第1137話 今後も注意が必要そうだな。的なお話
早速魔物が潜んでいるであろう森の中に入るわけなのだが、その前に……。
「で、コハルさんはいつまで……というか、どこまでついてくる気ですか?」
「それは当然どこまでも、です。」
「いや、こっから先は危険なんだけど……。」
「ご安心下さい。私、こう見えても隠密行動は得意なんですよ。」
うん。
それは知ってる。
夜這いしてきた時、寝ていたとはいえリリンに気付かれていなかったからそういうのが得意なのは知ってる。
流石のリリンも寝ていたら気配察知の精度も落ちるだろうよ。
それに場所が場所だから気を緩めていたんだと思うし、気付かなくてもしょうがないだろう。
「それに近接戦闘には多少の心得がありますから。ゴブリンや小鬼程度、相手にもなりませんよ。」
「へー、そうなんだ。」
「まあ、流石にAランクとかの高ランク……例えば牛鬼とかだと流石に手も足も出ませんけどね。」
牛鬼とかもいるのかよ……ぬ◯りひょんの孫に出てくる義理人情に厚いというか、仲間を大事にする奴みたいなのだと嬉しいなぁ……。
……ま、流石に無理か。
とりあえず周囲の状況とか魔物の様子とかを確認したいだけだからそこまで奥まで行くつもりはないし、大丈夫だろう。
大丈夫、俺はフラグを折る男。
一級フラグ倒壊士の称号を持つ者。
フラグ建てとけば問題ないだろう。
……自分で言ってて悲しくなってきた。
本人が大丈夫と言うし、そこまで危険な所までは行かないし、いざとなったら守ればいいか。
フミカゲさんにごめんなさい、死んじゃいましたって、遺体を見せるわけにもいかないからね。
それにまあ、それなりの知り合いではあるわけだし、目の前でし慣れるのも嫌だしな。
森の中に入って暫く。
他の場所ならとっくの昔にゴブリンやらコボルトやらと遭遇してるだろうに、ここでは軍関係やらが演習とか間引きとかしてるからか、全然遭遇しない。
それなりに歩いて漸く魔物と遭遇する。
いつものゴブさんだけど。
そしていつも通り瞬く間に首と胴体がお別れになりました。
更に進んでいくと突然どこからともなくシャカシャカという謎の音が聞こえてくる。
「なんだ、一体……?」
「この音は……小豆洗いだ。」
「え、小豆洗いって、あの小豆を洗うだけのおじさん妖怪だよね?」
「何を言っているのだ、ユウキ。小豆洗いはそんな生易しいものじゃないぞ。小豆洗いは……いや、今はそんな時間はないか。説明は後だ。今はとにかく周囲の警戒だ。」
未だ続くシャカシャカという音。
それが何を意味するのかは分からないが、ユキノが警戒しているのだ。
それだけで驚異度は十分測れるというもの。
どれだけ経ったのか。
1分か、5分か?
それとも数十秒ほどなのか……。
緊張感漂う中周囲の警戒をしているとシャカシャカという音が唐突に止まった。
何が起きる?
「…………………。」
何も、起こらなかった。
「ふぅ……何処かに行ったようだな。」
ユキノのその一言にみんなが警戒を半分だけ解く。
流石に何があるのか分からないので完全に警戒を解くわけにはいかない。
「それで、小豆洗いってのはどんな魔物だ?」
「小豆洗いは先ほどまで聞こえていたシャカシャカという音に魔力を乗せて流し、聞いたものの平衡感覚を狂わせる。音を聞いたものはどこから聞こえるのかと周囲を見回すが、狂った平衡感覚のせいで立ちくらみなどを起こしてしまうのだ。小豆洗いはその隙を狙い背後から忍び寄り鋭い爪で首筋を斬り裂く。大抵の者は即死だな。」
何それ怖い。
小豆洗い怖い。
「その上慎重な性格でな、暫く音を聞かせても隙を見せなければすぐに逃げ出してしまうし、相手の数が多くても同様だ。だから、煩い暗殺者などと言われている。」
暗殺者なのに、煩いなんだ。
暗殺者のイメージとは真逆だな。
だが、小豆洗いが厄介なのには変わりないし、今後も注意が必要そうだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます