第1033話 こういうのって普通ギルマスだよね? 的なお話

「何騒いでるの?」

「あ、ルーナ秘書官……いえ、実は……」


受付さんが常識クラッシュされて騒いでいると眼鏡をかけた女性が受付の奥の方からやって来た。

秘書官とか言われてたな。

眼鏡かけてて知的な雰囲気あるし、納得な見た目をしている。

ちなみに年齢は30くらいに見える。

見えるけど実年齢は知らん。

舐められないようにあえて老けメイクをしている若い人かもしれないし、見た目通りの年齢かもしれない。

あるいは実は50くらいいっている美魔女さんなのかもしれない。

なんて事をぼんやりと考えているうちに受付さんの説明が終わった。


「事情は分かりましたが、内容が内容なので一度ギルドマスター室まで来てもらいます。」

「え、あ、はい。分かりました。」


来てくれませんか? ではなく来てもらいます、ですか……。

有無を言わせないって事ですね。

まあ、異常種の話だからあまり広めたくないんだろう。

他の冒険者が動揺するかもしれないし、ギルドとしても売りに出す際に情報統制とかした方が売りやすいとかそういうのがあるかもしれないな。


ーーコンコン


「ギルドマスター、入りますね。」

「え、あ、ちょっと待っ…「待ちません。」」


うわ、問答無用かよ……。

なんか、このギルドの力関係が分かったかも。


「……はぁ〜。またですか。」

「あ、いや、これはそういうのじゃなくて……。」


ギルドマスターと思われる人が突然入って来た俺達に驚きつつ何かを後ろに隠す。

いやいや、母親が突然部屋にやって来て慌ててエロ本隠す男子高生かよ……。

あ、俺は違うよ。

だって日本にいた時はまだ15歳だったから。

そういうのはちゃんと18歳なってからだぞ。

男と男の約束だ。

…………ん?

今俺は誰に向かって言っていたんだろう?


「それはいいですから、早くしまってください。大事な話がありますから。」

「はい。」

「それと、それに関してははまた後で。」

「……はい。」


やっぱり力関係は秘書官さんが上のようだ。

それにしても……置き物が多い部屋だな。

アデルの所はもっとスッキリしていたぞ?

この辺はギルドマスターの好みの差という事なのだろうけど、もう少し減らせはしないのだろうか……正直言ってめっちゃ気になる。

どこを向いても置き物があるから気になってしまう。


「えっと、それでなんの用かな?」

「このパーティが異常種が率いるシルバーエイプの群れを壊滅させたそうです。」

「……それ、本当なの?」

「こんな嘘を言ってなんになるんですか? 貴方じゃないんですから。」

「私が嘘ばかり言ってるみたいに言わないでくれるかな!?」


うーむ。

俺達は一体何を見せられているのだろうか?

夫婦漫才?

それくらい息が合っているが今はそれどころではないだろう。


「あの、それで俺達はどうすればいいんですか? その夫婦漫才を見せたかったのであればもう用はないでしょうけど、そういうわけじゃないんでしょう?」

「そうですね。では単刀直入に言わせてもらいますが、シルバーエイプの異常種を狩るに至った経緯を教えてください。先程受付の者から軽く伺いましたが、実際に戦った者としてより詳しく聞かせていただきたいと思っております。」

「それは分かったんですが、その……。」

「何か?」


なんであなたが聞いてくるんですか?

あなた秘書官ですよね?

こういうのって普通ギルマスだよね?

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