第1249話 使えそうなのがこれしかなかった。的なお話

どんな露店がいいかな?

遊戯系はいくつか見てまわった方がいいかな?

食べ物系はとりあえずスルーするとして、他にはどんなのがいいかな?


「あれ? なんか音がするね?」

「本当っす。なんすかね、これ。」

「鈴のような、でもよく響いて綺麗な音ですね。」

「音って……ああ。あれは風鈴って言って下につけてある奴が風によって靡く事で音を立てるんだよ。涼しげな音色だから夏場に窓の近くとかにぶら下げられたりするんだ。」

「へー。」


まあ、ウチでは使った事なかったけど。

風鈴はどちらかというとお店とかで聴く感じだったな。

個人的にはちょっと欲しかったけど子供が買うようなものじゃないし、他にも買いたいものが色々あったから結局買うことはなかったんだよね。


「あ、ガラスで出来てるんですね……うわ、やっぱり高い。」

「金属製のも探せばあるだろうけど、やっぱりこっちの方が綺麗だからね。」

「そうですね……、それに模様もいいです。」


ちなみにお値段は1個1万リム。

日本じゃ考えられない値段だ。

そもそも日本のお祭りの屋台で売るような値段じゃないが。


「どれがいい?」

「いえいえ、そんな! こんな高い物買えませんよ!」

「あ、私はこの緑のがいいかな。」

「高給取りは黙ってて下さい!」

「いや、俺が買うつもりだったから……。後、その人一応あなたの上司ですよね?」

「あ! すみません! つい……。」

「あー、うん。気にしてないから別にいいんだけどね……。というか、高給取りって……そんなにお金欲しいなら昇進させてあげよっか? 今よりも大変になるだろうけど。」

「え? ……や、やめておきます。」

「そう?」

「あはは……でも、本当にいいんっすか? かなり高いっすよ?」

「一応そのために多少は稼いでいたから。まあ、牛鬼と鵺のお金はまだ入って来てないけど……。」


入って来てないよね?

実際は入って来てたけど、俺が知らないだけってことはないよね?

忙しかったからセフィア達が代わりに受け取ったとかそういうのはないよね?


「でも……」

「まあまあ。折角買ってくれるって言ってるんだから素直に受け取りなよ。なんだったら私が買ってあげようか?」

「この余裕……確かに高給取りっすね。」

「なんで!?」

「まあ、アデラードさんは冒険者ギルドのギルドマスターで、爵位持ちで、高ランクで、おまけに多芸と来ているんだ。アホほどお金持ってるのは当然でしょ。」

「そうですよね。」

「っすね!」

「みんながひどい!」

「というわけでアデラードさん。お会計お願いします。」

「なんか私が払う流れになってる!? そこはレントが男の甲斐性見せる所でしょ!」

「あ、やっぱり?」

「最初にそう言ってたじゃん! 全くもう……あんまりからからかわないでよね。」

「すみません。なんかちょっと浮かれてたかもしれません。」

「あ、うん。浮かれるのはいいんだけどね……。ただ、からかわれるのはあんまり慣れてないから、控えてくれるとありがたいかなって。」

「分かりました。」


結局というか、当初の予定通り3人の風鈴を俺が支払い、ついでに俺も自分の分の風鈴も選んで買った。

後で馬車に……音でアルバ達の気が散るかもしれないし無理だな。

宿……勝手につけていいわけないし、許可が貰えても帰る時に忘れそう。

……暫く仕舞っとこ。


風鈴の後、適当に歩いていると、妙なものを発見。

ミニボウリングみたいだけど、レーンが途中で終わってるし、妙な傾斜が付いていてまるでジャンプ台のよう。

そしてそのジャンプ台の先にはこちら側に傾いた回る棚のような物。

なんだこれ?


「兄ちゃん達やっていくかい?」

「あの、なんですかこれ。」

「試しに作ってみた遊戯具なんだがね、結構人気なんだよ。ルールは至って簡単。この箱の中から1つ木札を引いて、その木札に書かれた色の枠にこの球を全部入れればいい。1回の挑戦で球は5つ。指示は3色だから2回失敗しても問題ない。最終的に入れれた色の数によって景品の格が変わるって寸法だ。」

「へー。面白そうですね。」

「だろ? ちなみに、枠の方は見ての通り回っているから結構難しいぞ。」

「とりあえず1回やってみます。いくらですか?」

「毎度。1回200リムだよ。」

「はい。」


木製の球が入った籠を受け取り、そのうちの1つを手に取る。

大きさから想像していたよりも少し重い。

材質の問題もあるんだろうけど、それ以上に日本とかでこの手のボールは大体ゴムとか合成樹脂とかで中が空洞になっている。

だからつい軽く想像してしまったんだと思う。


「いつでもいいぞ。」

「では、行きます!」


俺の指示は白、ピンク、緑の3色。

真ん中のオレンジが入ってれば少しは楽だったんだけどこればっかりは運だから仕方ない。

ゴロゴロゴロゴロ、カッ! という音を立てて飛んでいった球はガッと枠に当たり弾かれてしまった。

意外と……いや、かなり難しいかもこれ。

回転速度はそこまで速くないから狙うこと自体はできるが、力加減がまるで分からない。

どのくらいの力で転がせばどこまで届くかというのが分からないと狙いようがない。


2投目で感覚を掴み、3、4、5投目で色を狙う……というのが理想だったんだけど、所詮は理想。

力加減をミスって飛びすぎたり、届かなかったり、あるいは力加減は良かったけどタイミングが合わなくて青色の枠に入ったりして結局指示通りの色はピンクのみだった。

悔しい。

貰った景品は何の変哲もない箸。

いくつか選択肢あったけど、こけしとか貰ってもねぇ……。

使えそうなのがこれしかなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る