第775話 予備として考えればいいか。的なお話

まずはテントの設営だけど、これは前にやったし問題ないな。

そういえば前の時はリナさんが絡まってあられもない……


ーーブンブン!


「わっ!? 急にどうしたの?」

「なんでもない!」

「え、そう?」

「なんでもないったらなんでもないから。セフィアは気にしなくていいからそっちの方お願い。」

「あ、うん。分かった。」


ふと思い出してしまった事を振り払うように頭を振ったらセフィアに心配されてしまった。

俺も突然セフィアがそんな事したら心配するけどさ。

でも今はそっとしといて欲しいです。


ギルド職員の方達も前回やったということもありよく分かんない、これどうしたらいいの? っといったこともなく速やかにテントの設営が完了した。

そういえば、駄々をこねると思っていた蒼井が大人しかったな。

それも早く済んだ理由の1つだとは思うけど……どうしたんだろ?


「てっきりまだ駄々をこねると思ったんだけどな。……どうしたんだ?」

「あんた、私のことなんだと思ってんのよ。一度受けた以上はちゃんと仕事するわよ。」

「それもそうか。」


最近はどうも下に見てしまうな。

これは関係が昔に近付いたせいで感覚まで昔に戻ってしまっているのかもしれない。

気をつけなくては。


「後は……ちょっと昔を思い出してね。ほら、昔はあんたん所とウチでキャンプに行ったりしたじゃない? あの時のことを思い出して、ちょっと懐かしくなったのよ。」

「あー、そういえばそんな事もあったなー。なんで行かなくなったんだっけ?」

「いや、そこはその、ほら、やっぱりそういう年頃な訳だし、何もないとしても恥ずかしいじゃない。それに、一緒にキャンプなんて行ってたら揶揄われるだろうから、その、私が行きたくないって言ったの。もし楽しみにしてたら……ごめん! 私のせいなの!」

「気持ちは分からなくもないし、気にしないでくれ。それにもう過ぎた事だ。」

「本当にごめん。」

「気にすんなって。それよりも、仕事に集中してくれ。」

「うん……。」


そんな理由だったのには驚いたけど、俺も揶揄われるのは嫌だったし、仕方ないか。

それに、もうどうしようもないし。

なら気にするだけ無駄というもの。

今が充実してるしそれで十分というものさ。


「セフィア。」

「ん? なーに?」

「ちょっと土魔法で作ってもらいたいものがあるんだけどいいかな?」

「いいけど、何を?」

「あー、列の整理に使う道具なんだけど、なんて言えばいいかな。まず円盤があって、その中心から棒が伸びてる。で、棒の先端付近に左右に伸びて上へ向かって直角に曲がる細い棒があるんだけど……。」

「うーん。いまいちよく分かんないや。」

「そうだよな。ちょっと待ってて。今絵に描くから。」


描いて見せてなんとか理解してもらえた。

1回目はサイズ感がつかめてなかったようで小さくて失敗だったけど、2回目以降は問題なく、それをひとまず10個作ってもらった。

後はストレージ内に常備してあるロープで括って配置する。

2個ずつのを3つ並べて2列作れるようにし、そして食事の受け渡しのテーブルに平行になるように横に広がらせる。

こうする事で左右に流れて人を捌けさせる事が出来るはず。

2個余っちゃったな。

ま、壊された時の予備として考えればいいか。


〜第三者視点〜


時間を遡り、狩猟大会が開催された直後のことである。

多くの冒険者が我先にと森へ向かう中に1人の少女がいた。

少女の名はシルヴィア。

銀髪にツリ目気味の赤い目をした中学二年辺りにかかる精神病の人達が好みそうな容姿をしている。

そんな少女はその見た目にそぐわない大剣を背に、たった1人で挑んでいる。

何故なら、彼女は人と接するのが苦手だから!

パーティ組むとかハードル高いから!


シルヴィアは名前を売ればきっと仲間になってくれる人が現れると信じて、大会2連覇を目指しアクセサリーのついた大剣を振るうのだった。

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