第354話 自信作だ。的なお話
結果だけ言おう。
全くと言っていいほど練習にならなかった。
敵が弱すぎるのだ。
適当に攻撃してもあっという間に倒せてしまうために練習するだけの時間がないのだ。
これでは何の意味もない。
「予想外だったなぁ。まさかあんなに弱いなんて。」
「そうね〜、あ、風見ってそういえばこの前手加減スキル手に入れたって言ってたよね。それ使えば良いんじゃない?」
「おま……鬼か!?」
「は!?」
「いやだって、手加減で本来なら死ぬはずなのに死ぬことができないのに更に痛めつけるなんて…………引くわー。」
「ちょっ!? 何でそうなるの!? ただ単に死ななきゃ練習になるからそれで……」
まあ、分かってたけどね。
でも、心情的には受け付けられないからやらないけどね。
だって必要以上に攻撃するなんて性格歪んでるじゃん。
それ以前に成功率低いから高い確率で死ぬんだろうけど。
「というか、それよりも………」
「ああ、うん。レイダの事よね?」
なんか知らんけどレイダさんがめっちゃ張り切ってるんだよね。
だから俺が手加減スキルを使う暇がないんだよね。
いや、甚振るつもりは全然全くこれっぽっちもないよ!
だけど、極めないとスキルスロットが空かないからなかなか使う機会がないというのも困るわけで、少しは譲って欲しいとも思う。
そのレイダさんだけど何であんなに張り切ってるんだろう?
と、ここでセフィアがやって来る。
「ねぇ。今日のレイダさんちょっと変じゃない? なんかいつも以上に張り切ってるというか、そんな感じがするんだけど。」
「確かにな……………あ、ひょっとして。」
「何か原因を思いついたの?」
「ひょっとしたらなんだけど、昨日レイダさんの槍を取り上げちゃって……だからその時振るえなかった分のフラストレーションが溜まってたのかも。」
「あぁ〜、なるほど。それで………というか、本当に戦うのが好きなんだねぇ……」
「…………そうだな。」
時々思うんだけど、なんでこんな子になっちゃったのかな。
最初はキリッとしてできる女って感じがあったけど、今じゃ強くなる事、戦う事を楽しみにしてるというか。
いや、楽しみがあるのは良い事だよ。
でも、もう少し物騒じゃないのの方がいいんだけど、今更だしどうしようもないか。
はぁ。
「えーと、とりあえずお昼にしよっか。」
「そ、そうだね。」
階段付近まで戻ってお昼の準備をする。
ここのダンジョンも初心者ダンジョン同様階段前の空間は広がっていて休めるようになっている。
セーフティーエリアというわけではないがここら辺で魔物が出たことはない。
初心者ダンジョンでは、だけどね。
食材と調理器具を取り出したら後はみんなに任せて俺は隅っこで木をいじる。
ま、ようするに爪楊枝作りだな。
最近では結構質のいいのが作れるようになってきた気がする。
特にこれなんかは自信作だ。
先の方を曲げてあるから奥歯の方でも使える上に曲がってるから大きく口を開けなくても使えるから使用時の見た目があまり悪くならない。
ま、それでも手で隠すけどね。
次はどんなのを作ろうか……歯の裏側の方も出来るようにカーブさせるのはどうかな?
………………って、どんだけ真面目に取り組んでんだよ、俺!
俺ってここまで凝り性だっけ?
物作りがここまで好きだなんて初めて知ったわ。
「レント、ご飯できたよ〜。」
「分かった、今行く〜。」
なんて事してる間に料理ができたようだ。
さて、嫁の手料理をいただくとしようか。
◇
「ご飯も食べたし、練習を再開しようかね。」
「え、でも、弱すぎて相手にならないのにやる意味あるの?」
「まあ、イメージトレーニングはできるし。それにこういうのは実際にその場所でやらないとわからない事もあると思うから。少なくとも敵がいなくても動く場所の狭さとかはわかるからさ。」
「なるほど。それもそうだね。」
納得してもらった事だし練習をする。
たまに通り過ぎる冒険者達から奇異の目で見られる………なんてこともなく二時間が過ぎる。
それだけの時間が過ぎれば流石にそれなりには動けるようになったかな。
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