番外編 お正月if 〜日本編〜

日本のこの日はどの家庭も大体テレビを見て過ごすだろう。

そしてそれは我が家も例外ではなく今もこうして某有名歌番組を見ているわけだが、普通とは違う点が1つ。

それは今ここに蒼井家の人達もいるという事。

お互い思春期という事もあっていつの間にか蒼井とも疎遠になったが、それはあくまでも俺と蒼井だけの話で昔からあった家族ぐるみの付き合い自体が無くなるわけじゃない。

なのでこうして毎年のようにどちらかの家に集まっている。


「蓮斗君醤油取ってくれる?」

「あ、はい。」


接し方が分からなくても関わらなければいいだけの話だし、何も問題はないな。


「それで、うちの娘とはどうなの蓮斗君? もうキスした? それとも最後まで行っちゃった?」

「「ぶっーーーーーー!!」」


訂正!

問題しか無かった!

酔っ払った蒼井の父親がとんでもない質問ぶっ込んできやがった!


「「ゲホッ、ゴホッ……。」」

「うちの旦那がごめんね蓮斗君。」

「い、いえ……。」

「それで実際のところはどうなの? 私にだけこっそり教えてくれない?」

「お母さん!」

「あら、怒られちゃった。やかましい娘でごめんね? でもいい子だから。それにかわいいでしょ? 私が許すから好きなようにしていいからね?」

「あーもー! 唯ちゃん、あっちでゲームしよゲーム。あんたも来なさい!」

「へーい。」

「あっ、待って……。ごちそうさま!」


見えなければいないのと同じ理論なのか離れようとしたみたいだな。

でもそれは俺も助かるので乗っかる。

やるゲームは個人的にはさまざまなゲームのキャラクターが集まって大乱闘を繰り広げる世界的にも人気の奴がいいが、今回は最近発売されたパーティーゲームの定番である、プレイヤーが社長になって全国各地を巡り最終資産を競い合うすごろくゲーム。


「なんでそんなすぐ近くに飛ぶのよ!」

「日頃の行いとか?」


「デビルなんて要らないのに!」

「唯ちゃんご愁傷様。」


『スリー……トゥー……ワーン……』

「それだけは嫌! お願いそれだけはやめて……って、嫌ぁぁぁ!」

「あー、なっちまったかぁ……。」


「あははは、もう真っ赤だし10億も20億も変わらないわ!」

「ヤケになってやがる……。」


そんな白熱した勝負もついに決着がつき、結果は……


「なんでコンピューターの1人勝ちなんだよ!」


3人仲良くコンピューターに負かされました。


「3人でわちゃわちゃしてる間に横から掻っ攫われたからね……。」


はぁ……まあ、仕方ないか。


「ん? そういえばやけに静かね……って、全員酔い潰れてるわねこりゃ。」

「マジだ。」

「あ、年明けた。」

「グダグダだなぁ……。」

「所で、いつものはどうする?」

「多分、今年も起きないだろうな。」

「多分ね。」

「たまにはお兄ちゃんも一緒に行こうよ。」

「そうだなぁ……ま、たまにはいいか。」

「そう。それじゃ6時ね。」


普段はめんどくさいし寒いから行かないけど、たまにならいいかということで今年は行く事にしよう。

3年ぶりくらいか?

そういや、あの人に会うのも久しぶりになるのか。



朝6時となり玄関前に集合するが、予想通りというか案の定というか、俺と蒼井の両親4人は未だ起きてこない。

なのでこの3人で新年の初詣へと向かう事にする。


「うぅ……さっむ! やっぱ来なければ良かったかな?」

「早朝だしね……息も白いし。」

「自分で行くって言ったんだから文句言わないでよ。私だって寒いんだから。ほら、もうすぐ着くわよ。」

「向こうに着いたら豚汁食べよ?」

「そうする……。」


それからすぐに目的の神社へと辿り着く。

まあ近所の神社だしそこまで遠くはない。

それでも真冬の早朝という事もあって寒いものは寒いのだが……。

やっぱり初詣で1番の楽しみはお汁粉とか甘酒とか豚汁とかの食べ物系だよな。

おみくじに惹かれないわけでもないのだが、所詮は運試しだし買ったからといって何かあるわけでもない。

健全な男子高校生なわけですし、やっぱり食べ物に惹かれますよ。


人がごった返していてガヤガヤと判別できない声になっている。

ここ数年は面倒くささと寒さに負けて来てなかったけど、やっぱり凄い人の数だな。

人の流れに逆らう事なく流されていきそのままお賽銭箱の元まで辿り着きそこで願い事をする。

願い事……願い事……あっれー!?

特に浮かばないぞ!?

いや、お金欲しいとか成績上げたいとかそういう俗な願いがないわけじゃないけど、そういうのを神頼みはなんか違くない?

