第487話 地味に痛いんだけど。的なお話
リリンが示した方角を向いて武器を抜く。
ザーッという雨の音がする。
雨の音のせいで魔物がどこにいるのか、方角だけしかわからない。
いつ出てくるのかと思うと緊張する。
と思ってたらなんかズシンズシンって音とほんの少しの振動が……
「くる。」
リリンの声で身構える俺達。
そして木々の間からにゅっと恐竜の顔が。
「タイラントグランドレックスか。こりゃまた妙なタイミングで出たもんだ。というか、なんでここにいるんだろ?」
「ちょっ!? タイラントグランドレックスってAランクの魔物ですよね!?」
「そうだけど、そんな問答してる暇ある?」
「へ? って、総員、戦闘開始ー!!!」
アデラードさんに言われてタイラントグランドレックス……恐竜でいいや。
そいつがこっちを見てた。
「GYAOOOOAAAAAーーー!!!」
なんつー声だ。
鼓膜が破れるかと思ったよ。
「まずはみんなでやってみて。危なくなったら助けるからさ。」
スパルタ過ぎでしょ!!
こいつは格上で対して俺達の中で一番高くてもBランク。
そしてそのBランクは俺とセフィア、リリンだけでみんなはCランク。
アカネはC+だから準Bランクと言えるかもだがそれでもこいつと同格なのは居ない。
勝てる気がしねー。
「ルリエ、シア、ルナ、蒼井、ユキノは後衛だ。他は俺と前衛を頼む。」
勝てる気がしなくてもやるしかないのだ。
「待て! 私も前衛で……「お前は加護持ってないんだぞ! ただでさえ危険なのに、そんなやつを前に出せるか!」」
恐らく、ユキノが一番ステータスが低い。
俺達は加護を貰ったタイミングはそれぞれ違うが、それでも加護によるレベルアップ時のステータス上昇量増加効果によって普通よりも強い。
それに対してユキノは加護を持っていない。
そんな奴を2つも格上の魔物の前になんて出せるかってんだ。
そして恐竜が完全に姿を現した。
見た目はティラノサウルスに似てるが一部違うところがある。
それは前脚が大きく、肘の部分に謎の突起物がついてるところだ。
あ、木に引っかかってる。
って、へし折って出てきたよ!
やっぱAランクの魔物なんだな。
その恐竜は先制攻撃とばかりに石の槍をいくつも飛ばしてきた。
それを時に躱し、時に斬りふせてるとそのまま恐竜は突進してきた。
「いっ!?」
慌てて右に避けるが左腕が突起物に擦れる。
その突起物は鱗に覆われているからかぞりっとした感覚が。
「あぐっ!」
「レントッ!」
左腕を見てみれば、血みどろでかなりエグい。
ただでさえかなり痛いのに、雨がしみてなお痛い。
ポーションで回復したいところだが、恐竜はそんな暇をくれるわけもなく、回転しながら振るわれた尻尾を屈んで躱す。
「回復させてねぇってか。いいよ、やってやるよ!」
ウルなんとかの剣に炎を纏わせる。
雨が降っているからって燃えないわけじゃない。
普段よりも多めに魔力を流することで雨にも負けず炎を滾らせる。
「やあぁぁぁぁぁぁ!」
「ふっ!」
セフィアが右から双剣による回転斬りをしながら恐竜の横を駆け抜け、リリンが反対の左から加速を用いて一閃する。
そして俺は正面から唐竹……上段からの一撃を放つ。
しかし、突起物によって防がれてしまった。
ただ、恐竜も無傷といかず、ウルなんとかの剣が突起物の半ばまで埋まっている。
「GRUAAAAAAAAA!!!」
上から声を聞き、咄嗟に剣を手放してバックステップするとさっきまでいた所に何かを吐きかけていた。
あれは、砂と風?
……ブレスか!
砂とか、もろに食らったら体中削られてしまう!
「レント、横に避けて! …………烈空旋斬!」
アカネの声に従い横に避けると細長い風の渦を纏った剣を振り下ろされた。
「GYAOOOOOOOO!!!」
が、恐竜が出現させた土の壁によって防がれた。
惜しい。
それはそれとして、風に飛ばされた水が地味に痛いんだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます