第1143話 それじゃ頑張るとしますかね。的なお話
今日は遂にというべきか、あるいはとうとうというべきか。
それはともかく三次試験の当日です。
昨日貰った牛鬼用の解毒薬が良く聞いたのか体のだるさは無くなり絶好調といったところ。
まあ、それは俺の話。
コハルさんは表情は多少和らいだものの、未だ顔色は青い。
コハルさん程ではないけど症状が重く出ていたのはユキノ、シア、レイダさんの3人。
真っ青というほどではないが顔色は悪く寝込んでいる。
残りのメンバーは俺と同様、程度に差はあれど身体がだるい程度だったそうで、昨日貰った解毒薬のおかげで今日にはすっかり良くなったみたい。
アカネはコハルさんを連れて離脱したのでそこまで症状は重くならずに済んだ模様。
「それじゃあ、俺は三次試験を受けに行くよ。4人の看病は任せた。」
「任されました。」
ユキノに関しては勧誘員として同行するのが当然みたいに言っていたけど、今の状態じゃ無理だろうし、何か聞かれたらその時は正直に話そう。
えーと、アザミだっけ?
そいつが絡んできそうな気もしないでもないが、気のせいだろう。
セフィア達は見送りをしたがっていたが、病人……病人?
毒の場合は病人になるのか?
病じゃないし……ま、いいや。
面倒だし病人でいいだろ。
実際寝込んでいるわけだし。
病人がいるのでそっちを優先してもらった。
寝込んでいる人がいるのに誰も側にいないっていうのは不安だからな。
試験会場として指定された場所に着いたわけだけど……本当にここでいいの?
なんか、貴族街というか、ヒノモトの中心付近にある道場のような場所だし、隣にはかなり豪華な屋敷もあるんだけど……。
なんか不安になって来た。
「君、ひょっとして受験者?」
「は、はい! そうです!」
「そうか。もう時間になるし早く入ってくれ。」
「分かりました!」
本当にここでいいのかとチラチラと中を覗いていたら守衛の人に中に入るように言われた。
どうやら本当にここだったようです。
道場の中に入ると十数人の男が居て、その中にはアザミが選んだ英雄役候補の奴もいた。
とりあえず集団に混ざって状況が進むのを待っていると奥の出入り口の方から数人の人がこっちに歩いて来た。
先頭の人と後ろを歩く少女の頭には角がある。
あれが鬼人という種族なのだろう。
肌の色は赤くも無ければ青くもない。
どちらかというと色白系だ。
「これから三次試験を開始する。試験内容は既に知っていると思うが、今日からの1週間英雄演舞における舞の稽古を受けてもらう。その出来によって英雄役と補欠を選ぶ。選ばれなかった者はその時点で終了となる。ああ、宿に関しては封竜祭終了後1週間までの間は好きに使ってくれて構わないぞ。」
そいつは良かった。
不合格になった途端今後の宿泊費は全部払ってね? なんて言われたらどうしようかと思ってたからな。
それに、中には宿泊費が高いと宿を引き払い安い宿に変える人が出るかもしれないが、そうなった時果たしてまだ宿は空いているのかという問題も出てくるだろう。
そういう事態になった時かなり揉めそうだよな。
俺は余裕で払えるけど。
払えるけど、タダで使えるに越したことはないが。
「そして、ここにいる少女が今回の英雄演舞における巫女役を務めてくれる、言わば君たちのパートナーとなる子だ。」
「初めまして。今回の祭りにおける巫女役をさせてもらいます、
鬼人の少女も英雄演舞の演者だったのか。
この場に似つかわしくないなとは思っていたが、そういう理由なら納得だ。
「では、これより稽古に入るが何か質問はあるか?」
「はい。」
「そこの1番後ろの黒髪黒目の。なんだ?」
「えっと、ギルドの方で牛鬼に対する対策会議が開かれたそうですけど、このまま三次試験を受けても大丈夫なんですか?」
そう言って爆弾を投下。
これを聞いてもしかしたら延期になるかもしれないけど、気になったので思い切って聞いてみた。
すると、何人かの係りの人が狼狽たが、不思議なことに他の受験者は特に動揺することはなかった。
んー……?
あっ、そうか。
この人達は他所の国から来たから牛鬼がなんなのか分かってないのか。
「その話は聞いているが、安心していい。既に冒険者ギルドと国軍がその対策に乗り出している。君達は何も気にせずに試験に臨んでくれ。」
「分かりました。」
そういう事ならまあ、気にする必要はないか。
国が出張ってくるのなら問題はないだろう。
「他に質問はないか? …………。ないようだな。では、これより稽古を始める!」
さてと、それじゃ頑張るとしますかね。
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