第37話

 死体がある部屋からでた一行は、近くの部屋で前のパーティーが残したアイテムを見つけることになる。

 たたまれたテント、部屋の真ん中で焚かれた焚火の跡、部屋は石造りだから気をつけば大丈夫だろう。部屋の中は紐が通され、そこに服が干されている。臭い。悪臭がする。

 鎧兜、食器、悪臭を放つ食料だった物。

 飲み水が入った水筒とは別に水を汲んだ兜が転がっている。火を消すためだろうか。


「とりあえず逃げ出した、って感じですね」

 マリーの正直な感想。

「さすがに武器は持ってたんでしょうが、杖が残ってる」

 そういってVは杖を拾い上げる。

 一流パーティーの名に恥じない名ブランドの一品。しかしこれも藻がこびり付き緑色に変色している。


「防具も転がしたまんま、必要最低限というよりも、そこら辺にある必要そうなものだけつかんで飛び出したんでしょう。焚火していたってことは夜、服が干してあるので雨が降ってたんでしょうか。でも焚火を消した気配というものがない。真っ暗な中、まともな装備も持たずあの森を駆け抜けたってことでしょうか?」

「無謀」

 鉄兜の一言にみんな納得。

 整備もされていない夜の森、あのサルやほかのモンスターもいる。

「一流だから生き残れた、程度の話だな」

 ドーリーはそう言って、次の部屋を調べようとパーティーに言った。


 夜

 ダンジョン全体を調べたが特に問題となりそうなものはなかった。

 正確に言えば二つ、死体と前のパーティーが残したものがあるが、それがあるからと言って捜索隊が全滅するようなことはないだろう。


「水飲み場まで遠いな」

「ほんと・・・遠い」

 ドーリーと鉄兜はそんなことを言いながらダンジョンの外から帰ってくる。


 ダンジョン周辺で飲める水が湧き出ている場所を見つけている。少し遠いな、と思いながら往復できる距離だ。

 二人はそことダンジョンを往復して、鍋やら水筒やらコップやらに水を汲めるだけ汲む。深夜になって汲みに行く勇気は彼らにもない

「ちょうど晩御飯できたところですよ」

 マリーはそう言って鍋の方をさす。

「作ったのは私ですけどね」

とはV。


「おいしい」

「いや、ほんと、おいしい」

 鉄兜とマリーはVの料理を正直にほめた。

 メニューはVお得意の鍋料理。

 町で買った保存がききそうで比較的荷物にならないと思われる具材。それを刻んで入れて調味料で味を調整するだけなので「なんだかよくわからない汁」と本人はネーミングしている。

 それでもおいしいのだからVの料理の腕の良さがわかるというもの。

「冒険者やってて料理の腕を褒められてもね。うれしいんですが」

 Vはそう言って苦笑い。


 食事を終えたあと、二つのテントを立てた後で諸々決める。

 手洗いは外でやるように、女性のテントを覗かないこと、などそんなことのほかに

「二人ずつ交代に見張りをしようか。モンスターが来るとは思わないが、一応さ」

と言ったこと


「私が先に起きてますよ」

「じゃぁ、僕もそうします」

 マリーとVがそう言った。

「わかった・・・先に・・・寝る」

「適当なところで起こしてくれ」

 先に寝れるか朝まで寝ていることができるかだ。どっちを選んでも大差ない。

 そして休憩と片付け。何をするわけでもなく雑談をし、ドーリーと鉄兜は先にテントの中に入っていった。


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