第444話 そんなんでいいんですよ。的なお話
何にも決まってなくても時間は進むわけで、早速狩猟大会の場所まで移動することになった。
エリーナさんの指示で話し合いの続きは移動しながらとか、現地に着いてからということになった。
まあ、初めての試みだからあまり予定を狂わせたくないんだろう。
街道を移動しているがこんな大集団の前に魔物が現れるはずもなく平穏な時間が流れ、話し合いも和やかに進む。
「君達も調理を担当するのか。その時はフランベルをよろしく頼む。この子はそれほど強くはないのでな。」
「分かりました。」
「だが、その代わり料理の腕は凄いぞ。実家のお抱え料理人の娘でな、幼い頃から教育されてきたからかその実力は親にも引けを取らない。それだけじゃないぞ。冒険者として各地に赴きそこで得た食材を使う事でレパートリーを増やしてきて、今ではレパートリーの数では親を軽く越してるはずだ。その腕で振るわれる料理の数々は素晴らしく、その意味では料理人として親を越してるといっても過言ではない。」
「そうなんですか。だったら何か学べることもあるかな。」
前言撤回だ。
話し合いじゃなくて話だ。
でも和やかに進んでることには変わらない。
セフィアも新たなレシピとの出会いを期待して目がキラキラしてる。
うん。
かわいい。
リリンもぱっと見は表情が変わってないように見えるが、俺には分かる。
あれは興味津々な顔だ。
かわいい。
「なんかごめんね。これじゃ全然話し合いにならないよね。ナタリアはフランベルの料理のことになると暴走しちゃって、それ以外は問題な…………大きな問題はないよ?」
「……なんで言い直したんですか?」
暴走してるらしいナタリアさんについて謝ってくるルキノさんだけど、謝りきれてない。
多分この人はあんまり嘘がつけないんだろうなぁ。
だからこその苦労人なんだろう。
適当に煙に巻くことも出来ず真面目に対応して、ナタリアさんにも振り回されて、副リーダーとして面倒ごともこなす、と。
それで苦労人と呼ばれるようになったんだろうな。
多分。
「嘘つけない人って、よく言われません?」
「言われる、かも。」
「やっぱり。まあ、話し合いって言っても現地に着いてからの方がいいと思うんで別に構わないんですけどね。それに、嫁達が楽しそうなんで別にいいかなって。」
大事なのはそこだよね。
嫁達が幸せかどうか。
「そんなんでいいんですか?」
「そんなんでいいんですよ。かわいいし。」
「まあ、確かに、かわいいですね。」
「でしょ。」
嫁の話はこれくらいにしとこうかな。
語れと言われれば際限なく語ってしまいそうだけど、そんなに惚気られても困るだけだろうし。
「そういえば、ポーターって何をやる人なんですか? ウチには居ないんでよく分かんないんですよ。」
「ポーターってのはね、簡単に言うと荷物の運搬を担当してる人の事なの。私がアイテムボックスを持ってるけど、必ず一緒にいるわけじゃないし、はぐれた時に荷物は何人かで分担して持ってた方が生存率が上がるからね。それに……ナタリアがベッドが無いと寝れないって言うし、テントは必要って言うしで、予備がないと……」
「あー、なるほど。」
いくら冒険者になっても、元の生活から差が出過ぎるのには耐えられないってことか。
子爵令嬢だから天蓋つきのベッドとかありそうだし、メイドもいるだろうし。
俺はそう言う小説を読んでたからそういうもんだと耐性があったし、憧れもあったから大丈夫だったけど。
「そっちの他のメンバーってどんな人? パーティの内のBランクの3人ってギルマスが言ってたから他にもいると思うんだけど。」
「貴族の子がいるってのは言いましたよね?」
「うん。」
「その子は今C+で他にもう1人C+がいて、後5人がCランクです。」
「結構強いんだね。でも、あんまり噂とか聞かないんだけど、どうしてかな?」
「こっちきて日が浅いからじゃないですか? 後、あんまり派手な依頼とか受けてませんから。ダンジョンも………あんまり潜ってないし。」
「あ、そうなんだ。」
「それに、最近はアデラードさんの弟子になったんで長い期間不在というのはそれはそれで怖いかなって。」
「あー、なるほど。………ちょっと気になったんだけど、どうやってギルマスの弟子になったの? 頼んだけど断られたって人一杯いるし、ナタリアもその口だしね。」
「恋人がアデラードさんのはとこだったんですよ。その縁がきっかけですね。弱い奴にはとこは任せられないーって。」
「恋人!? お嫁さんがいるのに!?」
「え、ええ。」
「「「「なんだとぉ!?」」」」
「あんなかわいい嫁がいて更に恋人とか、ふざけんなよ!!」
「そうだそうだ! 兄さんなんて、ルーカスはいい人だし友達だけど、恋人としてはちょっと……って何回も言われてるのに!」
「その通りだ! ………って何言ってんだお前!!」
「そこ、うるさい! Eランクの子達が一杯いるんだから騒ぐんじゃないの!」
周りが騒ぐからアデラードさんに怒られてしまった。
それはそれとして、ルーカスさん………ドンマイ。
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