第710話 大変有意義な時間だった。的なお話

質問責めからの再現というなんともあれな事があった翌日。

今日は久しぶりの訓練なのだが……。


ーーザーッ


見事なまでの大雨。

視界の悪い悪天候下での訓練というのも悪くはないのだが、罠に対処する方法を学ぶというつもりだったからがっかり感は拭えない。

でもまずは、腹ごしらえかな。


朝食を終えて大雨の中をギルドに向かって歩く。

うーむ。

これは予想より酷いな。

この中では罠の対処法というのは無理があるだろう。

まあ、そもそも罠があるのはダンジョンの中なので雨が降ることはないんだから雨が降った時点で無しか。


やはりというかギルドには閑古鳥が鳴いていた。

冒険者のいい所。

基本自由に依頼を受けれるので雨が降ったら休める。

それでも来てる俺は一体……。

いや、訓練なんだけどね。


「おはようございます。今日はどうしました?」

「アデラードさんに呼ばれてるんだけど、どこにいるか知ってる?」

「アデラード様ならギルドマスター室にいると思います。」

「ありがとね。仕事がんば……あんまりないかもだけど、頑張ってね。」

「はい。」


仕事頑張ってと言おうとしたけど、人いないし受付の仕事があるのだろうか?

と思ってしまい、つい余計な一言を……。

でも、事実なんだよなぁ。


リナさんに言われた通りギルドマスター室に行くとそこにはバリバリと仕事をしているアデラードさんがいた。

………………。

えーと、俺は夢でもみているのかな?

一旦落ち着こう。

きっと、まだ寝ぼけているんだ。

ドアを閉めて再度開ければきっと普通のアデラードさんがいるはずだ。


「ここの所だけど、前回は仕分けにミスがあったよね? だから今回はこういう風に査定済みの物を置くスペース作ったらどうかな? そうすれば前みたいに取りちがえることもないと思うからさ。」

「そうですね。今回はそれで試してみましょう。」


やっぱりアデラードさんが仕事をしていた。

今日は雨でも降るのかな。

あ、もう降ってたわ。

それもドシャ降りで。


「あ、レント。よく来たね。ちょっと待っててね。今この仕事を終わらすから。」

「あ、はい。」


今、仕事を終わらすって言ったか?

本当にどうしたんだ!?

朝から真面目すぎるんですけど!?

とか考えている間にアデラードさんはガリガリとペンを走らせて何やら紙に書き込むとそれをエリーナさんに渡した。


「これで、大体の問題点はなんとかなると思うから後はよろしくね。」

「えーと、はい。分かりました。」


それを流し見るだけで十分だと判断するエリーナさんもすごいけどさ、あの2、3分で問題点とやらを書き出してその対策を用意するとかどんだけだよ。

本当に規格外だな。


「それじゃ、訓練と行こうか。でも外は雨だからまずは11階層以降の説明でもしようかな。レント達はこのダンジョンについてどれだけ知ってる?」

「どれだけって、誰も攻略した事がなくて、階層は50を越えてる。後、アデラードさんの話から11階層から罠が出てくるくらいです。迷宮都市について書かれた本を読んだことあったけど、序盤の方は描写が少なくてよく分からなかった。」

「そうなんだ。今後の楽しみもあるから詳しい内容は言わないけど、ダンジョンは10階層毎に内容が大きく変わるんだよ。11階層からはそれまでと違ってダンジョンは遺跡型となり、罠が出てくる。それと、薬草とかキノコ類なんかの採取系の依頼に適した物が一切生えてない。遺跡だからね。人の手が入っているような形状をしている性質上、それらが存在しない。代わりに罠があるけど。」


なんて物騒な代わりなんだ。


「遺跡型という事は罠もそれに合わせたものが出てくる。盗掘者対策の物だね。落とし穴とか吹き矢とか。後は宝箱にも仕掛けられるね。」


落とし穴か……そういえば、初心者ダンジョンで引っかかったっけ。

あの時はスライム塗れで気持ち悪かったなぁ。


「この時点で何か質問はある?」

「「「…………………。」」」

「無さそうだし、話を続けるよ。ダンジョンである以上は当然魔物も出てくるけど、このモンスターは基本的にそれまでの魔物の焼き増しで強さはあまり変わらない。11階層だとラットとかの最弱なのが出てくるから、それほど脅威にはならない。でも、魔物が脅威にならなくても罠があるから油断はできないよ。相手が雑魚だからって油断して罠にかかって死ぬ冒険者が毎年何人も出てるから。」


うわ。

やな死に方だ。

ラージラットと戦ってる際に罠にかかって死ぬとか間抜けすぎる。

そうはならないように注意しないと。


その後もアデラードさんのダンジョン講座〜遺跡編〜はお昼まで続いた。

長かったけど、大半有意義な時間だった。

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