第311話 スキルガチャ2連的なお話

「二人とも、前みたいに気分悪くなったりしなかった? もし大丈夫なら次はもう少し先の方まで行こうと思うけど。」

「大丈夫。」

「問題なし!」


大丈夫なようだ。

それなら次はもう少し………そうだな、二階層の様子を見に行くくらいなら良いかな?

こっちのダンジョンは死ぬし、夜営は慎重にするべきだろう。

一応俺達は7人いるけど、ほとんど女という事で狙われる可能性も充分にある。

転移魔法が使えるかも試した方が良いだろう。

ふむ。

となると、次は転移の方を試す為に潜るという感じになるのか?

本当に、リリンには働いてもらってばかりだ。

このままだとリリンに依存してしまいそうだし、なんとかしないと。


というわけで久々にスキルガチャをします。

願わくば転移魔法が出ますように。


「スキルガチャ。」


《スキル 爪楊枝作りを取得しました。》


は?

なんだこれ?


〈爪楊枝作り〉

爪楊枝を作る技能に補正がかかる。


くそスキルじゃねぇか!

爪楊枝作れるようになってなんの意味があるんだよ!

しかもスキルガチャだからスロット空けるには極めないといけないし、本当に役に立たないな!


「ねぇ、レント。さっきスキルガチャをしたみたいだけど、何が出たの?」

「……………爪楊枝作り。」

「え? なんて言ったの?」

「だから、爪楊枝作りだって! 唯単に爪楊枝を作る技能に補正がかかるだけの、なんの役にも立たない爪楊枝作りってスキルなの!」

「うわぁ〜。そ、それはなんというか、その、ご愁傷様。」


嫁に憐れむような目で見られた。

悲しい。


えーい!

こうなったらヤケだ。

もう一回やってやる!

幸いレベルが上がっているお陰でスキルスロットも増えているしまだちょっと余裕がある。


「スキルガチャ。」


《スキル 手加減を取得しました。》


なんか、微妙な名前のスキルだ。

攻撃しても必ず体力が残るとかそういうのじゃないよね?


〈手加減〉

倒さないように体力を残して攻撃できるアクティブスキル。

手加減成功率はスキルLV×10%


パッシブスキルじゃないのは良かったけど、これ、本当になんの意味があるの?

いや、敵を捕縛するのが目的で殺したらダメだって時には役に立つだろうけど、冒険者は寧ろ魔物を殺すのが仕事なんだけど!

このスキルは兵士さんや護衛騎士さんにあげてくださいよ!


「またやったの?」

「悔しくてつい。」

「何が出た?」

「………手加減。」

「「………………………。」」

「もう、止めにしよっか。」

「うん。」


セフィアに優しく悟らされた。

でも、このままだとソシャゲの課金みたいになるし、ここらでやめるべきなのだろう。

それはそれとして、このスキル達どうしよう?


宿に帰った俺達は食堂で夕食をとり部屋で休む。

俺は薪を一本拝借してそれを使って爪楊枝を作ってる。

やらない事には始まらないから。

唯ひたすらに木を削って削って削りまくる。

無心で削っているとなんだか、昔のことを思い出してきたよ。

あれは、中学一年の頃だったかな。

担任教師が掃除当番に磨き隊というのを追加して、俺はそれに任命された。

その隊は学校中の汚れを雑巾一つでひたすらに磨いてキレイにするというもので掃除の時間になると何も考えずに目の前の頑固な汚れと毎日戦っていたっけ。

どれだけ磨いても他の生徒が汚していくから全然キレイにならなくて心が死にかけたんだよな。


「あははははは。」


あれ? なんか自然と薄ら笑いが出てくるぞ。


「れ、レント!? 大丈夫!? もう二時間もやっているし今日はもう休もう! ね?」

「んぁ、あ、セフィア。もうそんなに経っているのか。」

「お、お兄さん。こんを詰め過ぎたら駄目ですよ。こういうのは少しずつやっていきましょう。」

「無理は禁物。」


爪楊枝を延々に作り続けて磨耗した心を嫁達に身も心も癒してもらってから眠りにつく。

本当にいい嫁だ。

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