第902話 カインでの流行りなのだろうか? 的なお話

朝起きて、ご飯食べて、アニメ見ながら移動して、夜に寝る。


それを13回繰り返す。

……というかね、何もなさ過ぎでしょ!?

野生の魔物と1度も遭遇しないし、野生の盗賊も1匹も居なかったわ!

何これ!?

安全過ぎるんですけど!?

いや、安全なのはいいけど、安全過ぎて逆に不安になってくるんですけど!?


まあ、何はともあれ、無事カインに到着です。


カインに着いてまず向かうべき場所はあそこだ。

紅の帽子亭。

借りていた家の様子を見に行くというのも悪くはないが、まず向かうべきはやはりそこしかないだろう。


「お母さん、ただいま!」

「ひょっとして……ルリエかい?」

「うん、そうだよ!」

「大きくなって……おかえりなさい、ルリエ……。」


アメリタ義母さんがルリエを抱きしめ感動の再会を果たしている。

リック義父さんは厨房なのかここにはおらずなんだかすごい空気感がある。

強く生きて欲しい。


「急にどうしたんだい? 帰ってくるなら手紙の1つくらい寄越してくれても良かったのに。」

「えへへ、ごめんなさい。借りた家の事が気になっちゃって。」

「あ、その事なんだけどね……すまんね。実はあんた達の家、別の人に借りられちまったんだよ。」

「そうなの!?」


ありゃま……。

まあ、仕方ないか……。

借りてたとは言っても後半は全くと言っていいほど住んでいなかったわけだし。

ただ家具類がどうなったかくらいは知りたいな。

残ってるなら持って行きたいし。


「ま、詳しい話は食堂にいる借りた本人に聞いとくれ。」


本人?

え、ここにいるの?

というわけで聞きに行って見たのだが、食堂にいたのはリィナさんのみ。

えっと、何処にいるのかな、借りた人。

帰った?


「リィナさんしか居ませんけど?」

「いや、そのリィナさんが借りた人なんだよ。」

「はい?」


なんで?

なんでリィナさんが?


「その、なんだ。お前らがなかなか帰ってこないから、代わりに借りておいたのだ。」

「あ、そうなんですか。それはありがとうございます。」

「うむ。いや、その前に言うべき事があるんじゃないか?」

「え、あ、ちょっと帰ってきました。」

「軽いな……。おかえ……って、ちょっと?」

「いや、2、3日滞在したらヤマトに向かわないといけないので。」

「そ、そうなのか……。」


なんかシュンとしてる。

前に会ってから1年経ってるとはいえ、こんなリィナさんは初めて見る。

なんか新鮮だ。

とはいえ、ここでじゃあ一緒に行きましょうとは言えない。

リィナさんはここで【黄昏の獅子】というパーティを組んでいて、そんな人を誘うというのは流石に申し訳ない。

リィナさんは斥候をやってたりするから抜けちゃダメな人だし。


「それよりも、ここ1年で何か変わった事とかありましたか?」

「え、ああ。特には……いや、1つあったな。だがそれはやはり本人から聞くのが1番だろう。それよりもレント達はこれからどうするのだ?」

「そうですね。目的だった家の事はもう終わっちゃいましたし、とりあえず休みたいんですけど……。」

「ああ、家なら構わんぞ。レント達の為に借りたのだからな。好きに使ってくれ。」


少し変な感じだな。

自分達の家という認識があるのに実際は現在の家主はリィナさんで許可を取らなければいけないというのは。


「ほんのわずかな時間とはいえ、折角帰って来たのだ。向こうでの話も聞かせて欲しいし、今夜どうだ? 一緒に飲もうではないか。」

「あー、そうですね。じゃあ今夜ここで。」


流れで飲む事になったが、ある人のお陰でそういうのには慣れている。

どの程度なら酔わずに済むか分かっているし、無理せずにいこう。


迷宮都市での話か。

どんな事を話そうかな。

とりあえずこの前のあれは封印確定。

神様が関わってるしその過程でナタリアさんが1度死んで俺もかなり怪我したなんてとてもじゃないけど言えるわけがない。

謎のポーション売りのお姉さんは言えるか。

後は奴隷市とか狩猟大会なんかもいいかも。

ま、その辺はその時の会話の流れで選ぶとするか。


それはそれとして、さっきのアメリタ義母さんといい、リィナさんといい、本人に直接聞くようにっていうのが、最近のカインでの流行りなのだろうか?

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