番外編 プールの話

「あ〜つ〜い〜。」

「そ〜だね〜。」

「暑い。」


凄く暑い。

今までは春先のような過ごしやすい日々が続いていた。

なのに何故か今日は凄く暑く、まるで沖縄の真夏のようだ。

行ったこと無いけど。

というかこの世界に四季ってあるのかな?

いや、四季があるならもっと段階を踏んで暑くなるはず。

だから無いのか?

ってこんな事を考えたところで暑さは変わらないし、余計だるくなるだけだ。

そして、この暑さに参ったようでみんなもだれてしまっている。


「セフィア〜、この街ってプールある?」

「プールって何?」

「うわぁ。この世界にはプールも無いのか。」

「プールって?」

「えーと、泳いだり、水浴びしたりとか出来る娯楽施設かな?」

「へ〜。涼しそうだね。」

「そうなんだ。だからあるか聞いたんだけど、まさか無いなんて。何やってたんだ転移者、歴代勇者。」

「……あはは。」


こうなったら自分で作るか?

いや、この暑さの中動くのはだるいか?

…………やっぱ無理!

暑いし、プールで遊びたい!


「プールを作ろう!」

「作るの!? というか出来るの?」

「魔法を使えばきっとなんとかなる! ………はず。」


というわけでプールを作ります。

セフィアとリリン、ルリエは家の庭に大きな穴を開けるのと周りの整備を頼む。

アカネ、蒼井、レイダさんは俺と一緒に森に伐採に。

ただ穴を開けるだけだと水を入れても砂とかでドロドロになりそうだからな。

木を使って床やら壁を作ろうと思う。

ある程度の木を採ったら俺のストレージと蒼井のアイテムボックスにしまって家に戻る。

でも、やはり暑いな。

早く作ろう。



「うおわっ!」


家に着いて庭に向かうと四角い大きな穴が出来ていた。

そして俺はそこに見事に落ちてしまった。


「大丈夫!? 怪我してない!?」

「だ、大丈夫。ちょっとびっくりしたけどね。」


帰宅早々穴に落ちた俺を心配するセフィアに手を貸してもらって穴から這い出る。

ちょっとした騒動を起こしてしまったが、大した問題じゃないし早速次の工程に移ろう。

そして取り出した木をセフィアの風魔法でスパスパと板状に切断してもらう。

そうして出来上がった材木をなんかこうコの字型の釘というか大きなホッチキスというかなんかそんな感じので繋げていき底に敷いていく。

途中でルリエからお昼ご飯が出来たという誘いを受けて昼休憩をする。

労働の間に食べるご飯は美味しいです。

食休みの後、壁面の方も床と同じ様に繋いでいき少々不格好ながらもなんとかそれっぽいのが出来た。

しかし、こんな事なら事前に木工師とかそういう人たちを探して依頼しとくんだった。

まあ、突発的な事だから今回は仕方ないかもだが、今後似た様な事になった時用に作ってもらおうかな?


そしてリリンの手によって遂にプールが完成する。

自作のプールは横が四メートル、縦が十五メートルくらいの小さめの物で自由に泳ぐには少々不自由しそうだが、水遊びするには十分な大きさだ。


と、ここで水着を用意するのを忘れてることに気付いたが家の中という事で今回はシャツに短パンで入る事にした。

目前でお預けなんて耐えられないから。


「気持ちいい! 熱くなっていた身体が冷やされる感じがすごく心地いいね。」

「だろ。少々不格好なのがアレだか……」

「えいっ。」

「ぷわっ! やったな、リリン。お返しだ!」

「わぷっ。負けない。」

「僕も混ぜて。えいっ。」


まさか異世界で海デート、プールデートの定番ネタである水の掛け合いをできるなんて。

生きててよかった。

一回死んだけど。


「「せーの、とおっ!」」


ドポーーン!!


「「「うわっ!」」」


俺たちが遊んでいるとアカネと蒼井の日本組が飛び込んできて大スプラッシュを巻き起こす。

それによって俺、セフィア、リリン対アカネ、蒼井で水掛け合戦となりそこにルリエとレイダさんがそれぞれに加わって楽しく遊んだ。


ただまあ、その結果家中水浸しになってしまったんで、今後はもう少し気をつけようという事になった。

ご近所さんにもうるさいと怒られたし。


本当にすみませんでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る