第1204話 緊張で手と足が同時に出る。的なお話
ついにこの時が来てしまった。
今日は帝への謁見の日。
昨日までは意識の外だったからそこまでじゃないが、当日になって意識しだしたらもうダメ。
緊張感がマジでやばい。
父さんが室長とかいうよく分からない役職で、なんか専務とか常務とかそういうお偉いさんを家に連れてきた事が何度かあるからそれなりのお偉いさん相手なら相手出来るよ?
でも、帝は違う。
一応一流企業とか言われてるところに父さんは勤めてるからその専務とか常務とかいう人達はそれなりの地位だろうが帝、すなわち王様とは訳が違う。
緊張するなという方が無理がある!
緊張してるのは俺だけじゃなくメンバーのほとんどが緊張してる。
リリンだけは緊張してないよう……ん?
あ、これ緊張してるわ。
パッと見そう見えないだけだけど、これ確実に緊張してる。
結局みんな緊張してるわ。
やっぱり貴族や大名とは訳が違うという事か。
軽く震えて力の入らない足を無理矢理動かして帝の住まう城へと向かう。
くぅ……今だけはコハルさんが羨ましい!
コハルさんは冒険者の仲間じゃないから今回はついて来たいと言われても断るしかない(元から言ってない)ので今この場にはおらず宿で留守番してる。
本当に、会わずに済むのが羨ましい。
帝城と呼ぶにふさわしいヤマト様式の城に入り、控室へと案内される。
「では、帝様の準備が整うまでここでお待ちください。」
控室は城の中の部屋という事もあってかなり豪華な仕様。
他国のお偉いさんやヤマトの大名も来る場所だから豪華になっているんだろうな。
だからこそ落ち着かないが。
緊張で胃に穴が空きそうってこんな感覚なんですね……。
「俺、格好変じゃないよな? 不敬とか言われたりしないよな?」
「だ、大丈夫だよ……それより僕変じゃない?」
「大丈夫。いつも通りの可愛いセフィアだよ。」
お互いに変なところがないか確認し合うが、パッと見では問題なくても礼節的に問題があった場合は俺には理解できないという問題がある。
大丈夫だよな?
正装しろとか言われてないし問題ないよな?
「私、奴隷なので辞退していいでしょうか? むしろ辞退すべきです!」
「あ、1人だけ逃げようたってそうはいかないわよ!」
奴隷なのは貴女が拒絶してるからでしょ!
俺は既にそんなつもりないのにこういう時だけ奴隷の立場を利用するなんて……。
奴隷の立場を利用するってなんだよ!?
俺混乱してるな!
「というか、神様に何度も会ってるのになんでこんなに緊張してしまうんでしょう?」
「そんなの、アリシアさんは確かに神様だけど、アリシアさんはちょっと揶揄うのが好きで、美人で優しくて頼りになるお姉さんでしかない。帝とは違うよ。」
存在の格としてはアリシアさんが圧倒的に上だろう。
そして親しみやすさもアリシアさんが圧倒的に上だ。
結構長い時間経ってるしこれまでの積み重ねがあるから緊張する必要がないんだよ。
でも帝は初対面で圧倒的目上だ。
緊張するのは当然だろう。
「準備が整いましたので、こちらへどうぞ。」
ついにか。
緊張で手と足が同時に出る。
凄いね!
俺自然となんば歩きが出来てる!
って、そんな場合じゃないよな!
「あなた方の立場も理解していますし、こちらが突然呼びつけたので礼儀作法については特に問題はありませんが、あまり失礼な言動を行なった際にはその限りではないのでご注意を。」
言われなくてもそんなこと言わないよ!
「帝様。レント様達をお連れしました。」
「うむ。入れ。」
おや?
聞き覚えのある声が聞こえたぞ?
案内してくれた人が戸を開け、そこから見えた人物は、肌も、瞳も、髪も真っ白で、真紅で統一した巫女服を身に纏う少女だった。
お前が帝なのかよ!?
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