第923話 みたいな物って認識でオッケーだよね? 的なお話
カインを出てから1週間。
今回も何故か野生の魔物も野生の盗賊も出てこない。
だから何もなく御者したりアニメ見たりするだけで時間が過ぎていった。
そしてそろそろ商業都市クルスラウトが見えてくる頃。
商業都市クルスラウトも迷宮都市と呼ばれるリステルと同様に国家直轄地。
多分だけど多大な利益が見込めるからどっかの貴族に任せたくなかったんだろうなぁ……。
リステルは魔石の産出量が国で1番多く、クルスラウトはそこからラングエルト伯爵領、更に先の王都へ至る道の間にあるから商業の場所として栄えさせたと考えられる。
そしてそこで上がる利益をうまうまと貰うわけだ。
もちろん都市の発展やら警備やらなんやらに使うんだろうけど、ちゃんと国庫の方にも入っていくんじゃないかな?
なんて事を考えていられるのも暇なお陰。
いや、暇な所為かな。
折角の異世界だからいつか世界を見て回りたいとは思うけど、こうも移動が暇だとやる気が減っていくな。
退屈こそ1番の敵とか最大の敵とか言ったりするけど、今まさにそんな感じ。
「レント。馬車が襲われてる。」
偶には何かしらのイベントでも起きないもの……か……って!
「なんだって!?」
フラグ立てる前にフラグ持って来ないでよ!
「レイダさん!」
「分かってます!」
馬車を襲っているのは魔物の集団。
ゴブリンが20匹ほど。
対して馬車の戦力は中年冒険者と思しき男が2人。
その2人が馬車を守るようにして戦っている。
しかし数が多すぎるせいで防戦一方。
このままだといずれは馬車の中身が奪われてしまうだろう。
「助太刀します!」
「助かる!」
一応宣言しておかないとな。
盗賊だと思われて攻撃されたらたまらんし。
助太刀と言いつつ、剣は使わず魔法でゴブリンを処理する。
少し距離があって近づいて攻撃するよりも早いからな。
もちろん馬車や中年2人には当たらないように注意している。
単発系の範囲が狭い魔法だけど、相手はただのゴブリン。
倒すのにはそれで十分だ。
「助けてくれてありがとう。お前らは冒険者だよな?」
「それ以外に見えますか?」
「それもそうか。」
「それじゃ報酬の話をしましょうか。」
「分かった。」
正直に言えば、別に報酬なんていらない。
というか貰いたくない。
お金目当てに人助けをするわけじゃないから。
でもここで無償でいいと言うと、次に他の冒険者が似たような事になった時、「無償で助けてくれた人もいるのにお前らはなんだ?」みたいな流れにならないとも限らない。
そして冒険者は助けて当たり前、自分達は助けられて当たり前なんて考えるようになったら非常にやばい事になる。
冒険者の悪評が広まるのはもちろん、命がけで助けたのに文句を言われるくらいなら助けないなんて考える冒険者が出てくるかもしれない。
だからここは報酬の交渉をする必要がある。
「相手は20匹居たとはいえ、所詮はゴブリンだし、1人2000でいいよ。」
まあ、護衛の2人と馬車の持ち主とその従者で2、3人。
全部で1万程だしそこまで高くはないよな?
それにあのままだと積荷にまで被害が出ていただろうし、それどころか人死にが出た可能性もあると考えれば安いはず。
こんな交渉なんてやった事ないから相場が分からん。
「そうか。分かった。乗客に伝えてくる。」
「乗客?」
「ああ、乗合馬車だからな。客くらいいるさ。ほら、乗合馬車の看板提げてるだろ?」
「確かになんかありますね。」
「なんかって、知らないのかよ?」
「初めて見ますね。」
「こっちだって乗合馬車の看板知らない冒険者初めて見るぞ? 流石に乗合馬車は知ってるよな?」
「名前くらいは……。」
「マジかよ……。」
そんなこと言われたって、日本には既に存在しない物なんだもの。
とりあえず乗合バスみたいな物って認識でオッケーだよね?
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