第708話 幸せと言ってもらえて光栄です。的なお話
直ったカンナさんと共に食堂へと向かい、ドアを開けてすぐに驚いた。
なにせ、テーブルに並ぶ料理がすごく豪華なものになっているのだから。
「ミスト……? これは、一体……?」
「いえ、今日はおめでたい日ですからささやかながらお祝いをと思いまして。」
おめでたいって、ひょっとしてバレた?
でも何で……?
だってそういう時はいつも魔道具を……あれ?
使ったっけ?
あの時は確か誘われて、それでベッドへ…………あ。
使ってなかった。
使ってなかったよ!
そりゃバレるわ!
「そして今日からはこの者をレント様専属メイドとしてつけようと思っております。」
「はじめまして。リゼット・ジュミリナフと申します。よろしくお願いします、レント様。」
「なんで!?」
「レント様は我らの主人であるアデラード様の伴侶となるお方。であるならば、身の回りの世話をする者が必要となるのは当然の事かと。」
「でも、そんなの……えぇ?」
確かに将来的にはそうなるつもりだよ?
でもだからって今すぐにというわけではないし、それで専属メイドとか言われても困るんですけど!
そもそも他の嫁達のことはどうするつもりなんだって話なわけで……。
「ああ。彼女の種族が気になるのですね。」
違う!
いや、気になるのは間違いないけど、マイナスな意味で気になるのではなくて、ただ単に初めて見るから気になるだけだし。
というかそれが気になってるわけじゃない!
「彼女は黒エルフ。南方大陸に起源を有するエルフです。南方大陸は日差しが強く、身を守る為に黒くなったと言われております。なので黒エルフが邪な存在だというのは噂に過ぎません。それは今後彼女と接することで理解できるかと思います。」
へー。
この世界のダークエルフは黒エルフっていうのか。
それに黒さの理由も日焼けのような、紫外線を防ぐ為にメラニンを作るみたいな感じで黒くなったのか。
「いや、種族がきになるわけではなくて……。」
「では彼女がお嫌いと?」
「そういう事でもないです。」
白銀の髪に紫の瞳。
そこに褐色の肌が合わさっているのはまさしくダークエルフという感じで、好意的に見ることはあっても嫌う理由にはならない。
「ただ、突然専属なんて言われても困惑するだけという、恐縮というか……。」
「ああ、そういう事ですか。それならご安心を。普段から付いて回るという事でありませんし、彼女にはレント様が当家に滞在する際に部屋の掃除や洗濯などを彼女が行うというだけですから。それと、カンナはレント様のしりあいですが、まだ仕事を教えている段階で専属としての仕事を任せられませんから。」
「はぁ。まあ、そういう事なら。」
「ストーップ! レント! そういう事ならじゃないから! ミストも! そもそも、いつの間にその子を雇ったのさ!」
「レント様がアデラード様の婚約者候補となった時からこの日の為に鍛えてきました。アデラード様は帰ってこないということもよく有りましたから気づかなかったようですが、普通にいましたよ?」
「ぜ、全然気づかなかった……。」
「ここ最近はいつも浮かれてましたから、それも仕方ない事かと。」
よく来てたからね〜。
それにここ最近は結構忙しそうにしていたし、その上で浮かれていたのであれば、気づかなかったとしても不思議ではない。
「それに、彼女に夜の相手も任せるというつもりもありませんからご安心ください。彼女自身は構わないそうですが、レント様が望まないでしょうし。」
「そういう事なら……仕方ない、か。リゼットと言ったね? レントの身の回りのこと、任せたからね。」
「はい!」
「さて、それじゃ朝ごはんにしようか。ユースティア子爵達の見送りもあるから急がないとね。」
「あ、そういえばそうだった。」
「いや、アカネが忘れちゃダメでしょ。」
「そうですけど、幸せでつい……。」
「気持ちは分からなくもないけどね。」
幸せと言ってもらえて光栄です。
その後、気持ち速めに朝食を食べ終えた俺達は若干慌てつつユースティア子爵達を見送りに向かった。
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