第678話 疲れているらしい。的なお話
〜アカネ視点〜
レントは、日本との繋がりを、私と接する事で感じていたみたい。
ユウキがいるから私である必要はないけど、聞いた話ではレントとは中学からレントがこっちに来るまで疎遠になっていたらしいから、話が弾みにくいのかもしれない。
普通に話してるようには見えたけど。
でも、その気持ちはちょっとだけ分かる気がする。
私も、レントと日本の話をしていると昔が懐かしくなる。
この時間が続けばと思うこともあった。
私は生まれ変わったのはもう15年も前だけど、レントにとってはまだ2年も経っていない。
なら、私よりも日本の事が恋しくなるのもおかしくはないのかもしれない。
でもそのあとに告白して来るとは思わなかった。
正直驚いた。
レントの考え方は知っている。
自分は既婚者だから、セフィア達に操を立てているのか、自分から告白しない。
レントの事を好きになったのなら、返事をしたくなるようにさせるべきだというもの。
だからこそ私も頑張っていたわけだけど。
そのレントが自分から告白して来たのだ。
多分、これはレントのけじめ。
自分が酷い事をしていたと自覚して、それで返事をするのはおかしいと。
だから、自分から告白することにしたのだろう。
私の答えなんて決まっている。
「全く……言ったわよね。私はあなたの全てが好きだって。レントがメンドくさいのなんて最初から分かっていたわよ。異世界に転移して、いろんな女の子に好かれてもウダウダと考えるような人だからね。一夫多妻が認められる世界で、実際にハーレムが作れる男子高校生が二つ返事しないなんてそうそうないわよ。この世界のルールを受け入れつつも自分の考えを曲げないような、不誠実で誠実なあなたが好きなのよ。だから、こちらこそ、付き合ってください。」
付き合える嬉しさからか、目元に涙が浮かんできた。
しかし、その涙が流れ落ちることはなかった。
レントが突然抱きしめてきたから。
そして、レントにキスをされる。
唇と唇が触れるようなキス。
その時間はほんの数秒のはずなのに私には数分にも感じられた。
レントと離れた時にふと思った。
そういえば、私はこれがファーストキスだと。
ファーストキスはレモンの味なんて話を日本にいるときに聞いたことがあったけど、突然の事で味なんてわからなかったわね。
でも、そっか、私、レントとキスしちゃったのか……。
「えへへ……えいっ!」
「うわっ! あ、アカネ?」
「これくらいいいでしょ。だって私達、恋人なんだからさ。」
キスをしたという事がすごく嬉しくなって、ついレントの腕に抱きつく。
きっと今の私はこれまでにない笑顔をしている事だろう。
そんな私は、私達は腕を組んだまま宿に帰った。
◇
「あ、お帰り。その様子だと、上手くいったみたいだね。」
「まあね。」
「まあ、そうなっちゃうな。」
「朝帰りは?」
「しないから。」
「うおおおおおおおおおお〜〜〜ん!!!」
「あなた、うるさいわよ。」
「うっ!」
泣き喚くお父さんを見てお母さんがトドメを……じゃない。
一撃入れて静かにする。
本当に、あの事件以降お母さんはたくましくなったわね。
ひょっとしたら元からなのかもしれないけど。
「おめでとう、アカネ。幸せになるのよ。」
「うん。ありがとう、お母様。」
お母さんからの言葉を皮切りにセフィア達がおめでとうと言ってくる。
それが嬉しい。
そのまま夕食となるけど、酒宴って程じゃないけど、お祝いしてくれた。
ちなみにお父さんは一度も起きなかった。
「あの、お父様は……?」
「疲れてるのよ、きっと。」
疲れているらしい。
結局、お父さんは気絶したまま馬車で止まっている宿に連れていかれた。
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