第965話 アクリアに行くんだし。的なお話

宿に帰って夕飯をいただく。

折角の辺境伯領の領都なのだからと観光してたのにな……。

まあ、その辺は帰ってくるに楽しむとして、今は夕食について。

主食にパン、メインディッシュには肉という極々普通のメニューなのだが、ここで意外性を出してきたのがスープ。


このスープこれまでのスープとは一線を画している。

今までは肉と野菜を煮て塩胡椒等で味付けをするってのが基本で、ギルドのスープは非常に美味いがそちらも肉と野菜から出汁を取っているのではないだろうか?

レシピ知らないから推測でしかないが。

それに対してここのスープからはほのかに魚介系の香りがするのだ。

そんで一口飲んでみれば魚介の旨味がガツンと来る極旨スープになってるのだ。

ブイヤベースってこんな感じなのかな?

日本にいた頃は食った事ないから分かんないけど。


みんなもこの極旨スープを大絶賛。

どうもこの宿の自慢のスープらしい。

レシピは残念ながら教えてもらえなかったが、しょうがないよね。

そう簡単に商売の種を教えてくれるはずもないし、こっちもダメ元で聞いてみただけだし。


夕食を終え、風呂に入った後襲われてから就寝。



朝食もこの宿自慢のスープだったけど少し味が変えてあってあっさり目で寝起きの胃にも優しい仕様となっていた。

俺、こっちも好きだな。

寝起きという状況を加味したらこっちの方が好きかもしれない。


昨日、よろしくなと言っておきながら半日も経たずに宿を取ることになったせいで消化不良な顔? をしているアルバとマロン。

その2頭をなんとか宥めて次の街へと向かう。

うん。

だってこんな近くに街があるとは思わなかったんだもの。

やる気を出させたのにすぐに終わらせたのは悪かったとは思うが、こればっかりは仕方ないじゃないか。


街で1泊したので昨日は魔物狩りは出来なかった。

なので昨日の順番を維持して今回は俺達の番。

……ま、街に近い関係でろくに魔物いないんですけどね。

一応国防において重要な地点だし、軍の訓練とかで魔物狩りくらいしてるよね。

……1匹も狩れなかったよ。


そうして日が暮れる少し前に、次の街にたどり着きました。

……いやいや、早くない?

馬車で1日ってそれは近すぎない?


そんな領都に近すぎる街は大きな……大きな?

この手の街がどのくらいなのか分からないけど、大きな城壁を備えた街だ。

こういうのって、城塞都市とか城郭都市とか言うんだよね?

城塞都市って事はつまり、ここがこの国の最東端の街って事かな?

少なくともここが国境沿いの街だとは思う。

なんでもない普通の場所にこんな物々しい街を建造するはずもないだろうし。


「ようこそ、城砦都市ガンダーレムへ。」


城塞都市でも城郭都市でもなく城砦都市でした。

いや、ひょっとしたら城塞都市かも知れない。

でも多分城砦都市。

どっちでもいいけど。

意味的にはそう大差ないだろうし。


「この街は国境沿いにある街だからな、こことは反対側の門から出ようとすると税金を取られるから注意しろよ。」

「その向こう側に用があるので問題ないです。」

「そうなのか。」

「所で、ちょっとした疑問ですけど、もしも街を経由しない場合だと税金ってどうなるんですか?」

「その場合向こうの国に着いた時に入国税が倍になって、その半分がこっちの国に送られるようになってる。ちなみに倍額払わなかった場合脱走者として拘留されてこの国に強制送還された後、しばらくの間強制労働だな。」

「それは勘弁したいですね。」

「だろ? というわけではい。」

「真偽の水晶?」

「一応規則でな。お前らがアクリアから回り込んできてないかの確認だ。」

「なるほど。」


もちろん問題ありませんでしたよ。

だってアクリアから来たんじゃなくてアクリアに行くんだし。

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