第450話 だから来た。的なお話

お昼ラッシュを終えると途端に暇になる。

お昼を食べに来たついでに狩った魔物を置いていく冒険者の多いこと。

その関係で残り2時間くらいになっても誰も来ない。

そろそろ来ると思うんだけど、そうじゃないなら5時まで来ないと思う。

ラストスパートをかける際に身軽にしようとしないならそのまま戦うからな。

お、来た。


「すいません! これお願いします!」


またレミナさん達だ。

これは本当に優勝もあり得るぞ。


「あ、レントさん。お疲れ様です。」

「ラストスパート頑張れよ。」

「はい!」


駆け足で通り過ぎていくレミナさん達に一声掛ける。

青春って感じだな。

歳はそう変わんないだろうけど。


レミナさん達に続くように何組かの冒険者パーティが駆けていく。

しかし、楽しそうだな。

カインではこんなイベント無かったし、駆け出しの頃にこんなイベントがあったら、時間配分とかスタミナとかを考えながらセフィアとリリンと一緒に駆けていたんだろうな。

あー、もー!

次は2ヶ月後だし、それもBランク級でやるかも分からない。

やったとしてもその時までBランクでい続けられるとは限らない。

何らかのイレギュラーがあってそれに対処したら昇格って事もまたあるかもしれない。

というか、そんなのばっかだ、俺。

アデラードさんが訓練の最終試験とかいってAランクの昇格試験を受けさせられるかもしれない。

そう考えると、やっぱり楽しそうだな〜。

まるでレクリエーションだ。

ガチのウォークラリーみたいなさ。

まあ、やってる事は物騒だけど。

なんせ狩だから。

でも目標に向かってがむしゃらに頑張るってのは楽しそう。

景品も出るしさ。


そんなことを考えられるのも暇だから。


「お疲れ、レント。ちょっと休憩したら。僕達が代わりにするからさ。」

「ん。」

「いや、そう言うセフィア達もずっと調理や配給してたじゃん。」

「でもそれから少し休めたから。片付けはギルドの職員の人達がやってくれたからね。」

「それを言うなら昼の時に俺も休めたし…………というか、やる事がないっていうか……」

「あー。何もないからね。」

「何もないのはいいこと。」

「それはそうなんだけど、こっちとしては暇すぎて辛いんだよね。眺めることしかできないし。」

「そっかぁ。」

「実は私達も暇してた。だから来た。」

「ちょっ、リリン!? それは内緒って……」

「ぷっ。あははは。なんだ、そうだったのか。じゃあ、一緒にやるか。」

「そうだね。」


アデラードさんから何か言われればそれに応じるけどそうじゃないからな。

それに警備を頼まれてるし、現にこうして本部のテントの前で警備してるし。

ちょっと駄弁ってるけど。


そうして今日の狩猟大会は終わりの時間となった。


「さすがにこれだけ人数がいると査定に時間がかかる。だから申し訳ないんだけど、結果は明後日の午後5時とさせてもらう。100人をゆうに超えてるし。」


ありゃ。

まあ、そりゃそうか。

100人を超す冒険者が狩ったとなればそれなりの数になるよな。

レミナさん達がどうなったのかちょっと気になったんだけど仕方ないか。


「それじゃ、帰ろうか。何もないだろうけど、帰るまで気を抜かないようにね。」


テントを片付け来た時と同じように隊列を組んで迷宮都市まで帰る。

ところで、なんでテントを片付けたんだろうか?

明日もあるしそのままでもいいと思うんだけど。

ここなら魔物なんて滅多に現れないし盗賊が隠れるなんて事もないと思うんだけど。

でも行きで私語が五月蝿いと注意されたから聞きにくいな。

明日覚えてたら聞こう。


そうして無事に帰ったんだが、蒼井達というか蒼井が今日の事をやたらと聞いてくる。

どんな段取りとか、どんな場所だとかそういうの。


「いや、それは言えるわけないだろ。それに、今日のはEランク級のだ。明日も制限時間が同じとは限らないし場所だって変わるかもしれないだろ。」

「そっかぁ。残念。聞ければ明日が有利になると思ったのに。」

「ちゃんと公平じゃないとダメだろ。」


でも、そっか。

場所を変えるからテントを片付けたのか。

まあ、あそこは安全だけどCランクの魔物が出る場所からは少し離れてるしな。


そして明日に備えて夕食をがっつり食べてゆっくりと寝る。

今日はリリン達に襲われなかったし。

…………………普通、逆じゃない?

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