第9話 鬱短歌(1)

社会から置いていかれるこの身かな友人たちは遠くへ行った


それぞれの立場はあれどわが身ほど軽く惨めなものもなし


肩の荷を下ろし続けて気が付けば伽藍洞の身背筋が寒い


親戚の子らに軽蔑されたくはなし正月近くは死を意識する


子供部屋おばさん世人は上手く言う残酷過ぎて喉が詰まった


なけなしのやる気を集めてキー叩くこれしかないの私にはもう


母よりも父より犬のマロンより先に逝きたい看取られたい


羽化不全飛べない蚕は焼くだけと先生は言ってごみに捨ててた


繭残し焼かれた蚕を育てた手罪はきっとそれだけでない


不幸せ幸せくらべキリがないわかっていても測る生き物


禁句だとわかっているから言わないが頭をよぎる「生まれなければ」

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