蔭で、マーマンは宿の一室を暫く借りる事が出来たのだ。マーマンは宿の出入り口をくぐるとすぐに奥のシャワー室に入ってシャワーを浴びて今日一日の汚れを落とし、海水に浸かった衣服を着替えた。こざっぱりとしてシャワー室を出たマーマンはそのまま食堂に向かい、腹ごしらえにかかる。カウンター横の棚からパンとパスタ入りサラダを乗せた皿、そして白身魚のフライとミネストローネを手に持ったトレーに乗せ、カウンターで客の応対をしている年配の女性に声を掛けた。

「そこのオレンジとパインジュースがほしいんだけど」

マーマンが注文すると女性はカウンターの奥からオレンジの皿とジュースのコップを持ってきて、マーマンのトレーに置き、マーマンはその代金をバックから出して女性に渡す。食事の料金は宿代に入っていたが、フルーツとジュースの代金は、その都度払うことになっていた。マーマンは窓際のテーブルにトレーを置くと、外の様子が一番よく見える場所で腹を満たし、ジュースを飲みながら寛いだ。寛ぎながら窓の外に目をやると、外の通りを歩く人々が見える。窓の外に次々と現れては通り過ぎて行く人々。その大半は、中年を過ぎた発掘人の男達だ。町を歩く子供や若い女性を見掛ける事は殆ど無い。マーマンと同世代の男ですら数が少ないくらいだ。日々の稼ぎを求めて放浪している男達が辿り着き、暫く滞在しては再び姿を消していく町……一年を通して温暖な気候に恵まれているのに、どこか寒々さした町……今マーマンが滞在しているファドはそんな町だった。

 廃墟が無ければ、この町はもっと良い町になっているかも知れない。

人通りを見ながら、マーマンはぼんやりと考える。町の近くの海岸や海に過去の文明の遺産がある為に資源発掘が主な産業になってしまい、他の産業が成り立たない。ファドは今、そんな状態に陥っているのだろう。何とかならないものだろうか?

(まぁ、考えてもしかたがないか)

マーマンは溜息をつくと、手にしたコップに残ったジュースを飲み干す。この町にとって、マーマンはふらりとやって来て、幾らか稼いてから姿を消す発掘人の一人にすぎない。そんな人間がこの町の事を考えても、どうにもなりはしない。それより部屋に戻って寝よう。マーマンはコップをテーブルの上に置くと席を立つ前に、再び窓の外に目をやる。人通りはさっきより多くなったようだ。しかしそれ以上に、この町では見かけない人間の姿が目に付いた。お揃いの青みがかった灰色のシャツと黒いズボンを着た、十数人の男達、それも若い男達の集団だ。さっぱりとした服装をして一塊になって歩く若い男の集団は、薄汚れた服装で歩く年かさの男達の中ではかなり目立っていて、通りを歩く人々のほとんどは、彼らを怪訝そうに見詰めていた。彼らは何をしに来たのかというように。窓の外を通り過ぎる男達を見ていたマーマンは、彼らのシャツの背中にシードラゴンと書かれた文字を見付けた。その名前はマーマンも知っていた。海に沈んだ船や建物を引き上げ、その中から価値のある物を持ち帰っては貴重で高価な資源として売り渡す団体の名前だ。

「シードラゴンの調査船乗組員達だな。とうとうこんな所まで目を着けてきたか」

いつの間にか、マーマンの隣に座っていた老人が窓の外を見ながら呟く。横縞のシャツにこげ茶色のズボンを着て、白髪を肩まで伸ばした老人……歳の割には屈強そうだ。しかも身なりがいい。発掘人ではなさそうだしこの宿の客でもないようだ。

「あいつらがここに来たからには、この近辺の海に何かが沈んでいるということだな」

エクスプレッソコーヒーが入ったカップを片手に、老人は呟き続ける。しかしシードラゴンの一行が窓から見えなくなると、席を立ちカップを持ってカウンターに向かい、カップを置くと食堂から直接出入り出来るガラス戸を出て、外で待っていたらしい発掘人の男と話し始めた。それを見ながらマーマンはジュースを飲み干し、バックを肩に掛け、トレーを孵しにカウンターに向かった。

「あの老人は誰なんだい。発掘人には見えないけれど」

マーマンはトレーをカウンターの女性に渡すと、出入り口に顔を向けながら女性に尋ねる。

「ああ、ドクターの事かい。あの人は時々此処に食事をしに来る人だよ」

外で発掘人と話し続ける老人に目をやりながら、カンウターの女性はマーマンに答えた。

「ドクターって、医者かい?」

「人の話しによればね。気が向くとこの町に来て、発掘人達の病気や怪我を治すらしいよ」

女性が話している間に、ドクターと呼ばれている老人は発掘人と一緒に宿の前から離れて行く。二人の後を、何処からか来た茶色い大きな犬が追いかけていくのが見えた。

「ドクターに用事があるなら、今のうちだよ。気まぐれに現れては、姿を消していくから」

カウンターの女性はマーマンが渡したトレーを持ったまま話し続ける。

「今ところ、その必要はないね。じゃ、お休み」

「お休み」

話しが終ると女性は食器を洗いにカウンターの奥の流しへ行き、マーマンは宿の自分の部屋に向かった。

 食堂を出て上の階の客室に続く階段を上り、自分の部屋に入って電気をつけると、マーマンはバックを机の上に置くとベッドの上に座り込んだ。この木製の机と椅子とベッドしかない簡素な部屋が、マーマンがここ二週間ほど、寝起きをしている部屋だ。ベッドや机はそれなりに良い物だが、それ以外の物は本当に何も置いてない部屋……でもマーマンにはこれで十分だ。ベッドの枕元に置いてあるラジオさえあれは他には何もなくてもいい。マーマンはベッドに横たわるとラジオに手を伸ばし、スイッチをひねる。少しばかりの雑音と共に、耳障りのいいオーケストラの音楽が聞こえてくる。眠りに着く前に聞くのに良さそうな音楽だ。マーマンは暫くその音楽を聞きながら、放浪の旅に出てこの町に来る前の事を思い出していた。 


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