春の街を歩いた

よる

 土の間から射し込んでくる光が眩しくて目が覚めた。

 今日も迎えは来なかった。

 どこにいるかはすぐに理解できた。

 たくさんの黒い服を着た人がいた。

 泣いていた。悲しい顔をしている。

 水を垂らせばそのまま滲んでしまいそうな空気に耐えられない。


 「そうだ街へ出よう」


 また何度目かの式日から目を背け続けている。


 花の降る街を歩いた。

 桜は満開より昔から葉桜が好きだ。砂の混じった乾燥した風が頬に当たる。

 久しぶりのお日様だ。

 もう夜しか歩けなくなっていた。

 足がもつれても、転んでも気にしなかった。

 ただただ楽しかった。


 黒い雲も哀れんで静かに涙を流してくれた。

 声を出して笑った。

 許せないことばかりだ。頭の中で憎い奴らの顔を思い浮かべては腹の底から馬鹿にした。


 


 

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