第156話 エルフさんはいい人的なお話

蒼井との約束のために走って帰ったが、それでも三十分も掛かってしまい、時刻が午後一時半を過ぎてしまった。


そして家の戸を開けるとそこには仁王立ちしている蒼井がいた。


「遅い!」

「すまん。標的を探すのに手間取ってな。」

「美味しいところに連れてってくれるかもと思ってお昼も食べてないのに!」

「いや、それは知らないし。」

「だから美味しいもの食べさせて。」

「だからの意味が分からないが……ラーメンでいいか?」

「あるの!? なんで!?」

「ラングエルトのおっちゃ、お兄さんから貰った。」

「ラングエルト? お兄さん?」

「ラングエルトはこの辺を治めてる伯爵領の領都でお兄さんは俺やお前と同郷のヨージさんだ。」

「へぇ〜。じゃあそれで。………ところで、後ろの綺麗なエルフさん達は誰?」

「え? ってついてきたの!?」

「だってまだ依頼の報告してないし、分配の話もしてないし。」

「そういえばそうだね。じゃあ、お昼もまだだったし丁度いいから食べてってよ。」

「え、でも…いいの?」

「貰い物でタダだから気にしないで。」



ラーメンの主な材料は貰ってある。

ネギっぽいのともやしっぽいのはストレージにあるな。

メンマはタケノコを……どうするんだっけ?

今度行った時につくり方を聞くとして今回は無しかな。

チャーシューは焼き豚って書くし豚肉を味付けて焼いて擬きでもすればいいかな。

良し。

そうと決まれば早速やりますか。


セフィアにチャーシュー擬きをお願いする。

塩胡椒にハーブやスパイスで味付けをして焼いてもらう。


俺は大きな鍋を用意してそれで大量のお湯を用意する。

それとは別に小さめの鍋を出してそこに麺を入れる。

湯切りのやつを持っていないからざるに移して湯切りをする為だ。

こうして分けることでいちいちお湯を沸かす必要がないからだ。

そして小さめの鍋にお湯を入れてしばらく茹でる。


リリンに頼んで小さめの鍋からざるに麺を移して湯切りをして貰う。


そしてその前に俺は丼のような大きめの器にタレと油を入れて、火魔法で温めたスープを入れる。

そこに湯切りしてもらった麺を投入し、事前に準備してあったネギともやし、そしてセフィアに頼んでたチャーシュー擬きを入れて完成だ。


後は同じ工程を人数分繰り返す。

出来たのはストレージに仕舞ってある。

こうすれば冷めないし麺も伸びない。



「出来たぞー。といってもトッピングはなんちゃってになっちゃったけどな。」


リビングに行ってストレージからラーメンを取り出していく。

それはそれとしてどうやら蒼井はアレクシアさん達と仲良くなったようで良かった。

なんか、アレクシアさんとエルナさんがぐったりしてる気がするが、何があったんだろう?


みんなでラーメン擬きを食べる。

チャーシュー擬きはアッサリしていて、意外と悪くない。

ちなみに啜ったりはしない。

啜るのは蕎麦のみで、あれは啜ることで蕎麦の風味を感じるためだそうでうどんやラーメンでする必要は全くといっていいほど無い。

それにこっちでは行儀悪く思われそうだしな。

現に、蒼井が今アレクシアさんに注意されている。


「ごちそうさまでした。」


食べ終わったので蒼井を連れて行くのだが、アレクシアさん達はどうしよう。

巻き込んでも良いんだが、蒼井が異世界の事をポロっとこぼしそうだから先にギルドで精算してからにするか。


「それじゃ、そろそろ行こうか。でも、その前にギルドに行くけどいいよな?」

「なんで?」

「依頼の報告だ。その後案内するから。」

「分かった。」

「そういうわけなんだけど、ルリエ達はどうする?」

「一緒に行っていいですか?」

「だ、そうだけど、いいか? 蒼井。」

「もちろん。よろしくね。」

「というわけなんでアレクシアさん、エルナさん。ギルドに行こうか。」

「そうね。」

「なんか……疲れてるけど大丈夫?」

「ええ。ユウキさんに身体をまさぐられただけだから、大丈夫よ。」

「そ、それはなんというか……幼馴染がすまない。」

「気にしないで。エルフを見るのが初めてらしいし、喜んでくれてたから。」


蒼井の奴は何をしてんだよ。

というかアレクシアさんが良い人過ぎる。

そこまでされたら俺だったら苦手意識持ちそうなのに。


早く休んでもらう為にもさっさとギルドに向かうとするか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る