春の街を歩いた
よる
1
土の間から射し込んでくる光が眩しくて目が覚めた。
今日も迎えは来なかった。
どこにいるかはすぐに理解できた。
たくさんの黒い服を着た人がいた。
泣いていた。悲しい顔をしている。
水を垂らせばそのまま滲んでしまいそうな空気に耐えられない。
「そうだ街へ出よう」
また何度目かの式日から目を背け続けている。
花の降る街を歩いた。
桜は満開より昔から葉桜が好きだ。砂の混じった乾燥した風が頬に当たる。
久しぶりのお日様だ。
もう夜しか歩けなくなっていた。
足がもつれても、転んでも気にしなかった。
ただただ楽しかった。
黒い雲も哀れんで静かに涙を流してくれた。
声を出して笑った。
許せないことばかりだ。頭の中で憎い奴らの顔を思い浮かべては腹の底から馬鹿にした。
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