第92話 最高の嫁(当確)だ。的なお話

「………さい。…たの…よ。…きな……ってば。」


誰かから声を掛けられ、身体を揺すられる。

でもこの声はセフィアやリリン、ルリエとも違う。

一体誰だろう。

少しずつ覚醒していく意識の中に浮かんだ疑問に従い目を開ける。


「やっと起きた。」


目に飛び込んできたのは俺を覗き込むように見てる金髪翠眼の美人の顔だった。

焚き火の薄明かりに照らされてその顔を怪しげで妖艶に映す。


「え!?何!?夜這い!?」

「んなわけあるか!交代よ。早く代わってよね。眠いんだから。ふぁ〜。」


そう言いながら欠伸をするアレクシアさん。

本当に眠そうだな。


「了解。それで俺が寝てる間に何かあった?」

「何もないわよ。だから余計に眠くてね。ふぁ〜。」

「後は任せて。それじゃ、おやすみ。」

「おやすみ〜。」


そして俺はアレクシアと交代で見張りをする。

因みに順番はエルナさん、アレクシアさん、俺、セフィアの順番だ。

護衛対象であるアベルさんとリィナさん、セラさんは馬車の中でぐっすり寝ているはずだ。


…………………………………。

むぅ。暇だな。

この前のダンジョンでは魔物が階層を跨ぐ事は無いし出入り口は一つだけだったから本を読んでても物音で気づく事が出来るんだが今回は全方位に注意する必要がある。

となると今回は本を読む事ができない。

それに武器の手入れをしてももう全部終わってしまった。

こういう時気配察知とか全方位探査とか警報とかそういうスキルがあると楽なんだけどな。

チート系の小説では結構簡単に手に入れてるんだが現実はそう簡単にいかないな、やっぱり。



ふぁ〜。

二時間経って交代の時間になったけど、何も起きなかったな。

林の方で音が聞こえても何にも出てこなかったからな。

やっぱ凄いなアリシアさんからもらった結界発生装置。

薪を集めに行った際に設置しといて良かった。

でも、念の為見張りはいるだろうしセフィアと交代して寝よう。

…あ、皆を起こす前に回収して貰おう。

凄いしあまり知られるのはまずい気がするしね。



セフィアと交代して二時間。

時間が時間な為仮眠みたいになったけど合計で五時間くらいは寝れたはずだ。

そしてセフィアに起こされる。

それもキスでだ。

なんでキスで起こしたのか聞いたら寝顔を見たらついしたくなったそうだ。


マ・ジ・で・うれしい!


そしてどうやら一番最初に起こしてくれたみたいで周りには見られてない。

衆人環視の中でキスした俺が言うのもアレだけど見られるのは恥ずかしいからな。


それからセフィアは朝食の準備をし、俺は結界発生装置を回収する。

少しでも長く休んで欲しいとかで他の人達は起こしてない。

本当にセフィアは最高の嫁(当確)だ。


さて、これでラスト……!?

なんだ、これ。

なんかおっきな卵が落ちてんだけど。

あ、産まれた。

じゃない。

逃げなきゃ!

なんか厄介ごとになる気がする。

こうゆうのってインプリンティング、又の名を刷り込みで親に間違われたりするんだよ。

そんで育てたりするんだけど、食費がめっちゃかかったりするんだよ。

それは困る。

というわけで…逃げる!


「どうしたのレント?走ったりして。」

「いや、なんでもない。ちょっと準備運動を。」

「…?まあ、いいや。朝ごはんできたから皆を起こしてきて。」

「分かった。ってリィナさん達も?」

「うん。手間もそう変わらないしね。」

「了解。本当にセフィアはいい嫁だよ。」

「…バカ。」


バカと言われました。

でもセフィアは赤くなっているし、むしろ逆効果です。


軽くイチャついた後は皆を起こして一緒に朝ごはんを食べる。

アベルさん達は感謝とともに後でご飯を奢ると言ってくれたけど俺が断った。

ナンパはお断りです。


そして朝食を終えて移動を再開する。

今日首都に着くらしいし張り切っていこう。

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