第602話 開発できるものじゃないと思うんですけど? 的なお話

そんなこと話してるとどこからかダダダという音が聞こえてくる。

なんの音だろう?


バンッ! と、音とともにドアが開かれ、そこからアデラードさんがやって来た。


「ちょっと大丈夫!? 何かあった……の? って、これ、どういう状況?」

「あー、えっとですね、なんだかんだあってアイリスさんとリナさんにお呪いをかける事になったというか……、レイカーさんに激突されて気絶したというか……。」

「は? 気絶!? というか、お呪いって…………あー、そういう事……。そっかー、私2人に先越されちゃったんだー。」


あー、まあ、確かにアデラードさんは以前お呪いについて聞いてたことあったっけ。

それでナニかあったと察したと。

でもリナさんはまだですよ?


「実際はリナさんはまだですが、それも時間の問題ですからね。」

「…………そうですか。ところで、私はまだ……ですか?」

「はい。まだですね。それは蓮斗さんの成長次第です。確か、蓮斗さんとはそういう約束でしたよね。蓮斗さんが弟子として鍛錬し、ランクを上げ、それからしばらく経ってもあなたにそういう人がいなかったならば、蓮斗さんが貰ってあげるという。」

「そうですけど……でも、私は蓮斗以外考えられないし!」

「それは時間が証明してくれます。実際、このお呪いは枷でもあるのですよ。なので、まだ確定していないあなたに施すわけにはいかないんですよ。」

「………分かりました。ほら、レント! 早く訓練行くよ!」

「えっ!? ちょっ、待ってください! まだ紅茶残ってるから!」


アデラードさんは早く俺に昇格して欲しいのだろう。

そのために俺を引っ張っていこうとするが、まだ俺は紅茶を飲み終わってない!

この紅茶、結構いい茶葉使ってるんだよ!

そんな勿体無いことしたくない!


「本当に待ってくださいって! それにまだポ◯リ作ってないし!」


ピタリと、アデラードさんが動きを止める。

そして手を話してポツリと。


「ポ◯リ……よろしく……。」


紅茶を飲む時間、ゲットだぜ!



「レント! もっと左側を意識して! 攻撃が右から来ることが多いよ! それに、せい!」

「あぐっ!」

「防御も遅い。利き腕だからどうしても右の方の反応が速くなるのは仕方ないけど、そこの差を埋めないと弱点になるよ。」

「は……はい……。」


ひー、しんど……。

朝のゴタゴタの影響での遅れを取り戻すためか、速くランクを上げて結婚するためか、ランニングや準備運動もそこそこに、早速模擬戦をすることに。

それはいい。

遅れを取り戻したいと考えは分からなくもないし、結婚したいというのも……まあ、分かる。

でも、何も30分間ずっとアデラードさんと戦わなくてもいいと思うんだけど……。

ちなみに、みんなは実力が近い者同士でやり、完全後衛型のルナはルリエ、蒼井の所に混ざってる。


「模擬戦はここまで!」


俺、アデラードさんとしかやってないんだけど?


「次は決め技の練習をするよ。」

「「「決め技?」」」

「そう。奥の手、切り札、必殺技。そういう類の技。レントやアカネ、アレクシアなんかは必殺の一撃みたいなのがあるけど、他のみんなは無いよね?」


言われてみれば、合成魔法とかそういうのはあるけど、セフィア個人で、と聞かれると無い気がする。

もちろん、スキルのアーツなんかはカッコいい連続技とかあるけど、それはアーツだから他の人も使えて、決め手には欠ける。

リリンも高速で動いて急所を一撃ってのも、ある意味スゲー奥義ではあるんだけど、短刀という武器の性質上、どうしてもリーチが短くなる。

大型の魔物だと急所を突けない可能性が出て来る。

ルナはもちろんのこと、ルリエやユキノ、蒼井にレイダさんもアーツ以外の技をあまり見ない。


「いざという時に、そういう技があると無いとじゃ、生存率が大きく変わる。必殺にならなくても、大威力の技でダメージを与えられれば相手の動きが鈍るからね。そういうわけで、みんなも何か決め手となる技を開発しよう。あ、もちろんアーツは無しね。同じスキルを持ってる人から聞いたり実際に体験してたりすると対応されたりするからね。」


SA◯でキ◯トが似たようなことを言っていたな。

対人戦はあんまりしたくはないが、それでも盗賊と戦ったりすることもあるから、その対策は必要か。


「あ、レントやアカネ、アレクシアは既にあるけど、それとは別の技を開発してね。こういうのは多くある分には何も困らないからね。」


………まじで?

こういうのって、そうホイホイ開発できるものじゃないと思うんですけど?

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