第668話 ……大丈夫だよね? 的なお話

〜アカネ視点〜


「よろしくお願いします!」

「こちらこそお願いします。」


何故だろう。

何故か今、セフィアがお父さん達の護衛としてついてきた騎士の1人と模擬戦を始めている。

決闘騒動はどこに行った!?

そんな2人をよそに、お父さんはこっちに来てるし。


「アカネ! それから、貴様も! ディーノに勝ったからといい気になるなよ! 所詮ディーノは護衛の中でもナンバー4でしかない!」


四天王か!


「それにあんな奇策、一回しか使えぬわ!」

「ユースティア卿……何を言っているのかな? 奇策だろうとなんだろうと、勝負は勝負。それに引っかかる方が悪い。そもそも、奇策だからと駄々をこねた所でもしもこれが決闘ならどうなっていたか……分かるよね?」

「しかし、今回のはあくまでも模擬戦です。それに2度3度と戦えばディーノが勝つのも分かりきっています! 奇策に頼らねばならぬ者にアカネを渡すことなど出来るはずがないでしょう!」

「はぁ……何度も言わせないでくれる。いくら駄々をこねた所で、勝負は勝負。勝ったのはレントなんだから、いい加減にしなさい。それに、そんな無様な姿を見せていると……娘に嫌われますよ?」

「ッ!?」


ーーバッ!


アデラードさんのそのセリフに、お父さんは目を見開き、そんなことないよな? と言わんばかりの表情でこっちを見てくる。

というか、そんな事にも気づかなかったの?


「そんなの……嫌いになるに決まってるじゃない。」

「よーし! レント君と言ったな! 君は今日から私の息子だ!」


清々しい程の手の平返し……。

お父さん……なんか、キャラ変わった?

いや、親バカって基本、から回るポンコツに成り下がるものだったわね。


「残念ながらまだ候補よ。そうよね、レント?」

「え、ああ。そうだな。」


レントも戸惑っているが、それも仕方ない。

というか、早くデートしたいわね。

諦めるつもりはないけれど、早く恋人になれるに越したことはないもの。


「そ、それよりも、なんで今セフィアが模擬戦してたんですか?」

「ん? いや、どうせならみんなも騎士との戦闘経験を積んだほうがいいかなって思って。」


ちなみに、結果はセフィアの勝ち。

その後もそれぞれ人を変えて模擬戦を繰り広げて次は私の番となった。

ちょっと納得いかないところもあるけど、いい経験になるのは間違い無いので、頑張ろうかな。


「私の相手はクーデルなのね。」

「はい。」


クーデルは盾を使わず騎士剣のみのスタイル。

片手剣よりも大きく重いから注意が必要ね。


「では、始め!」


私の武器は細剣。

それに対してクーデルのは騎士剣。

なので打ち合いになればどう考えてもこちらが不利。

だから、私は剣を合わせず突きと足を使って出来る限り近づかせないようにする。

そうすればきっと焦れて強引に攻めて来ようとするだろう。


「はあっ!」


ほらね。

普通の戦闘ならば、守る対象が後ろにいるのならば、こんな行動はとらないのだろう。

しかし今やっているのは模擬戦。

守りきれば勝ちの護衛とは違う戦い方。

それに、先に当てれば勝ちというルールでは素早さと手数が多い私の方が有利。

それ故の焦りから、こうして大振りになってしまっている。

それを躱しつつ踏み込んでやれば、この通り。

あとは腕を伸ばすだけで貫ける位置に立つ事になる。


「参りました。」


加護のおかげでだいぶ余裕を持って戦えたわね。

そう考えると……ちょっとマズイかも。

ステータスを下げる指輪をつけているためにレントの動きが1番悪く見えてしまう。

そうなったらまたお父さんが何か言い出すかもしれない。

私には嫌われたく無いから、大丈夫かもしれないけど、心配だわ。

……大丈夫だよね。

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