第360話 忘れてたわ。的なお話

「ご主人様、早く行きましょう!」

「ちょっと待ってって。まだ紅茶が…」


ギルドから帰って朝食を食べたのはいいんだけど、早く行きたいレイダさんが待ちきれないようで急かしてくる。

そんな急がんでも……ああ〜、そんなに尻尾振っちゃって、椅子とか倒したらどうするつも………あ、倒した。

やっぱり……


「ほら、そんな慌てないで。ダンジョンは逃げないんだしさ。」

「……分かりました。」


随分と不満そうな分かりましただな。

一応今朝ガス抜きしたんだけどなぁ〜。

この紅茶、美味しいんだけどなぁ。

仕方ない。

さっさと飲んで行くとするか。



「では、早速行きましょう!」

「いや、まだ探索予定表を書いてないから。」

「あ、そうでした。」

「ちょっと時間もかかるから依頼でも見て来て。」

「分かりました。」


なんか、戦うことが絡むとどんどんポンコツになっていっている気がするよ。

この人、こんなんで大丈夫なんだろうか…

まあ、迷宮都市に来たのにろくにダンジョンに入ってないしな。

入っても慎重にいってたから退屈だったろうし。

まだ当分は浅い階層を行き来するつもりだから、もうしばらく我慢してもらうけど。


人数は10人で捜索希望、探索予定は……4日くらいにしておくか。

余剰日は2日かな。

目標は五階層だし、ミミックに今度こそ出会えるかな?

書きあがった予定表を犬人族の人のところに持って行く。


「探索予定は4日で余剰日は2日ですね。」

「はい。」

「分かりました。受理します。それで依頼の方は……」

「あ、はい。えっと、これとこれですね。」

「魔石の納品とオイルスィケイダベビーの抜け殻の納品ですね。分かりました。こちらも受理します。」

「よろしくお願いします。」


どうやら魔石とセミの抜け殻の依頼を選んだようだ。

まあ、五階層までだしそんな大した依頼は受けられないか。


受付でのあれこれを終えて早速ダンジョンに入る。

待ちきれない人もいるしね。

そして歩く事30分。

ようやく初魔物が出たがダンジョンワームで雑魚中の雑魚な上に依頼の魔物でもない。

というわけでリリンがいつものようにサクッとやってしまった。

レイダさんが槍を構え出してたからやってしまった。だ。

ちょっと残念そうにしてるし。

いや、残念そうにするようなあいてじゃないでしょ。

ここまでいくともはや危ない人だよ。

雑魚魔物を嬉々として殺すなんてさ。

あ、俺子供の頃蟻の巣に水流してたわ。

それと大差ないと考えれば問題ないか。

問題ないということにしないと俺の人格が危ないことになってしまう。

だから問題ない。

はい決定。

こんなどうでもいいことを考えられるのも暇だからだな。

次の魔物早く来い。

…………………来ないな。


何も来ないまま二階層へ。

そろそろお昼時だしということで階段前の広間でお昼にする事に。

そうしてのんびりお昼を食べていると前方から心なしか見たことあるようなないような集団がやって来た。


「ん? 君達は確か……」

「誰でしたっけ?」


あ、声をかけてきた人がこけた。


「君が前に怒った討伐隊だよ!」

「…………………あー。そういえばそんなこともあったっけ。」

「そんなことって……あんなに怒っていたのに…………君は本当にあの時の人か?」

「いやぁ〜、あの後なんだかんだで幸せだったんですっかり忘れてました。」

「そ、それは良かったよ。ま、まあ、それは置いといて、君達が言っていた迷賊だが、魔物に襲われることは無かったようだが私達がたどり着くまでの間に何人か脱水と飢餓で亡くなっていたよ。」

「そうですか。」

「一応生き残った者は今も俺達が連れている。魔物の討伐と調査が目的だったからね。迷賊の為に仕事を放棄するわけにはいかないからね。そうしている間にこんなに時間がかかったんだけど。で、俺達はこのまま上に帰って報告をするが君達はどうする?」

「あー、今日から探索するんで……えっと、4日間の予定だから話とかはその時に。」

「そうか。じゃあ、俺達はこれで。4日ならそこまで深くまで行かないだろうが、あまり油断しないようにな。」

「はい。気をつけます。」


そうして討伐隊が上の階層へと歩いて行った。

今まで調査してたんだな。

デートやらなんやらが幸せだったからすっっっっっかり! 忘れてたわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る