第1173話 もはや業者の域じゃないかな? 的なお話

着いた酒屋にてアデルは大興奮。

祭り前にはどっか酒屋でアデル用に何かお酒を買っておこうかなとか思ってたけど、まさかその前に当人がやってくるとは思わなかった。

まあ、喜んでいるしいいか。


「凄い! 流石生産国! 安い!」

「え、安い……? それ、龍帝ですよね? かなりの高級品ですよ……?」


アデルが見て喜んでいるお酒を見たコハルさんが驚いている。

龍帝? は高級品らしい。


「だって私の国で買うとしたらこれ今の値段の10倍くらいするんだよ!? どう考えても安いでしょ!」

「じゅっ……!? え、そんなに……だって龍帝って5万くらい……えぇ……?」


10倍なら50万か。

お酒一本で50万っていうのは高いのか?

相場がいまいち分からないからピンとこない。

日本にいた時スーパーとかで見た際高いなぁとは思ってもここまでじゃなかったし高いって事でいいのか?

でもここ異世界だし……。

まあ、高いんだろう。


「あ、今宵だ! こっちには風雪がある! こっちには歌調べ! 響奏もある! ここ天国!?」


アデルはあっちにフラフラこっちにフラフラとお酒に引き寄せられている。

ヤマト酒ってどうも見た感じ日本酒みたいなんだよね。

俺、日本にいた頃は最初にお酒飲むのなら飲み会とかで雑に飲むとかじゃなくて、夜桜を眺めながら1人静かに……とか、月を見ながらとか……そんな感じで花見酒、月見酒、雪見酒みたいに雰囲気のいい感じで飲みたかったんだよね。

だってなんかそういうのってかっこいいじゃない?

まあ、初飲酒は少し雑な感じになっちゃったわけだけど……。


で、そういう時に飲むのならやっぱり日本酒かなぁって考えていたから、世界は違うけどこうして日本酒っぽい物があるわけだしちょっと俺も自分用に買ってみようかな……?

しかし、そうなるとどれがいいのか分からないな。

これまでに飲んだのはワインばっかだったし。

エールはなんか苦そうなイメージがあったから。


「アデラードさん。おすすめの奴とかってありますかね?」


分からない時は人に聞くに限る。

聞くは一時の恥知らぬは一生の恥ってね。


「んー、どういうのがいいの?」

「ヤマトのお酒は全然飲んだ事ないので飲みやすいのがいいですね。あ、後酒精の量よりもお酒の味が良いのがいいです。」

「となると……これかな。未来。」

「未来……。」

「うん。初めてヤマトのお酒を飲む人達が今後もヤマト酒を好きになってくれる未来を思い描いて造られた奴だから初めて飲む人でも飲みやすいようになってるよ。後は味だけで言えば今の所龍帝は外せないかな。他だと歌調べが甘口だけど美味しいよ。他だと望郷とか月光とかもオススメかな。後は……」

「ちょっと待ってください!」

「うん? 何?」

「いや、多過ぎですから。全然オススメになってないですよ。それじゃアデラードさんが好きなヤマト酒の名前をあげてるだけになってます。」

「そうかな……? じゃあとりあえず未来と龍帝、それと響奏の3つで飲み比べすればいいよ。未来は甘口よりで響奏は辛口。龍帝は私が1番好きな奴だからレントも好きになってくれるといいなっていう願望で。」

「分かりました。じゃあその3つを買う事にします。」

「うん。じゃあ先に会計していて。私は自分のを選ぶから。」

「了解です。」

「んーと、龍帝は10本は欲しいかな。それで今宵は値段が手頃だからこっちは20……いや、30かな。後は響奏、風雪、歌調べ、月光、花月、弦十郎は酒精が強いからこれも外せないかな……後は……」


こりゃまだしばらくかかりそうだな。

というか、30って……。

たくさん飲む人だということは分かっているけど、そんだけ買ったらもはや業者の域じゃないかな?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る