第413話 すごく誇らしい。的なお話

「どうなってんの!? この間と何にも変わってないじゃない!?」


訓練場に連れてかれて早速模擬戦をしたのだが、一撃もかすらせる事なく伸されてしまった。

それを見た上での発言なのだが……全くもって、言い訳のしようもありません。

訓練目的で魔物と戦ったけど手頃の相手がいなかっただけならまだ言い訳できたんだけど、包丁とかを作るのに夢中になってました〜、なんて言えるわけがない。

言ったところで怒られるのがオチだ。


「魔力操作の練習は流石にちゃんとやってたよね?」

「それはまあ……一応。」

「全く……じゃ、次はセフィアね。全力でかかって来なさい。」

「はい!」


次はセフィア。

両手の双剣で絶え間ない連撃を放つもその悉くを躱され、時に逸らされ、受け流され、と有効打どころか一撃もかすらせることができていない。

俺と同じパターンだ。

というか、素手で受け流すとか凄すぎるだろ……


アデラードさんは普段はあんなだけど戦闘の時はどうも最初は相手の観察を行うようだ。

相手が格下だからって油断していないのだろう。

もしくは訓練だから最初に攻撃を見てる。

まあ、どちらであろうとやられる側は堪ったもんじゃない。

全力で攻撃して、なんとか一撃入れようと工夫してるのにそれを嘲笑うかのように余裕で対応されるのだから。

そして模擬戦は終わりを迎える。

セフィアの右の振り下ろしを受け流し、左の薙を肘で弾き、弾いた反動を利用して一撃を入れる。


「っ………痛くない?」


痛くない?

結構な勢いで入っていたぞ?

これが模擬戦ではなかったら激怒して殴りかかっていたくらいの勢いだった。

それなのに痛くない?

それって、まさか漫画とかでよくあるアレなのか?


「衝撃は全て外に逃がしたからね。」


マジでアレだった。

というか、そんなこと本当にできる人いるんだ……

って、ちょっと待て!?

俺の時は普通に痛かったぞ!

前の時なんかは気絶までさせられたんだぞ!

なにその差!?


そして恒例(?)の講評だ。

ちなみに俺の場合は前回と特に変わってない為に何にもなかった。

セフィアだと攻撃のリズムが単調になっているから偶にズラす事で相手の意表をつけるとかそういう事を言ってたりする。


その後もシア、アカネ、蒼井……と続けて模擬戦を行なっていって誰1人として当てる事なく終わり、講評を行なっていく。

ルナは近接戦闘の手段がないとかで対象から除外されている。

レイダさんも終わり、最後に大本命リリンの登場だ。

リリンなら一撃当てられるのでは? と俺は思う。


いきなり攻撃を仕掛けるリリンだがそれを躱される。

しかしそこからのリリンは凄かった。

高速で移動しながら前後左右360度から攻撃を仕掛けている。

縦横無尽といった感じなのだが、それらを全て躱すアデラードさんが凄まじい。

そしてそのことにイラだったのか、リリンが加速を使う。

更にスピードが上がり目で追うのが大変なレベルにまでなったリリン。

いつの間にか、俺の嫁も人外の領域に足を踏み入れてたんだな〜

なんて、ふと思ってしまった。

リリンはフェイントも交えつつ攻撃を繰り返しアデラードさんの後ろに回り隙を狙う。


「そこっ!」


当たる。

と思った瞬間アデラードさんがいつの間にかリリンの正面を向いておりリリンの攻撃を往なしつつ一撃を入れた。


「ゴホッ、ゲホッ……」

「リリン!」

「ああ! ゴメン! 強かったから咄嗟の事で衝撃を逃すことができなかったんだ。」


俺がリリンに駆け寄るとアデラードさんがそんな事を。

漫画とかでよくあるけどそれを実際にさせるリリンの事がすごく誇らしい。

流石は、紅玉の絆ナンバーワンなだけはある。

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