第1124話 楽しみは取っておきたい気もするし 的なお話

ユキノに案内されてたどり着いたお店は、まだ店の中に入る前なのに既にお茶のいい香りがしている。

お茶なんてどれでもいいとは言わないけど、そこまで頓着してこなかった俺もなんだかワクワクしてきた。


お店の中はいくつもの金属製の缶が並んでいて、その缶1つ1つに茶葉が入っているんだろう。

その缶はいくつかの纏まりがある。

きっと同じ茶葉で纏めてる。

ワクワクするが、正直に言ってどれがどう違うのか分からない。

日本でも玉露とか言うのがすごく高いっていうのは知ってるけど、それ以外は何がどう違うのか……。

緑茶で一括りにしてたからなぁ。


「おや、いらっしゃい。何をお求めかな?」

「こんにちは。正直に言ってどんなのがいいのか分からないんですけど、こういうのがおすすめっていうのはありますか?」

「そうさね〜お嬢さんが何を求めてるかで変わるね〜。」

「毎日飲めるのがいいですね。高過ぎるのはちょっと気後れしちゃいますし。」

「ん〜取り敢えず、試飲でもしてみるかい?」

「いいんですか?」

「構わんよ。飲んでみない事には何も分からないからね。」


ワクワクしてるが、店主さんと話をするのはアカネ。

行きたいと言ったのはアカネだからアカネの譲るのが道理という物。

まあ、すぐ側にいて意見を言える状態ではあるけど。

まだ何か言う事はないから側にいるだけなんだけど。


「はいよ。皆さんの分もあるから飲んでみ。」

「ありがとうございます。」


あ、これ甘味があるしみんなは飲みやすいと思う。


「次はこっちだね。」

「こっちのはさっきと違って香りがいいですね。」

「最後はこれだよ。」

「今度のはなんて言うんですか……深みがある? なんかそんな感じがしますね。」

「おお、外人さんなのに分かるのかい?」

「ええ。私はこれがいいです。」

「まあ待ちな。他のお仲間さんの意見をまずは聞いてからだよ。それに、あくまでもどんなのが好みなのか調べるためだからまだもう少し試してもらうよ。」

「あ、はい。」


俺も3番目のがいいと思ったけど……みんなはどうかな?


「僕は2番目のが好きかな。」

「3番目。」

「私は1番最初のが飲みやすくて良かったです。」

「私は2番目のがいいと思ったわね。」

「私は、1番目のが、好き、かな。」


みんな結構ばらけてるね。


「私はもうちょっと渋みがある方がいいかな。」

「え?」

「な、何? 私変なこと言った?」

「いや……ただ、ちょっと意外だっただけで。」


蒼井の事だからてっきり1番みたいな甘みのある方が好みなのかと……。

そっか。

もう18だからな。

昔みたいに甘いのがいいってわけじゃないか。


「まあ、色々言った所で買うのはアカネだ。自分の好きなのを選べばいいさ。それに、他のも飲みたかったら自分達で買えばいいしさ。」

「そうね……そうさせてもらうわ。」


ちなみに俺は3番目のを選んで購入しました。

俺以外にも何人かそれぞれの好みのお茶を購入していたりする。

蒼井はアカネと同じように店主さんにお茶を選んでもらう事にしたようだ。

2人が選んだお茶も後で飲ませてもらおう。


その2人も好みのお茶を購入し、満足げな表情をしている。

よっぽど良いのが買えたみたいだな。


「さて、それじゃ次は……と、そろそろお昼か。先にお昼を食べてからにしようか。」

「そうだな。昼食に関してだが、私のおすすめの店がある。そこに行かないか?」

「ユキノのおすすめか。是非行かせてくれ。みんなもいいよな?」


みんなもユキノのおすすめには興味があるようで反対意見とかは特に出なかった。

というわけでそのお店へ向かうとしよう。

どんなお店なのか気になるけど、楽しみは取っておきたい気もするしどうしたものか。

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