01 木陰の間からこっちを見てくる



 朝の通学路。

 視線を感じると思ったら、背後に今日も例の人達がいた。


「はぁはぁ、くりすたん萌えぇぇぇぇっ!」


 こっちを見ながら身もだえしているそのおじさんは、大変な人だ。

 突然身もだえしたり、頬をそめたりするので、忙しくて大変な人。


「かわいいよ! くりすたん、かわいいよ! だきしめて、すりすりしたいよ!」


 そして何だかへんたいっぽい。


 つまりたいへんなへんたいだった。


 もう何年もつきまとわれているので慣れているけど、やっぱりいくら慣れようともいい迷惑なので、いいかげんやめてほしい。


 学校に向かう道すがら、「チラっ」と振り返る。


「はっ、くりすたんが、視線をおくってくる。その目の冷たさがたまらないっ! 胸の鼓動が高まり過ぎて昇天してしまうかもしれないよ!?」


 馬鹿につける薬はないというが、へんたいにつける薬もないと思った。


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