第854話 褒められるのは嬉しいものだな。的なお話

魔石とドロップアイテムを回収してみんなのところに戻る。

ドロップアイテムは緑の毛皮だった。

この毛皮何に使うんだろうな?

絨毯みたいに敷くのだろうか……?

なんか金持ちがよくクマとか虎とかの毛皮を敷いてるイメージがある。

あれって結局なんの意味があるんだろうね。


「お疲れ様ですわ。」

「そうでもないですよ。それよりも、最初にヘビィコング・ビリジアンが叫んだ時に何か言ってたよな? あれってなんて言ってたんだ?」


言葉遣いに気をつけてはいるが、やはりまだ最初は丁寧な感じになってしまう。

一応すぐに気をつけて出来るだけ砕けた感じにしてるけど……そのせいで変になってる。

慣れるのにはまだ時間がかかりそうだ。


「ああ、それはあの魔法の効果の説明ですわ。さっきのはショックボイスと言って声を増幅させて格下の相手を萎縮させるというものです。」

「そうなのか……あ、それってつまり……?」


説明からもしやとイリスさんとレヴィを見てみると……2人ともへたり込んでいた。

ひょっとして腰抜けちゃってる?


「大丈夫か?」

「あはは……ちょっと足に力が入らないですね。」

「そうなのか……まあ、もう時間的に探索は出来ないしさ、ゆっくりして大丈夫だよ。」

「ありがとうございます。」

「そっちはどうだ?」

「私もちょっと無理そうかな。」


何をもってして格下と判断しているのかは分からないが、2人ほどやられてしまった。

ここがボス部屋でよかったよ。

普通の通路だったら魔物と遭遇した時に少し苦労していただろうし。


「ナタリアさん。もう1つ聞きたい事があるんですけどいいですか?」

「ええ。構いませんわ。」

「ゴリパンを躱した時に服に少しだけかすってたみたいなんですけど、こんな感じになっちゃってるんだよね。だから魔法的なものがあるんじゃないかって思うんだけど、何か知ってる?」

「ゴリ……恐らくサイクロンスマッシュの事ですわね。」

「その名前から察するに、拳に竜巻を纏わせて攻撃する技って感じかな?」

「ええ。ちなみに、ヘビィコング・ビリジアンはその2つしか魔法が使えません。」

「……え、ショボくね?」

「元がヘビィコングですから。ダンジョンボスとして能力が変わろうとも、適正に限界があるのでしょう。」

「なんか、可哀想だな……。」


悲しみを背負うボス、ヘビィコング・ビリジアン。

元がヘビィコングだったが為にボスとして君臨しても魔法はたった2つしか使えない哀れな存在か……。

まあ、戦えばまた倒すんですけどね。



しばらく時間が経ち、レヴィは回復したがイリスさんはまだ少し時間がかかりそうとのこと。

だけど、流石にこれ以上ここに居座るわけにもいかないので仕方なく下の階まで運ぶ事に。

それはまあ、いいんだけどさ……運ぶ人の選択に悪意というか善意というか……そういうものを感じるんだけど?


「すみません、迷惑かけて……あの、私重くないですか?」

「全然。むしろ軽いくらいだろ。」


この状況で重いなんて言う馬鹿は居るのだろうか……?

というか、なんで俺が背負う事になってるんだろうね?

こういうのは男の仕事とか言われたけどさ、別にみんなも普通に背負えるよね?

ステータス考えれば余裕だよね?

ちなみに、イリスさんは鎧を着用しているし俺も着ているので背中に柔らかさは一切感じない。

別に惜しいとかは思ってない。

むしろ意識しないで助かるとさえ思ってる。


「あの、それでさっき使ってた棒術? あれって一体なんなんですか? なんか、持っていた棒が少し光って見えたんですけど。」

「ああ、あれはユニークスキル、【千変魔杖術】っていうんだ。圧縮した魔力でその形を変化させる、文字通り千変万化の姿を持つ杖術だよ。」

「ユニーク……凄いです!」

「うわっ! びっくりした……。」

「あ、すみません……。でも、本当に凄いです。私、ユニークどころかレアに該当するスキルも無いので、羨ましいです。」

「魔力操作が稚拙だからあんまり上手く扱えないんだけどね。」

「それでも凄いです。」


この状態にさせられたのは悪意と善意を感じるが、それでも褒められるのは嬉しいものだな。

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