第143話 チェンジリング的なお話(後編)
「えっ! 何? 何が起きたの!?」
突然光とともに現れた少女はわかりやすいくらい戸惑っている。
それを俺は異世界転移ってこんな風に現れるのか〜と思って見ていたら……
「ギャフッ!」
「きゃうっ!」
突然の脇腹への衝撃と聞こえる女性の声。
これは例によってレイカーさんだろう。
そしてその推測は正しく、衝撃によって倒れた俺の腰にしがみつく形になっているレイカーさんが見える。
というか、周りに人がいなくてよかった。
「きょ、今日はどうしたんです? レイカーさん…」
「ああ、すみません! でも今急いで……って蓮斗さん!? どうして此処に!?」
「へ? 俺に用事じゃないんですか? てっきり何時ものように俺に用があるのかと……」
「すみません、蓮斗さん。事情は後で説明しますから、今は此処で待っててください。」
レイカーさんはそう言うと、未だに困惑している転移してきた子を連れて何処かに行ってしまった。
◇
事情が分からないまま待つこと十分。
前方の空間が歪み、そこからアリシアさんとレイカーさんが出てきて、そこから更に少し暗い顔をした少女、蒼井優姫が現れた。
なんで?
「なんで蒼井と一緒にいるんですか!?」
「お久しぶりです……ってほどでもないですよね、蓮斗さん。それで何故という問いに対してですけど、彼女はこちらの世界に迷い込んだからですよ。もっとも、たまたま名前が似ていてタイミングが同じだったという理由で別の人と間違われてこことは違う世界に召喚されてしまったんですけどね。」
「違う世界?」
「ええ。私はここ含めていくつかの世界を管理しているのです。そのうちの一つで戦争が起こりそうになっている国があり、そこが勇者召喚を行ったんですよ。そこの勇者の人が先ほど現れた人でして、本来の流れに戻す為にレイカーがこちらに来たのですよ。蓮斗さんが遭遇したのには驚きましたが、結果的には手間が省けましたね。」
「手間ですか? ひょっとして蒼井のことですか?」
「はい。彼女はあなたを死なせてしまった事を後悔してましたし、いい機会なので腹を割って話し合って、それが終わったら異世界人の先輩として面倒を見てあげてください。」
「分かりました。知らない仲じゃないですし。」
「セフィアさん達もそれでいいでしょうか?」
「大丈夫ですよ。アリシアさん。」
「まかせて。」
「お願いしますね。それでは私達はこれで。また二日後に会いましょう。」
そう言うとアリシアさん達は帰って行った。
というか二日後って明後日にまた来るのか。
「あの、風…見。これって一体どういうことなの? 死んだはずのあんたがなんでこんなところに?」
「あー。なんていうかなぁ。確かに俺はあの時死んだらしいんだよ。でも、なんか元々俺ってこっちの世界に転移する予定だったらしくてさ、それで、こっちの世界で生活することになったんだよ。後、俺が死んだ理由も結果的には俺が原因的な所も少しはあるからそんな気にしなくていい。」
「何言ってんの!? あれは私がぼーっとしてたのがいけないんじゃない! あれが無ければあんたは私をかばって死ぬことなんか無かったじゃない!! それなのに自分の所為なんて……そんな……」
「落ち着けって。確かに俺はあれで一度死んじまったけどさ、でもこうしてちゃんと生きてる。だからあんま気にすんなって。それよりもこんなところにずっといたら魔物が出てくるかも知んないし、詳しいことは俺の家で話そう。」
「うん。」
それから俺達は一言も喋らない蒼井を連れて街に帰る。
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