第461話 アデルは……無理ですね。的なお話
「こんばんわ、リナさん。」
「あ、レントさん。どうしたんですか? 今日は依頼を受けていなかったと思うのですが。」
「今日はこれを渡しに来ました。」
昼に出来たばかりのブレスレットをストレージから取り出してそのまま渡す。
「これは?」
「ほら、昨日言ってたじゃないですか。何かプレゼントしてくださいって。だから今朝から始めて今日の昼に出来たばかりなんですよ、それ。」
「へっ? 手作りなんですか、これ!?」
「はい。元々は結婚指輪を作りたいって理由から始めたんですけど、それから偶に作るようになったんですよ。」
「このレリーフとかお店で売ってる物みたい……。」
「気が向いた時でいいんで、つけてくださいね。」
「そんな! 毎日つけます!」
「でも服とかとのバランスもあるからそんな毎日じゃなくていいんですよ?」
「いいんです。なんだったらこれに合うように服を選びますから!」
「そこまでしなくても……」
何故そこまで……なんて考えなくてもいいか。
告られたし。
そういうことだろう。
「まあ、つけてくれるなら作った甲斐があったよ。それじゃあ、俺はこれで。」
「あ……」
「ん?」
「い、いえ、また明日……」
「はい。また明日。」
リナさんが何を言おうとしたのか………それは答えを聞きたかったのだろう。
可愛いと思う。
好感は持ってる。
でも、まだ恋愛感情ではない。
正直に言えばいいのに………やっぱり、傲慢な言い方をしたくないんだ。
本当は、みんな幸せにしてやる! なんて言ってみたい。
でも、そんな甲斐性が俺にあるとは思えない。
本当に、俺はどうしたいんだろうな。
〜エリーナ視点〜
集計結果の確認も残り少しになり、ちょっと休もうと思ったのですが、なんですか、あれ。
いつも元気なリナの表情が暗いなんて。
「はぁ〜〜〜〜〜〜。やっぱり、聞けば良かったかなぁ?」
「どうしたんですか? 随分と長い溜め息をついていましたが。」
「あ、エリーナ様……い、いえ、何でもないです。ただ、ちょっと疲れただけで。」
「そうですか? 何か悩みがあるなら言葉に出してみてはどうでしょう? 言葉にすることで考えや気持ちを纏める事が出来たりするそうですから。」
「そうです……ね。えっと、実は昨日、ついレントさんに告白したんですよ。でもその時はポロっと言ってしまった感じで、私、逃げちゃったんですよ。それで、返事を聞けずじまいで、でも、その答えを聞くのが怖くて……。」
驚きました。
まさか、そんなことになっていたなんて。
それに、こんなに若いのに………私がこの年の頃は異性には全く興味は無かったのに……これも時代なのでしょうか……。
「…………………。」
「あの、エリーナ様?」
「! あ、そ、そうでしたか。えっと、それで、どうでしたか? 言葉にしてみて。」
「やっぱり知るのは怖いです。でも、怖いって事はレントさんの事がちゃんと好きなんだと思いました。好きじゃなきゃ怖くなったりしないですから。なので、今はこのままでいいかなって。ほら、まだ知り合ってあんまり経ってませんし、だったらこのまま有耶無耶のままにして、私のことを好きになってもらったりとか、考えちゃったり……して…………ぐすっ…………本当は、無理なんじゃないかなって思ってるんです。レントさんは全然気にしてるようには、見えないし、既にかわいい奥さんとかいるし、でも、好きになっちゃったから、どうしても諦めきれなくて、私、どうしたらいいんでしょう……」
困りました。
私は残念な事に恋愛経験が乏しく、こんな時はどう答えればいいのか、全く見当もつきません。
アデルは……無理ですね。
あの人の恋愛経験の無さは私以上ですから。
「えっと、そうですね………レントさんには既に奥さんがいます。それはその通りですが、1人ではなく3人です。ならば、その4人目として加わる可能性が無いわけじゃないと思います。だから簡単に諦めたりせず、4人目になれるよう努力してみてはどうでしょう? 少なくとも、今無理かもと諦めるよりかはいい結果が出る確率は上がると思いますから。」
「そう………ですよね。ありがとうございます。私、頑張ってみます。」
「はい。」
元気が出たようでなにより。
ですが、本当にあれで良かったのでしょうか?
不毛な努力を勧めたことにならなければよいのですが。
〜レントに戻ります〜
リナさんについては答えは出なかった。
だったら考えてても仕方がない。
なるようになるさ。
いつも通りの未来に丸投げ。
そもそも俺が断っても向こうが諦めなかったら俺にはどうしようもないのだから。
「おかえり、レント。レミナさんの結果はどうだった?」
「2位だった。」
「そっか。2位も凄いよね。」
「だよな。次はアカネ達の番か。いい結果だといいな。」
「そうだね。」
宿に帰ってお喋りしたり夕飯を食べたりして後は寝るだけ。
「待ってたよ、ご主人様。」
そう思っていたのだが、セクシーな服に首輪をつけた嫁達がスタンバッていた。
よく見ればあのネームタグはリリンが作ってたやつだ。
リリンの買い物ってあの首輪だったのか。
「今夜の私達はレントのペット……にゃん。」
リリンのその言葉に理性が吹き飛び、気づけばルパンダイブしてた。
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