第543話 あれ出来るようになりたい。的なお話

みんなのところへと合流し調査を続ける。

そういえば………見つかるのは足跡と枝………こんなに分かりやすくあるものなのか?

何か企んでいるのならこんな分かりやすい物を残すだろうか?

もしや、わざと分かりやすくして追跡者を誘導している?

いやいや、アデラードさんは分かってるはずだよ。

それでも手掛かりがそこにあるから敢えて突っ込んでるのだろう。

俺がとやかく言うことじゃない。


今は調査を続けよう。

お、野イチゴ見っけ。

…………いやいや、そんなのは見つけても何にもならんだろうに。


「ストップ!」


野イチゴを見つけたと思ったらアデラードさんが待ったをかける。

え? 野イチゴ食べたかった?


「そこ!」

「ぐえっ!」


突然アデラードさんがナイフを木の上に向けて投げるとおっさんが落ちてきた。

何事? とはならない。

ここまで分かりやすい痕跡を残しているのだから見張りの1人もいるだろう。

俺の悪意感知にはなんの反応もなかったが、これはあくまでも悪意に反応するのであってこういうただの見張りには反応しないのだろう。

これは盲点だったな。

多分これを見越してアデラードさんはこんな分かりやすい痕跡の跡を追っていたんだろう。

!?

そういえばリリンの気配察知には?


「リリン、分かってた?」

「もちろん。」

「教えてくれればいいのに。」

「アデラードが気づかないわけないから。あれは規格外。」

「いや、規格外なのには同感だが、そう言う言い方はどうかと思うんだけど?」

「だ、誰が言うか……ぐあっ! て、てめぇ……」

「アデラードは婚約者(仮)。でも私は嫁だから。」

「確かにそういう見方ならリリンが立場は上だけど、今は冒険者として活動してるんだから。」

「むぅ。」

「や、やめ……関節はそっちには曲がらな……ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「天装さん達もいるんだし今は気をつけような。」

「ん。」

「そういえば、さっきそこで野イチゴ見つけたんだ。みんなのお土産にちょっと採ってこよう。」

「分かった。」


時折変な声が聞こえるが、気にしなーい気にしない。

視界の端に切り傷まみれでひじ関節が変な方向を向いたおっさんなんか写ってない。

俺には何にも見えないぞ。


「甘酸っぱくて美味いな。」

「ん。美味しい。」

「いや、何目を逸らしてんのよ……。いずれ私達もしないといけなくなるかもしれないのよ、あれ。」


前に盗賊のおっさんを脅したことはある。

でも、実際にはやってないから。

あんな斬れ味の悪いナイフで斬りつけたり、ひじを変な方向に向けたり出来ない。

あ、よく見たら爪もない……。

異世界、怖いなー。


「情報を吐いたよ。といっても大した情報は持ってなかったけど。やっぱりこの先にジェイル家はいるみたい。ここらの魔物をテイムしているって。拠点は湧き水の側にある洞窟を使ってるそうだって。これからはそこを目指して行くよ。ただ、もう遅いから今日は付近で野営をするよ。だから野営に良さそうなところを探して。」

「このおっさんはどうするんですか?」

「んー。もう用済みなんだけど、ここで殺してアンデットになられても困るし、火葬しようにもここじゃあね〜。というわけで。」


ーーパチンッ!


アデラードさんが指を弾くと途端におっさんは倒れこみ寝てしまった。

漫画で見たことある!

スッゲーファンタジーだ!


「これで丸一日は寝てるから。じゃ、野営場所でも探そうか。」


眠りの魔法はやっぱり闇属性なのだろうか?

でも指パッチンで眠らせるのはカッコいいな。

俺もあれ出来るようになりたい。

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