異世界転移とか興味あるけど、実際に起こるのは困るし……ま、定番の世界平和でいいや。


参拝したら横にはけていく。

後ろの人達の邪魔になるからね。


「おお、今年は蓮斗もおるのじゃな!」

「あー、まあ、たまにはと思いましてね。」

「なんじゃ……妾に会いに来たのでは無いのか……。」

「嘘泣きはやめてくれませんか……周りの目が……。」

「ふん。妾に会いに来ぬのが悪いのじゃ。」

「いや、神社なんてそうそう来ないでしょ普通……というか、会いにって神社の娘がそんなこと言っていいんですか、ほむらさん。」

「神社の娘だろうとなんだろうと、結婚だってするし、子供だって作るわ。これくらいで神様も文句は言わぬよ。神自体、なんだかんだやらかしておるしの。」


なんて罰当たりな……これで神社の娘というのだから驚きだ。

しかも本人曰く天照大御神の血を引くとかなんとか……。

ちなみに普段は女子大生をしている。

あの口調で女子大生って浮かないか?


「と、そうじゃ。お主達に紹介せねばな。雪乃、ちょっとこっち来い。」

「なんだ、焔姉さん。」

「紹介しよう。妾の従姉妹の雪乃じゃ。」

「如月雪乃だ。よろしく頼む。」

「一見無愛想だが真面目なだけだからの。仲良くしてやって欲しい。」

「無愛想は余計です。」

「ほらの?」

「んー如月ってもしかして2組の?」

「知ってるのか?」

「学校でチラッと見た気がするのよね……。」

「そういえば、私も貴女の事は見たことある気がする……そうか、同級生だったのか。」

「言い方が同級生って感じじゃないんだけど……ま、よろしくね。」

「そういえばホムラさん。雪乃さんは今年が初めて見るんですけど、今までは手伝ってなかったんですか?」

「いや何、単純に年齢がの……蓮斗達と同じで今高1だからな。」

「ああ……そういう。」

「一応はバイトという扱いだからその辺はしっかりせんといかんのじゃ。」

「成る程……納得。」

「ちなみに妾もバイト代が出るが、お守りや絵馬、おみくじのはけ具合で変わってくるのでぜひ買っていってくれ。」

「ぶっちゃけるなぁ……。」

「神職でも金が無くば食っていけぬのでな。と、あまり油を売っていては少ないバイト代が更に減らされてしまう。というわけで蓮斗、優姫、唯。妾は社務所におるから後で寄っておくれ。ではの。」

「全く焔姉さんは……あーと、それでどうします?」

「まずは豚汁食べて、社務所はそれから考えます。」

「そうですか。それでは私も仕事に戻りますね。」

「あ、待って! せっかく同じ学校なんだしさ、連絡先交換しない?」

「わ、私とですか!?」

「そうよ。携帯は……あ、今は仕事中なので控え室に……。」

「ならそこに行きましょ。」

「あ、じゃあ俺も連絡先交換していいか? せっかく知り合ったんだし。」

「じゃあ私も!」

「そ、そうですか……な、なら一緒に行きましょう!」


なんだか嬉しそうに見えるな。

そしてその控え室なのだが、社務所に併設されているようですぐに焔さんと再会する事に。

いや、ちょっと考えれば分かることだろうに……。


「なんじゃ? 早速妾に会いに来てくれたのか?」

「えっと、連絡先交換したいって言うから、それで……。」

「なんじゃ、そういうことか。此奴は真面目が過ぎる所為かなかなか親しい友人が作れなくての…「焔姉さん!」…こんなんじゃがこれから仲良くしてやって欲しい。」

「あーもう……。」


それで嬉しそうだったんだね。

なんていうか、かわいいな。

うん。

仲良くなれる気がしてきた。


「折角ここまで来たのじゃ。何か買ってゆけ。ご利益あるぞ? 主に妾の財布にじゃがの。」

「姉さん! おじさん達に言いつけるぞ?」

「そ、それだけは勘弁してくれ!」

「あははは! 流石の焔さんも両親には勝てないか。」

「ぬぐぐ……雪乃の癖にぃ……。ならば! これは雪乃の子供の頃の話なのじゃがな、妾の家にお使いをするように……「わーわー! それは言わないって約束したではないか!? それだけはやめてくれ!」」

「もっと見たい気もするけど他の人の迷惑になるから。」

「む、そうじゃの。」

「ほっ。」


じゃれあいを止めて無事に連絡先をゲット。

ついでにお守りも買っていく。

俺はまあ、交通安全のお守りだったけど、蒼井は恋愛成就のお守りだった。

いやそれ、まずは恋愛する相手を作ってからじゃないかな?

唯も恋愛成就だったけど……ノーコメントで。


その後豚汁を食べてから家に帰るがその道中で初詣定番の何を願ったかという質問を蒼井がして来たりしたが、ここはお茶を濁さずに世界平和と真実を伝えておいた。

まあ、信じられなかったけど。

本当の事なのに……。


「後はお年玉ね。今年はどれくらいもらえるかな?」

「あー、俺欲しいゲームがあったんだよな。それに漫画も幾つか新刊出てるし……。」

「私も福袋買いたいんだよね。」


さて、今年はどれだけ貰えるかな?

楽しみだ。

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